フィル・ミケルソン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 フィル・ミケルソン 
Phil Mickelson
基本情報
名前 フィル・ミケルソン
ニックネーム Lefty
生年月日 (1970-06-16) 1970年6月16日(53歳)
身長 191 cm (6 ft 3 in)
体重 91 kg (201 lb)
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 カリフォルニア州サンディエゴ
経歴
大学 アリゾナ州立大学卒業
プロ転向 1992年
プロ勝利数 53
優勝数
PGAツアー 45 (歴代9位)
ヨーロッパ 10
メジャー選手権最高成績
(優勝: 6)
マスターズ 優勝(2004,06,10)
PGA選手権 優勝(2005,21)
全米オープン 2位/T2(1999, 2002, 04, 06, 09, 13)
全英オープン 優勝(2013)
受賞
Haskins Award 1990, 1991, 1992
成績
初優勝 ノーザン・テレコム・オープン(1991年)
世界ランク最高位 2位
賞金ランク最高位 2位
殿堂表彰者
選出年 2012年
選出部門 PGAツアー
テンプレートを表示

フィリップ・アルフレッド・ミケルソンPhilip Alfred Mickelson, 1970年6月16日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ出身のプロゴルファー。左打ちで、“The Big Lefty”(ビッグ・レフティー)の愛称で呼ばれる。

2004年マスターズ・トーナメントメジャー大会初優勝を飾り[1]、以来メジャー大会通算6勝。PGAツアー通算45勝(歴代9位)。世界ランキング自己最高位は2位。生涯獲得賞金ランキング歴代2位。

『ギネス世界記録 2014』には「左利きによるメジャートーナメント最多勝利」のギネス世界記録保持者として掲載されていた[2]

来歴[編集]

デビュー[編集]

日常生活では右利きだが、ミケルソン本人の言葉によれば「幼い頃に父親のスイングを正面から見て覚えた」ため、ゴルフに限っては左打ちとなった。

非常に早熟な才能を持ち、アリゾナ州立大学在学中から驚異的な成績を挙げていた。大学1年生だった1989年にNCAAゴルフ選手権で当時の史上最少スコアで優勝。1990年に全米アマチュアゴルフ選手権で優勝。1991年にはまだアマチュア選手のうちにPGAツアー大会のノーザン・テレコム・オープンで優勝している。大学卒業後の1992年にプロ転向。翌1993年のビュイック招待選手権でプロ初優勝を飾り、トッププロに躍進する。しかしメジャー大会の優勝争いではあと少しのところで涙を飲む事が多く、長らく“無冠の帝王”と呼ばれた。2003年はミケルソンのプロゴルファー生活でも最悪の年となり、大リーグ野球のデトロイト・タイガースの3Aで投手の入団テストを受けたことさえある。

メジャー初優勝[編集]

しかし2004年マスターズ・トーナメントで、彼の努力はついに報われる。最終日の18番ホールでバーディーパットを沈め、9アンダーパー(-9)で初優勝を飾った。大会前年優勝者のマイク・ウェアカナダ)も左打ち選手であったため、マスターズのグリーン・ジャケット授与式では左打ち同士が顔を合わせた。続く全米オープンでも優勝争いに絡んだが、レティーフ・グーセンに惜敗。2005年のマスターズでは10位に終わったが、8月の全米プロゴルフ選手権で初日からトップをキープする完全優勝を果たし、メジャー大会2冠を獲得する。2006年のマスターズではフェード用、ドロー用の2本のドライバーを使い分け、最終日に抜け出し、メジャー大会2連勝を成し遂げた。

2007年度は、開催時期が5月第2週に変更されたプレーヤーズ選手権で初優勝を果たす。2008年度はツアー2勝、2009年度はツアー3勝を挙げた。2010年はマスターズで優勝を飾った。マスターズ通算3勝は2010年時点で歴代4位タイの記録となる。

ミケルソンのゴルフは華麗な技術で人気が高いが、大舞台の勝負所で短いパットを外す場面が目立っていた。

全英オープンを長らく不得意としていたが、2011年に自己最高の2位タイ入賞、2013年には20度目の全英挑戦で、左打ちのプレイヤーとしては50年ぶりに全英オープンを制覇して、三冠目のメジャータイトルを獲得した(メジャー5勝目、ツアー42勝目)。2013年の第142回大会は英国北東部のミュアフィールドで16回目の開催であり、ミケルソンはゴルフバッグからドライバーを抜き、ロフト64度のウェッジを入れて、“This 3-wood has changed my game.”と試合前に評価した別注品スプーン1本(ロフト13度、長さ43.25インチ、ディープフェイス)、ハイブリッド1本(ロフト17度)、アイアン6本(4-9番アイアン)、ウェッジ5本(PW、ロフト52、56、60、64度)、パター1本のクラブセッティングで臨み、最終日7月21日は首位と5打差の9位タイスタートであったが、アウト2バーディ1ボギーの34、イン4バーディの32、計66でラウンドしてスコアを5つ伸ばし、72ホールを唯一人アンダーパーで廻り、通算281打の3アンダーパーで2位に3打差をつけての勝利であった。最終ラウンドの17番ロングホールでは、第1、2打をロフト13度のスプーンで2回打って2オンして、2パットでバーディをとり、“I hit two of the best 3-woods I’ve ever hit.”とコメント。

全米オープンでは2位が6度あるが、未勝利。2014年第114回大会が開催されたパインハーストNo.2は、1999年の同コース初開催の全米オープンでペイン・スチュワートに激闘の末敗れた因縁のコースであり、43歳で24回目の全米オープン参戦してメジャー大会グランドスラムに挑んだが、7オーバーで28位タイに終わった。

2018年には世界ゴルフ選手権メキシコ選手権で久々の優勝。11月23日に行われたタイガー・ウッズとのPPVマッチ『キャピタル・ワンズ・ザ・マッチ』では22ホール目で勝利し、賞金900万ドルを獲得した。

2021年のPGA選手権(米サウスカロライナ州のキアワ・アイランド・ゴルフ・リゾート オーシャンクラブ)ではロフト5.25度、長さ47.75インチの別注品ドライバー、ロフト11.5度、長さ43.75インチ、ヘッド体積275ccの別注品ブラッシーを駆使し、通算6アンダーでメジャー史上最年長優勝を果たす。2005年以来の大会2勝目、メジャー通算6勝目、ツアー通算45勝目。メジャー最年長優勝は1968年のPGA選手権を制したジュリアス・ボロスの48歳だったが、50歳のミケルソンが更新。50代でメジャーを制した初めての選手となった。なお、2022年からドライバーのクラブレングスは46インチ以下とするルール開始。

LIVゴルフへ移籍[編集]

2022年2月、米ツアーに批判的な発言をしたことでほぼすべてのスポンサーとの契約が解除となった[3]。その後、発言に関する謝罪声明を発表し、一時休養を宣言した[4]。 同年4月25日、マネジメント会社はミケルソンがLIVゴルフ・インビテーショナルシリーズに参加する意向を発表[5]。 同年6月、イギリスで行われた開幕戦に参戦したたため、アメリカPGAツアーから他の16選手とともに無期限の資格停止処分を受けた。同月13日、ミケルソンは将来的に再びPGAツアーでプレーすることを望んでいると述べている[6]

ワールドゴルフランキングからは除外されていないため、2023年のマスターズ2位タイの成績は反映されている。

人物[編集]

2004年以降、ゴルフクラブはキャロウェイゴルフを使用している[7]が、1992年から2000年まではヨネックスを使用していた[8][9]。1992年から1999年のカシオワールドオープン、1992年・1996年・2003年のサントリーオープンゴルフで来日している。日本での自己最高位は、1993年カシオワールドオープンでの3位。1999年のカシオワールドオープンでは予選落ちとなったが、インタビューではメモを見ながらではあるものの、日本語で答えていた。

華麗な実績の反面、やや問題行動も目立った[10][11]

アマチュア優勝[編集]

ツアー優勝歴[編集]

PGAツアー[編集]

欧州ツアー[編集]

その他[編集]

PGAツアー・チャンピオンズ (4)[編集]

No. Date Tournament Winning score Margin of
victory
Runner-up
1 Aug 26, 2020 Charles Schwab Series at Ozarks National −22 (61-64-66=191) 4 strokes アメリカ合衆国の旗 ティム・ペトロヴィッチ
2 Oct 18, 2020 Dominion Energy Charity Classic −17 (68-66-65=199) 3 strokes カナダの旗 マイク・ウェア
3 Oct 10, 2021 Constellation Furyk & Friends –15 (66-67-68=201) 2 strokes スペインの旗 ミゲル・アンヘル・ヒメネス
4 Nov 14, 2021 チャールズ・シュワブ・カップ選手権 –19 (65-67-68-65=265) 1 stroke ニュージーランドの旗 Steven Alker

成績[編集]

メジャー選手権[編集]

大会 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
マスターズ DNP T46LA DNP T34 DNP T7 3 CUT T12 T6
全米オープン T29LA T55LA CUT DNP T47 T4 T94 T43 T10 2
全英オープン DNP T73 DNP DNP CUT T40 T41 T24 79 CUT
PGA選手権 DNP DNP DNP T6 3 CUT T8 T29 T34 T57
大会 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
マスターズ T7 3 3 3 1 10 1 T24 T5 5
全米オープン T16 T7 2 T55 2 T33 T2 CUT T18 T2
全英オープン T11 T30 T66 T59 3 T60 T22 CUT T19 DNP
PGA選手権 T9 2 T34 T23 T6 1 T16 T32 T7 73
大会 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
マスターズ 1 T27 T3 T54 CUT T2 CUT T22 T36 T18
全米オープン T4 T54 T65 T2 T28 T64 CUT DNP* T48 T52
全英オープン T48 T2 CUT 1 T23 T20 2 CUT T24 CUT
PGA選手権 T12 T19 T36 T72 2 T18 T33 CUT CUT T71
大会 2020 2021 2022 2023
マスターズ T55 T21 DNP T2
全米オープン CUT T62 CUT CUT
全英オープン - CUT CUT CUT
PGA選手権 T71 1 DNP T58

LA = ローアマチュア
DNP = 出場せず
WD = 怪我で辞退
CUT = ハーフウェイ・カット
T =タイ
緑は優勝. 黄色はトップ10入り.
* 娘の高校の卒業式に出席するために出場せず[12].

PGAツアー戦績[編集]

シーズン 優勝 (メジャー) 賞金 ($) ランク[13]
1991 1 0 N/A
1992 0 171,714 90
1993 2 628,735 22
1994 1 748,316 15
1995 1 655,777 28
1996 4 1,697,799 2
1997 2 1,225,390 11
1998 2 1,837,246 6
1999 0 1,722,681 14
2000 4 4,746,457 2
2001 2 4,403,833 2
2002 2 4,311,971 2
2003 0 1,623,137 38
2004 2 (1) 5,784,823 3
2005 4 (1) 5,699,605 3
2006 2 (1) 4,256,505 6
2007 3 5,819,988 2
2008 2 5,118,875 3
2009 3 5,332,755 3
2010 1 (1) 3,821,733 6
2011 1 3,763,488 12
2012 1 4,203,821 8
2013 2 (1) 5,495,793 4
2014 0 2,158,019 38
2015 0 2,154,200 38
2016 0 4,022,628 12
2017 0 2,102,599 45
2018 1 4,595,187 13
2019 1 2,440,221 39
2020 0 1,493,908 60
2021 1 (1) 2,707,199 41[14]
通算* 45 (6) $94,814,452 2[15]

* 2020–21シーズンまで.

アマチュア時代は賞金は受け取らなかった.

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ “マスターズが特別”は過去の話!?ミケルソンと松山英樹の温度差。”. 舩越園子(文藝春秋/NUMBER) (2014年4月9日). 2018年11月21日閲覧。
  2. ^ クレイグ・グレンディ『ギネス世界記録 2014』p242(2013年9月12日初版、KADOKAWA)
  3. ^ “ミケルソン、失言の波紋 米ゴルフツアー批判の本意は”. 日本経済新聞. (2022年3月2日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH011CP0R00C22A3000000/ 2022年5月24日閲覧。 
  4. ^ “口は災いの元”ミケルソン、ガルシア…メジャーチャンピオンたちの舌禍が情けない”. e!Golf (2022-05-018). 2022年5月24日閲覧。
  5. ^ ミケルソンがツアー復帰へ、物議の新設リーグにも参加申請”. AFP (2022年4月26日). 2022年6月16日閲覧。
  6. ^ ミケルソン、将来的な米ツアー復帰を希望 新リーグ参戦で資格停止”. AFP (2022年6月14日). 2022年6月16日閲覧。
  7. ^ ミケルソン、キャロウェイとの新たな契約に合意”. PGA TOUR, Inc (2017年10月5日). 2018年11月21日閲覧。
  8. ^ 歴史・沿革(1991-2000年) ヨネックス株式会社 企業情報サイト”. ヨネックス株式会社. 2018年11月21日閲覧。
  9. ^ 【第16回ギア!名勝負】コンポジットヘッドドライバー対決”. みんなのゴルフダイジェスト (2016年9月11日). 2018年11月21日閲覧。
  10. ^ 全米で批判浴びたミケルソン、またペナルティ!ラフの草を踏み倒す”. www.sportingnews.com. www.sportingnews.com. 2020年11月7日閲覧。
  11. ^ まさかの愚行、フィル・ミケルソンがグリーン上で動いている球を故意にストローク”. www.alba.co.jp/. www.alba.co.jp/. 2020年11月7日閲覧。
  12. ^ 全米オープンの“主役”フィル・ミケルソン、2年ぶりにキャリアグランドスラムに挑む2021年5月24日閲覧。
  13. ^ 米国男子賞金ランキング(2021年)
  14. ^ stat.109”. pgatour.com. pgatour.com. 2023年4月20日閲覧。
  15. ^ stat.110”. pgatour.com. pgatour.com. 2023年4月20日閲覧。

外部リンク[編集]