ビル・プロンジーニ

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ビル・プロンジーニ
(Bill Pronzini)
ペンネーム ウィリアム・ハート・デイヴィス
ジャック・フォックス
ウィリアム・ジェフリー
アレックス・サクソン
誕生 (1943-04-13) 1943年4月13日(81歳)
アメリカ合衆国の旗 カリフォルニア州ペタルマ
職業 作家
言語 英語
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
活動期間 1963年 -
代表作 名無しの探偵シリーズ
デビュー作The Stalker
配偶者 マーシャ・ミュラー(1992年 - )
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ビル・プロンジーニBill Pronzini1943年4月13日 - )はアメリカ合衆国推理小説作家。アンソロジストでもあり、ミステリー西部劇サイエンス・フィクションなどの短編小説を集めたアンソロジーを100以上編んでいる。カリフォルニア州ペタルマ出身。

人物[編集]

サンタ・ローサ短期大学中退後、数々の職業を経て、1969年に作家に転向。1971年に処女長編 The Stalker でデビュー。

しかしプロンジーニの作品で最も有名なのは《名無しの探偵》シリーズで、こちらも最初の長編『誘拐』は1971年の刊行である。「ネオ・ハードボイルド」派の一員とされた。2009年4月現在で同シリーズは35冊以上になっており、短編集もいくつかある。シリーズの中で主人公である名無しは作者や読者と共に年齢を重ね、徐々に普通の人へと成長し円熟している。描かれる犯罪はミステリーとしては一般的な範囲内であり、暴力シーンの描写は比較的少ない。プロンジーニの作風はプロットよりも人物描写を重視したものである。主人公はシリーズの進展と共に成長しているため、順番に読んだほうがわかりやすい。同シリーズは約20カ国語に翻訳され、30以上の国で出版されている。名無しの探偵の特徴である、パルプ雑誌のコレクションをしていることや、愛煙家であることは、プロンジーニ自身の特性が反映されている[1]

3度結婚しており(2度はいずれも離婚)、現在の妻はやはり推理作家のマーシャ・ミュラー1944年 - 、1992年に結婚)。小説の合作や推理小説のガイドブックの共著があり、アンソロジーの共同編集も多数手がけている。

ウィリアム・ジェフリージェフリイ・M・ウォールマンとの共同ペンネームである。

1987年、アメリカ私立探偵作家クラブ (PWA) から貢献賞の The Eye を授与された。2008年にはアメリカ探偵作家クラブ (MWA) からMWA賞 巨匠賞を授与された。

作品[編集]

名無しの探偵シリーズ[編集]

# 邦題 原題 刊行年
アメリカ合衆国の旗
刊行年月
日本の旗
訳者 出版社
日本の旗
備考
1 誘拐 The Snatch 1971年 1977年11月 高見浩 新潮社
2 失踪 The Vanished 1973年 1978年8月 高見浩 新潮社
3 殺意 Undercurrent 1973年 1980年2月 高見浩 新潮社
4 暴発 Blowback 1977年 1987年10月 吉村透 徳間書店
5 依頼人は三度襲われる Twospot 1978年 1980年3月 宮脇孝雄 文藝春秋 コリン・ウィルコックス英語版「ヘイスティング警部」との共作
6 死角 Labyrinth 1980年 1981年9月 高見浩 新潮社
7 脅迫 Hoodwink 1981年 1983年1月 高見浩 新潮社
8 迷路 Scattershot 1982年 1987年11月 小鷹信光 徳間書店
9 標的 Dragonfire 1982年 1988年8月 吉村透 徳間書店
10 追跡 Bindlestiff 1983年 1988年10月 関口篤 徳間書店 『名無しの探偵事件ファイル』収録の「オウローヴィル貨物駅」を長編化した作品
11 名無しの探偵事件ファイル
  • 「顔のない声」(『小説新潮』1982/5)
  • 「盗まれた部屋」(『小説新潮』1982/8)
  • 「ラギダス・ガルチの亡霊」(『小説新潮』1982/10)
  • 「オウローヴィル貨物駅」(『小説新潮』1983/3)
Casefile 1983年 1984年1月 高見浩 新潮社 短編集(4編収録)
小説新潮』に書き下ろし掲載された
12 復讐 Quicksilver 1984年 1985年6月 高見浩 新潮社
13 亡霊 Nightshades 1984年 1989年2月 矢島京子 徳間書店 『名無しの探偵事件ファイル』収録の「ラギラス・ガルチの亡霊」を長編化した作品
14 ダブル Double 1984年 1989年3月 木村二郎 徳間書店 マーシャ・ミュラー「私立探偵シャロン・マコーン」の共作
15 Bones 1985年 1989年10月 矢島京子 徳間書店
16 奈落 Deadfall 1986年 1990年1月 矢島京子 徳間書店
17 報復 Shackles 1988年 1990年8月 遠藤不二彦 徳間書店
18 Jackpot 1990年
19 Breakdown 1991年
20 Quarry 1992年
21 Epitaphs 1992年
22 Demons 1993年
23 凶悪 Hardcase 1995年 2000年6月 木村二郎 講談社
24 Spadework 1996年 短編集
25 Sentinels 1996年
26 幻影 Illusions 1997年 2003年8月 木村二郎 講談社
27 Boobytrap 1998年
28 Crazybone 2000年
29 Bleeders 2002年
30 Spook 2003年
31 Scenarios 2005年 短編集
32 Nightcrawlers 2005年
33 Mourners 2006年
34 Savages 2007年
35 Fever 2008年
36 Schemers 2009年
37 Betrayers 2010年
38 Camouflage 2011年

その他の作品[編集]

# 邦題 原題 刊行年
アメリカ合衆国の旗
刊行年月
日本の旗
訳者 出版社
日本の旗
備考
1 The Stalker 1971年
2 パニック Panic! 1972年 1979年5月 野口迪子 TBS出版会
3 雪に閉ざされた村 Snowbound 1974年 2001年12月 中井京子 扶桑社
4 嘲笑う闇夜 The Running of Beasts 1976年 2002年5月 内田昌之 文藝春秋 バリイ・N・マルツバーグとの合作
5 裁くのは誰か? Acts of Mercy 1977年 1992年7月 高木直二 東京創元社 バリイ・N・マルツバーグとの合作
6 決戦! プローズ・ボウル 小説速書き選手権 Prose Bowl 1980年 1989年6月 黒丸尚 新潮社 バリイ・N・マルツバーグとの合作
7 マスク Masques 1981年 1988年3月 水野谷とおる 東京創元社
8 よそ者たちの荒野 A Wasterland of Strangers 1987年 1998年11月 山本光伸 早川書房
9 Blue Lonesome 1995年

アンソロジー[編集]

  • 『現代アメリカ推理小説傑作選01』 Tricks and Treats (1976) ジョー・ゴアズとの共同編集
  • 『1ダースの未来 SF合作ゲーム傑作選』 Shared Tomorrows: Science Fiction in Collaboration (1979) バリイ・N・マルツバーグとの共同編集
  • 『エドガー賞全集 -アメリカ探偵作家クラブ傑作選6』 The Edgar Winners (1980)

受賞・ノミネート歴[編集]

  • 1972年:"The Stalker"エドガー賞 処女長編賞ノミネート
  • 1979年:「霧の中から」でエドガー賞 短編賞ノミネート
  • 1982年:『脅迫』でシェイマス賞 長編賞受賞
  • 1983年:"Gun in Cheek" でエドガー賞 評論・評伝部門ノミネート
  • 1984年:「ライオンの肢」でシェイマス賞 短編賞受賞
  • 1986年:『骨』でシェイマス賞 長編賞ノミネート
  • 1987年:シェイマス賞 ジ・アイ賞受賞
  • 1987年:"1001 Midnights: The Aficionado's Guide to Mystery Fiction" (マーシャ・ミュラーとの共著)でマカヴィティ賞評論賞受賞、エドガー賞 評論・評伝部門ノミネート
  • 1989年:「近くの酒場での事件」でエドガー賞 短編賞ノミネート
  • 1989年:『報復』でアンソニー賞 長編賞ノミネート
  • 1990年:「サンタクロースがやってくる」でシェイマス賞 短編賞ノミネート
  • 1996年:"Home is the Place Where" でシェイマス賞 短編賞ノミネート
  • 1996年:"Blue Lonesome" でアンソニー賞 長編賞ノミネート
  • 1997年:"Sentinels" でシェイマス賞 長編賞ノミネート
  • 1998年:『よそ者たちの荒野』でエドガー賞 長編賞ノミネート、バリー賞 長編賞ノミネート
  • 1999年:"Boobytrap"シェイマス賞 長編賞受賞
  • 2001年:「大きなひと噛み」でシェイマス賞 短編賞ノミネート
  • 2007年:"Devil's Brew" でシェイマス賞 短編賞ノミネート
  • 2008年:エドガー賞 巨匠賞受賞
  • 2010年:"Schemers" でシェイマス賞 長編賞ノミネート

脚注[編集]

  1. ^ 木村二郎『尋問・自供-25人のミステリ・ライター』(早川書房)P.271

関連項目[編集]