フォノン

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フォノン: phonon)、音子音響量子音量子は、振動(主に結晶中での格子振動)を量子化した粒子(準粒子素励起)である。

フォノンは結晶格子という原子の集団がつくる構造に「支えられて」存在している。あるいは結晶格子という構造の上にフォノンという粒子たちが「宿っている」と言ってもいい。原子や電子とは根本的な素性は異なっていても、原理的には1つ、2つと数えられる、各々の粒子がエネルギーや運動量を持っているといった点では完全に一人前の粒子である[1]

フォノンのひとつひとつがある振動数を持つモード単位を表す。振幅が大きくなる、詰まり、振動が激しくなることはフォノンのが増えることで表される。

フォノンを持つ液体としては、超流動を示すヘリウム4がある。[2]

原子核表面核子振動量子化したものもフォノンと言う。

特徴[編集]

音波などの弾性波が伝搬する媒質弾性体)は連続的なものであり、量子力学における1個の粒子を記述する波動関数でフォノンを記述することは難しい。フォノンは場の量子論にもとづいて記述される。[2]

エネルギー[編集]

フォノンの持つエネルギー格子熱振動エネルギーである。

E=\sum_k\hbar\omega_k \left( n+\frac{1}{2} \right)

\hbarプランク定数\omega_k振動数n はフォノンの数である。波数 k について取る。

運動量[編集]

フォノンは質量は持たないが、運動量は持っており\bold{p}=\hbar \bold{k}で表される。フォノンによる弾性的中性子散乱では、エネルギーとともに運動量も保存される。非弾性中性子散乱では中性子の入射角と散乱角、およびエネルギー変化を調べることでフォノンの波数と各周波数が求まる。[2]

ボース粒子[編集]

フォノンはひとつの状態 k に何個でも存在できる。よってフォノンはボース粒子であり、ボース゠アインシュタイン統計に従う。

分類[編集]

音響フォノンと光学フォノン[編集]

二原子鎖の中の光学 (optical) フォノンと音響 (acoustic) フォノン

フォノンは、音響フォノン光学フォノンの2つに大別できる。音響フォノンは隣のフォトンと同じ位相で振動するが、光学フォノンは逆の位相で振動する。 光(フォトン)と音響フォノンとの光散乱ブリルアン散乱という。光学フォノンは光と相互作用し、光と光学フォノンとの散乱をラマン散乱という。

横型フォノンと縦型フォノン[編集]

フォノンの波数ベクトル(伝播方向)と同じ方向に格子振動する縦波と、垂直に格子振動する横波という2つのモードがある。

分散関係と周期性[編集]

状態密度[編集]

フォノンの状態密度は、フォノン数を第一ブリュアンゾーンで積分したものである。実験的には、中性子非弾性散乱によって求まる。比熱などは、フォノンの状態密度によって決まる(デバイ模型)。

フォノンバンド[編集]

結晶格子のような周期構造中では、フォノンの振動数制限され離散的になる。又、量子力学効果電子の場合と同様に、フォノンもバンド構造フォノンバンド」を作る。

フォノンのソフト化[編集]

物質によっては、温度を下げるとフォノン(格子振動)の振幅が小さくなっていって、ある転移温度以下で低温相転移し、フォノンによる格子変位凍結した状態となることがある。

これをフォノンのソフト化と言う。

厳密には、格子振動とフォノンは同義ではないが、同じような意味合いで使われることがある。

熱伝導[編集]

フォノンによる熱伝導は、フォノンが音速vで飛びまわるとして気体分子運動論を適用したモデルで記述できる[2]熱伝導率kは、比熱Cとフォノンの平均自由行程lで表される。

k=\frac{Cvl}{3}

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ 田崎晴明 『統計力学II』 培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年ISBN 4563024384
  2. ^ a b c d 木暮嘉明 『フォノンとは何か-音波と量子の世界-』 丸善〈フロンティア・サイエンス・シリーズ〉、1988年ISBN 4621033093