フィリックス・ザ・キャット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フィリックスから転送)
移動先: 案内検索
『フィリックスと金の鵞鳥』(1936年)

フィリックス(フィリックス・ザ・キャット。英語: Felix the Cat)は、黒猫をモチーフにしたアメリカの漫画、アニメーションのキャラクターである。日本では、戦前は主に「フェリックス」と呼ばれ、また1960年代前半には雑誌『家庭全科』(国際情報社刊)で「黒猫フェリックス」(ジョー・オリオロ作)の題で連載されていたが、一般に日本語読みはフィリックスである。

歴史[編集]

笑うフィリックス(オットー・メスマー原画による初期のもの)

名前の由来は「フェリシアス」(ラテン語由来、幸運の意味)と「フェーリス」(同、猫の意味)より。漫画家でアニメーターであるオットー・メスマーが創作し、1919年に、オーストラリア出身で渡米後に映画プロデューサーになったパット・サリバンにより Feline Follies としてアニメーション化され劇場に登場した。数分程度の短い白黒サイレントアニメーションであり[1]、初期のものは、体型は普通の猫に近く、フィリックスという名前もなかった。しかしすぐに大きな目、2本脚で歩く特徴的なキャラクターとなり、フィリックスの名が付けられて子供から大人まで広く人気を呼び、続編が多数(約150本)製作された。当時有名な野球チームであったニューヨーク・ヤンキースの公式キャラクターとなったりVF-31(アメリカ海軍航空隊)のマークに用いられたことなどからもその人気がうかがえる。アメリカ国外でも知られ、日本の漫画家田河水泡は、「のらくろ」のキャラクター創造のヒントがフィリックスであった旨を晩年のラジオ番組で明らかにしている[2]

フィリックスを部隊マーキング等に用いるVF-31(アメリカ海軍航空隊)のロゴ

しかしサリバンの死によってフィリックスの版権は混乱、贋作アニメや無許可商品が粗製乱造された。またトーキーをいち早く導入したマックス・フライシャーの、ソング・カー・テューンズや、ウォルト・ディズニーミッキーマウスの登場にもかかわらずサイレント作品に固執したことも一因となり、フィリックスの人気は凋落。わずかにメスマーが新聞に細々と連載を続けるのみとなった。

フィリックスの人気がよみがえるのは第二次世界大戦後である。メスマーの助手を務めていたジョー・オリオロの手になるリニューアルによるもので、ほっそりした体型と2本の長い脚ですっくと立つ、現在広く知られるスタイルに生まれ変わった。同時に脇役も多種多様な顔ぶれがそろった。アメリカでの人気も高いが、世界各国でも、この新しいフィリックスが広く知られるようになった。これは、1958年にカラーでテレビアニメ化されて各国で放送されたことにもよる。日本でも、白黒放送ではあるが1960年にNHKテレビで、1963年にはフジテレビで放送され人気を呼んだほか、雑誌『家庭全科』にジョー・オリオロ筆の4コマ(時には3コマ)漫画が掲載された。その後も人気は衰えず、日本でも1980年代には女性雑誌やテレビコマーシャルのキャラクターなどに採用されて、21世紀に入っても親しまれている。

新しいフィリックス[編集]

ジョー・オリオロはオットー・メスマーの創作したフィリックスの容姿を変えたが、それだけではなく、特にテレビ版においては多彩な脇役を配し、魔法の黄色いかばん(Magic Bag または Bag of Tricks)を持たせて活躍させるなど、新たな世界を開拓した。黄色いかばんはフィリックスの思いのまま、どんな物にでもなって用を弁ずる万能の小道具であり、ドラえもん四次元ポケットとの共通点が多く、漫画評論家の米澤嘉博もドラえもんの発想の原型のひとつとして、フィリックスを上げている[3]。またフィリックスは正義感が強く、銀行強盗や破壊行為などの悪事を企てたり、黄色いかばんを奪おうとする大博士(だいはかせ)とロックのコンビを相手に、一時は負けそうになりながら最後にはフィリックスが勝利を収める勧善懲悪的な話が主であるが、それだけでなく、豆博士(まめはかせ)との絡みやテレビ人間との丁々発止、あるいはフィリックスの日常生活を題材にした話もあり、多様な展開を見せる。4コマ漫画版では黄色いかばんや悪役は登場せず、もっぱらメスの白猫キティとフィリックスのやり取りが中心になっていた。一人称は作品や声優によって異なっており、「僕」もしくは「俺」が主である。

1997年平成9年)から衛星アニメ劇場で放送されたアニメ版『フィリックス』はサイケデリック色が強い。フィリックスの他にも、ロスコ、キャンディ、シェバなどのキャラクターが存在する。

声優は、90年代に創美出版から発売されたVHS「フィリックスの大冒険」では日高のり子が、2001年にイーストウエストジャパンから発売されたDVDでは矢薙直樹が担当。

配役(1960年代初期に日本で放送された時のもの)[編集]

大博士:原作ではプロフェッサー(Professor)。頭頂部が禿げた白髪白髯で小柄な老人。名前どおり科学者で、いろいろな武器や道具を発明して悪事を働き、またフィリックスの黄色いかばんを奪い取ろうとするが、時折、豆博士の叔父(伯父?)になってフィリックスの味方することもある。声優はVHSでは永井一郎、DVDでは北村弘一が担当。
豆博士:原作ではポインデクスター(Poindexter)。子供の天才科学者。フィリックスと仲がよい。善人ではあるが研究熱心なあまり、結果的に悪人に手を貸すこともある。登場回数は多くない。シリーズによってはプロフェッサーとともにフィリックスの黄色いかばんを奪うのを手伝うこともある。VHSではかないみか、DVDでは山門久美が担当。
ロック:原作ではロック・ボトム(Rock Bottom)。ブルドッグのような犬を擬人化した巨漢の悪人。大博士の手下になって悪いことをする。VHSでは大塚明夫が担当。
爆弾小僧:「爆弾くん」とも。原作ではヴァヴーム(Vavoom)。フード付きの服を着た年齢不詳のエスキモー(イヌイット)男性。小柄で「ヴァヴーム!」と大声を上げるのみだが、その声は巨岩やコンクリート壁を吹き飛ばす威力がある。登場回数は少ない。
テレビ人間:原作ではマスター・シリンダー(Master Cylinder)。太い金属製筒型の胴体に機械の腕が付き、顔はテレビ画面になっており、そこに目鼻口があり、言葉を発する。悪役として、フィリックスを捕えようとしたり火星から地球侵略を企てたりする。登場回数は少ない。VHSでは飯塚昭三が担当。
タコ将軍:タコを擬人化したキャラクター。テレビ人間の部下として地球侵略の手伝いをする。登場回数はわずか。

日本における歴史[編集]

日本での声優は1960年昭和35年)からのNHK放送版はアニメ監督として知られる長浜忠夫夫人でもあった三井淳子。その後では中尾隆聖、フィリックスの大冒険(上述の映画フィリックス・ザ・キャットの邦題)では堀絢子、90年代に発売されたVHS、ダイハツのCMでは日高のり子が担当した。『ベイビーフィリックス』では子供は冬馬由美で大人は関俊彦、『フィリックス・ザ・キャット フィリックスのクリスマスを救え!』では浅野まゆみ。2010年放送中のファミリー劇場版では矢薙直樹、2001年にイーストウエストジャパンから発売されたDVD-BOX用に新録された音声を流用している。地上波当初の主題歌ではオリジナルに日本語歌詞を付けたもの(短編のテーマソング)が放送されてペギー葉山が歌われていたが、その後は英語主題歌が使われている。

おもなフィルモグラフィ[編集]

『フェリックスと春の嵐』、フィリックスとウィンキーとインキー (1930年)
The Goose That Laid the Golden Egg (1936年)
  • 『フェリックスの初恋』 Feline Follies : 1919年 - 製作パラマウント映画
  • フェリックス ハリウッドへ行くFelix in Hollywood : 1923年 - 製作マーガレット・J・ウィンクラーen:Margaret J. Winkler
  • 『フェリックスとおとぎの国』 Felix in fairy land : 1923年 - 製作マーガレット・J・ウィンクラー
  • 『フェリックスのパズル解決』 Felix All Puzzled : 1924年 - 製作マーガレット・J・ウィンクラー
  • 『フェリックスの喰いしん坊』 : 1927年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズen:Educational Pictures
  • 『フェリックスのロミオ』 Roameo : 1927年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズ
  • 『フェリックスのシャーロック・ホームズ』 Felix the Cat in Sure-Locked Homes : 1928年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズ
  • 『フェリックスの占い師』 : 1928年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズ
  • 『フェリックスの酔っぱらい』 : 1928年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズ
  • 『フェリックスの石油成金』 The Oily Bird : 1928年 - 製作エデュケーショナル・ピクチャーズ
  • フェリックスと春の嵐April Maze : 1930年 - 製作コプリー・ピクチャーズ
  • フェリックスの五里霧中Woos whoopee : 1930年 - 製作コプリー・ピクチャーズ
  • 『フェリックスのボートレース』 Oceantics : 1930年 - 製作コプリー・ピクチャーズ

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ トーキー即ち有声映画の登場は1923年以降。カラー映画の登場は1920年代後半。
  2. ^ ヒストリーチャンネル 『フィリックス・ザ・キャットの真実』 2009年初放送
  3. ^ 『藤子不二雄論』河出書房新社 P223

参考資料[編集]

  • ヒストリーチャンネル 『フィリックス・ザ・キャットの真実』 2009年初放送

外部リンク[編集]

フジテレビ 月~土18:55 - 19:00 明治乳業一社提供
前番組 番組名 次番組
とびだせフィリックス
(第1期)
(1963年1月~11月)
マイティ・ハーキュリー
(第1期)
とびだせフィリックス
(第2期)
(1964年8月~1965年6月)
マイティ・ハーキュリー
(第2期)
シンドバッドの冒険
(第2期)
とびだせフィリックス
(第3期)
(1967年4月~12月)
シンドバッドの冒険
(第3期)