フィリップ・コトラー
フィリップ・コトラー (Philip Kotler) | |
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| 生誕 |
1931年5月27日(94歳) |
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| 国籍 |
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| 研究分野 | 経営学 |
| 研究機関 |
ハーバード大学 シカゴ大学 ノースウェスタン大学 |
| 出身校 |
シカゴ大学修士課程修了 マサチューセッツ工科大学 博士課程修了 |
| 主な業績 |
マーケティングの6Pの提唱 マーケティングの7Pの提唱 STPマーケティングの提唱 |
| 影響を受けた人物 | エドモンド・ジェローム・マッカーシー |
| プロジェクト:人物伝 | |
フィリップ・コトラー(Philip Kotler、1931年5月27日 - )は、アメリカ合衆国の経営学者(マーケティング論)。学位はPh.D.(マサチューセッツ工科大学)。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院SCジョンソン特別教授。
来歴
[編集]シカゴ大学で経済学の修士号を、マサチューセッツ工科大学で経済学の博士号を取得した。その後、ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院にて教授に就任した。現在はSCジョンソン特別教授(S.C. Johnson & Son Distinguished Professor)[1]を務める。現代マーケティングの第一人者として知られ、日本でも数多くの著書が翻訳されるとともに、解説本なども出版され、主要な学術誌に90点を超える論文を寄稿している[2]。コトラーの著書の日本語翻訳は、主に村田昭治、井関利明、恩藏直人らが監修している。
研究
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企業を取り巻く外部環境を分析するPEST分析、顧客のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを説くSTP理論や、マーケティング・ミックスの4Pにpublic opinion(世論)・political power(政治力)を加えた6P理論、または4Pにpeople(人)・processes(プロセス)・physical evidence(物的証拠)を加えた7P理論、マーケティング5.0などが有名。また、その研究活動は、営利事業の分野だけに留まらない。美術館や非営利事業の資金調達、あるいは政治活動のマーケティングの研究などその足跡は他分野に及んでいる。
時代とともに変遷するマーケティングの概念を平易で具体的に説明していることなどから、「近代マーケティングの父」、「マーケティングの神様」と評される。「マーケティングは生産物を処分するための技術などではなく、本物の顧客価値を生み出すための活動で、顧客の生活向上を支援する概念でもある」、「マーケティングの役割とは、たえず変化する人々のニーズを収益機会に転化することだ」など、マーケティングの本質について広く理解を得るための活動を行っていることで知られる。一方、「マーケティング教科書の神様」と批評されることもあり、フィンランドのマーケティング学者クリスチャン・グレンルースはコトラーが体系化したマーケティング理論を否定・批判している。
PEST分析
[編集]企業活動は常に、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)という4つの巨大な環境要因による不可逆的な変化にさらされているとした。コトラーは、これらを分析して市場における機会と脅威を評価することが重要であるとした。
STPマーケティング
[編集]STPマーケティングは、市場を以下の3つのステップで分析する[3]。それぞれのステップの頭文字をとって、STPという。
- セグメンテーション(市場細分化)
消費者をセグメントと呼ばれるカテゴリーに特定し、分類する。市場細分化(マーケット・セグメンテーション)ともいわれる。
- ターゲティング(標的市場)
セグメント化した結果、ビジネスにとって最も収益性の高いセグメントを特定する。ターゲットの経済的価値(市場規模、成長性)やニーズを分析することが重要である。
- ポジショニング
各セグメントに対する明確な競争上の優位性を確立する。
コトラーの競争地位戦略
[編集]自社製品が市場でどれだけのシェアを獲得しているかによって、「リーダ」「チャレンジャ」「フォロワ」「ニッチャ」の4つの競争地位に分類し、それぞれが適した戦略を実行するという戦略[4]。
| 競争地位 | 特徴 | とるべき戦略 |
|---|---|---|
| リーダー | 市場の過半をおさえ圧倒的優位に立つ | 現在のシェアを維持し、新規需要を開拓するなどして市場規模拡大を図る。いわゆる全方位戦略。 |
| チャレンジャー | 2番目のシェアをもつ | リーダー企業に対して、差別化や低価格路線を採用し、シェアNo.1を目指す。 |
| フォロワ | 市場シェアは下位で資金力も弱い | 成功しているリーダー企業を模倣し、シェア拡大を図る。 |
| ニッチャ | ベンチャー企業などで、独自性や専門性をもつ | ニッチ戦略で大企業が参入しにくい特定分野に資源を投入して利益を得る。 |
マーケティング・ミックスは、エドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱し、コトラーが戦略実行の要として体系化したフレームワークである[5]。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の頭文字をとり、4Pと言われ、これらの要素から構成されるものである。
なお、マーケティングの4Pを最初に提唱したのはコトラーだと誤解している者も多い。コトラー自身も「最初に提唱したのはジェリー・マッカーシーだ」[5]と述べたうえで「日本では『4P』の最初の提唱者が私だと思っている読者がいるが、ちゃんと先達がいた」[5]と説明している。
プロダクト5層モデル
[編集]プロダクト5層モデルは、製品を顧客満足を満たすための多層的な価値構造として定義した概念である。5層とは、「コア・ベネフィット」「実体製品」「期待製品」「拡張製品」「潜在製品」から構成され、中心にあるものがより重要視される[6][7]。 コトラーは、顧客が真に購入しているのは物理的なモノではなく「中核的便益」であると説き、競争が激化する現代においては、機能や品質を満たすだけでなく、アフターサービスやブランド体験といった拡張製品や、将来の進化を示す潜在製品の領域で差別化を図ることこそが、市場での優位性を決定づけると論じている。
ソーシャルマーケティングとは、フィリップ・コトラーらが1970年代に提唱した概念である。マーケティングの適用範囲を単なる企業の営利活動から社会変革へと拡張したものである。 コトラーは、従来の企業利益と顧客満足の二次元に加え、社会の長期的利益という第三の視点を統合すべきだと主張た。し、マーケティングの技術や理論を用いて、社会的な課題解決や、人々の好ましい行動変容を促す活動こそが、現代企業に求められる役割であると定義した。
5A
[編集]コトラーは著書マーケティング4.0において「5A」という概念を提唱した。5Aとは、デジタル経済下での顧客行動プロセスを再定義したモデルであり、Aware(認知)、Appeal(訴求)、Ask(調査)、Act(行動)、Advocate(推奨)の5段階から成る[8]。 コトラーは、ソーシャルメディアの普及により、従来のAIDAのように単に購入(Act)をゴールとするのではなく、顧客が周囲の意見を検索(Ask)し、最終的に自らが熱心なファンとして他者に推奨(Advocate)するに至るプロセスこそが、現代のブランド構築における最終目的であると論じた。
マーケティング論
[編集]コトラーは、時代の要請に応じ、マーケティングがどのように変化・拡張されてきたかを、バージョン表記を用いて提唱し、著作物として発表している[9]。
- マーケティング 1.0 : 工業化時代。良い製品を作れば売れるという製品中心の考え方。
- マーケティング 2.0 : 情報化時代。顧客のニーズを理解し、満足させる顧客中心の考え方。
- マーケティング 3.0 : 人間の精神性を重視。社会貢献や世界をより良くすることを掲げる価値中心の考え方。
- マーケティング 4.0 : デジタル化。SNSやオンラインでの顧客体験(CX)を重視。
- マーケティング 5.0 : AIやロボティクスなどの先端技術と、人間中心の価値を融合させる段階。
- マーケティング 6.0 : メタバースや空間コンピューティングを活用した、より没入型の体験。
顕彰
[編集]家族・親族
[編集]実弟のミルトン・コトラーは、コトラーマーケティンググループの代表を務めている[10]。
主な著作
[編集]- マーケティング Management: Analysis,Planning, and Control,Prentice Hall.
- Principles of マーケティング,Prentice Hall.
- マーケティング for nonprofit organizations,Prentice-Hall.(1975年)
- Social マーケティング:Strategies for Changing Public Behavior,The Free Press.(1989年、Eduardo L. Robertoと共著。)
- 翻訳書:井関利明[監訳](1995年)『ソーシャル・マーケティング―行動変革のための戦略―』ダイヤモンド社。
- Up and Out of Poverty: the Social マーケティング Solution,Pearson Education.(2009年、Nancy R. Leeと共著。)
- 翻訳書:塚本一郎(2010)『コトラー ソーシャル・マーケティング―貧困に克つ7つの視点と10の戦略的取り組み―』丸善。
- マーケティング 3.0: From Products to Customers to the Human Spirit,John Wiley & Sons.(2010年、Hermawan KartajayaとIwan Serhiwanと共著。)
- 翻訳書:恩藏直人[監訳]、藤井清美[訳](2010)『コトラーのマーケティング3.0―ソーシャル・メディア時代の新法則』朝日新聞出版。
- 『コトラーのマーケティング・マネジメント』ISBN 978-4-89471-658-2
- 『コトラーのマーケティング・コンセプト』ISBN 978-4-492-55476-0
- 『マーケティング10の大罪』ISBN 978-4-492-55529-3
- 『コトラーのホスピタリティ&ツーリズム・マーケティング』
- 『コトラーの戦略的マーケティング』
- 『コトラーの資金調達マーケティング』
- 『コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング』
- 『新マーケティング原論』(翔泳社)
- 『市場戦略論』
- 『社会的責任のマーケティング』
- 『コトラーのマーケティング講義』
- 『コトラーのマーケティング思考法』
- 『カオティクス』(東洋経済新報社)
- マーケティング 5.0: Technology for Humanity,WILEY. (2021年、Hermawan Kartajaya,とIwan Setiawanと共著)
- 翻訳書:恩藏直人[監訳]、藤井清美[訳](2022)『コトラーのマーケティング5.0―デジタル・テクノロジー時代の革新戦略』朝日新聞出版。
日本語訳未翻訳著書
[編集]- Social マーケティング: Improving the Quality of Life,2nd Edition,Sage Publications,Inc..(2002年、Ned Roberto、Nancy R. Leeと共著。)
- Social マーケティング: Influencing Behaviors for Good,3rd Edition,Sage Publications,Inc..(2008年、Nancy R. Leeと共著。)
- Social マーケティング for Public Health: Global Trends and Success Stories,Jones & Bartlett Pub..(2009年、Hong Cheng、Nancy R. Leeと共編著。)
- Social マーケティング to Protect the Environment: What Works,Sage Publications,Inc..)(2011年、Doug McKenzie-Mohr、Nancy R. Lee、Paul Wesley Schultzと共著。)
- Social マーケティング: Influencing Behaviors for Good,4th Edition,Sage Publications.(2012年、Nancy R. Leeと共著。)
脚注
[編集]- 1 2 "Biography", Biography.
- ↑ 『コトラーのマーケティング入門』丸善出版、2014年、686頁。ISBN 9784621066171。
- ↑ 高橋宏幸; 丹沢安治; 花枝英樹; 三浦俊彦『現代経営入門』有斐閣、2011年、141-143頁。
- ↑ Competitive Dynamics (Chapter 11 Kotler-Keller) 14th (PDF) (Report). 2026年2月6日閲覧.
- 1 2 3 フィリップ・コトラー「私の履歴書――『4P』の誕生――商業活動の理念構築――処女作構想練るが、実現せず」『日本経済新聞』45916号、日本経済新聞社、2013年12月8日、36面。
- ↑ “プロダクト5層モデルとは?基本概念と各層の詳しい解説!”. 株式会社 StratEdge(株式会社ストラテッジ). 2026年2月7日閲覧。
- ↑ Product and Brand Management (PDF) (Report). Gurukpo. 2026年2月9日閲覧.
- ↑ “5A|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA”. 創造と変革のMBA グロービス経営大学院. 2026年2月7日閲覧。
- ↑ “マーケティングの歴史⑤:コトラーのマーケティング5.0 | 東洋経済プロモーション | 広告、セミナー、イベント、企業出版・カスタム出版の法人向けサイト”. 東洋経済PROMOTION. 2026年2月7日閲覧。
- ↑ "Milton Kotler – President, Kotler Marketing Group", Kotler Marketing Group, Inc., Kotler Marketing Group.
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Philip Kotler | Father of Modern マーケティング - 公式サイト
- Philip Kotler - Faculty - Kellogg School of Management - コトラーを紹介するノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のページ