ヒルガオ

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ヒルガオ
Calystegia pubescens1.jpg
ヒルガオ(大阪府・2005年9月)
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: ナス目 Solanale
: ヒルガオ科 Convolvulaceae
: ヒルガオ属 Calystegia
: ヒルガオ C. japonica
学名
Calystegia japonica
和名
ヒルガオ(昼顔)
英名
False bindweed

ヒルガオ(昼顔、学名Calystegia japonica、シノニムCalystegia pubescens他)は、ヒルガオ科のつる性植物。夏にアサガオに似た桃色の花を咲かせ、昼になってもがしぼまないことからこの名がある。薬用植物であり、民間では利尿薬として利用した。

名称[編集]

和名ヒルガオの由来は、「昼の顔」の意味するところから名付けられたものである[1]。花が咲いている時間帯は、朝から花を咲かせて夕方にしぼむまで昼間も咲き続けているため、ヒルガオと呼ばれている[2][3][1][注釈 1]。日本には古くから自生しており、奈良時代末期に成立したとされる『万葉集』では、美しいという意味を表す「容」の語を当てて、容花(かおばな)として記載が見られる[1]。奈良時代に朝廷が派遣した遣唐使が、中国)よりアサガオ(朝顔)が持ち帰られたときに、アサガオに対する呼び名としてヒルガオと呼ばれるようになったといわれている[1]

地方により様々な呼び名があり、おこり花[5]、つんぶー花[5]、おこりづる[5]、かみなり花[5]、てんき花[5]、雨ふり花[5]、ちち花[5]、かっぽう[5]などの地方名でも呼ばれている。

英語では、バインドウィード(Bindweed:「巻き付く雑草」の意) 、フォールス・バインドウィード(False bindweed:〈セイヨウヒルガオに対する〉偽ヒルガオの意味) [5]、中国名(漢名)では、日本天剣(にほんてんけん)といい[6]、中国で旋花(せんか)[7]ともよばれている。

花言葉は、「絆」[5]「優しい愛情」[5]「情事」[5]「友達のよしみ」[5]である。

特徴[編集]

日本原産の在来種で[5]北海道から九州までの日本全国に分布し[3]、国外では朝鮮半島中国に分布する[7]。日当たりのよい野原道端線路際、空き地河川敷などに普通に自生する[6][8][5]

地下茎で増殖するつる性多年草[8][1]、地上部は毎年枯れる。白い根茎が地中を走る[8]。切断された茎片からも伸びだし[8]からが伸び始め、にかけて繁茂する。一般的なつる植物は、双葉が出たあとに本葉を出して蔓を伸ばすが、ヒルガオは双葉が出たあと本葉が出る前に、他の植物よりも少しでも早く成長させようと蔓を伸ばしてくる[1]

には長い葉柄があって互生し、葉の長さは10 cmほどの細長い三角形をしている[3]。葉身は矛形や矢はず形で、基部の両側に少し張り出した側片があり、分裂せずに先は尖っている[8][7]

花期は初夏から夏(6月 - 8月)[9]。葉のつけ根から花柄を出して、薄いピンク色で直径5 - 6センチメートル (cm) の花を咲かせる[9][7]。花の形は漏斗形[8]。蔓が伸びるに従い、蔓先へと咲き進む[8]。花は日中に開いて夕方にしぼむ[8]。花のつけ根にあるを包むように大きな2枚のがつく[3]。苞葉が萼を包み込むので、帰化植物のセイヨウヒルガオ(西洋昼顔、学名Convolvulus arvensis)と区別できる。花柄には翼がつかない[7]

果実はふつう結実しない[8][7]。アサガオは自花だけでも受粉をすれば種子をつくるが、ヒルガオのそれは異なり、自分の花(自株)の雄しべ花粉を、自分の雌しべにつけても実ることはなく、種子をつくるためには、他の株の花粉がつかなければならない[4]。そのため、地下茎で増殖するヒルガオにとって、異株がたくさん育っている場所ではない限り、種子を得ることは難しい[4]

アサガオは鑑賞用に栽培される園芸植物であるが、ヒルガオは地下茎が長く伸びて増殖し、一度増えると駆除が難しいため、大半は雑草として扱われる[10][1]

利用[編集]

ヒルガオは薬用植物でもあり、全草を乾燥したものは旋花(せんか)という生薬になる[8]。中国ではヒロハヒルガオ(旋花)が同じ薬用に使われる[6]。若い茎葉は食用にできる[8]。花や蕾は食用に適しており、アクも少ないため生食も可能な野草として知られている。

薬用[編集]

生薬である旋花は、夏期(開花期)の茎葉がよく伸びたものを刈り取り、水洗いして2 - 3 cmほどに刻んで、天日干しまたは陰干しして調製される[6][8]利尿、強精強壮、疲労回復、糖尿病高血圧予防に役立つとされ、旋花1日量5 - 15グラムを、水500 - 600 ccで半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている[6][8]神経痛には50グラムほどを浴湯料として用いる[6]。天日干しした葉を煮出してお茶代わりに飲むと、疲労回復に役立つとされている[3]

食用[編集]

若い蔓や葉は、軽く茹でてお浸し和え物にして食べられる[3]。また、生の葉は天ぷら油炒めに、花は湯にくぐらせてから酢の物にして食べることが出来る[3]

類似種[編集]

近縁種にコヒルガオヒロハヒルガオハマヒルガオなどがあり、ヒルガオ同様の薬効がある薬用植物として用いられている[6][8]

コヒルガオ[編集]

コヒルガオ(小昼顔、学名Calystegia hederacea)はヒルガオ科ヒルガオ属のつる性植物である。コヒルガオの名は、ヒルガオよりも花が小さいことに由来する[2]。日本の本州四国九州から沖縄まで、東南アジアに広く分布する[11]。草地などでよく見られる[2]

ヒルガオと似ているが、花弁が直径3 - 4 cmとヒルガオより小さいこと、花柄上部に縮れた翼があること[2]の形などの差異がある。葉は三角状で矛形、葉身の基部の左右張り出した裂片は、浅く切れ込んで2つに分裂する[11][3]。地下に横走する地下茎がある[2]。花期は6 - 8月[2]、葉腋から葉柄を出して1個の花をつける[2]。大抵は雑草として扱われるが、八重咲の園芸種が栽培されることもある。

ハマヒルガオ[編集]

ハマヒルガオ(浜昼顔、学名Calystegia soldanella)はヒルガオ科ヒルガオ属。海岸の砂地に群生し、日本全土、および世界に広く分布する。つる性多年草。ハマヒルガオの名は、海岸には得ることに由来する[2]

茎は蔓性となり、地下茎は砂中をはう。葉は長柄があり互生し、緑色のハート型ないし腎臓形で、厚く、光沢がある。5~6月には淡紅色で直径4~5cmのヒルガオに似た花を開く。果実は球形で、種子は黒い。

セイヨウヒルガオ[編集]

セイヨウヒルガオ(西洋昼顔)は、ヒルガオ科セイヨウヒルガオ属の植物。ヒルガオに姿が似た外来種で、苞が花柄の中間あたりにつく[3]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 花が咲く時間帯により、ヒルガオ以外の種では、アサガオ(朝顔)、ユウガオ(夕顔)、ヨルガオ(夜顔)もある[1]。ただしユウガオだけが、かんぴょうで知られるウリ科の植物になる[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 稲垣栄洋 2018, p. 201.
  2. ^ a b c d e f g h 大嶋敏昭監修 2002, p. 354.
  3. ^ a b c d e f g h i 川原勝征 2015, p. 64.
  4. ^ a b c 田中修 2007, p. 102.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 稲垣栄洋 2018, p. 200.
  6. ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 168.
  7. ^ a b c d e f 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 82.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 97.
  9. ^ a b 田中修 2007, p. 101.
  10. ^ 澁谷知子, 浅井元朗, 與語靖洋、「ダイズ作における一年生広葉夏畑雑草のベンタゾン感受性の種間差」 雑草研究 2006年 51巻 3号 p.159-164, doi:10.3719/weed.51.159
  11. ^ a b 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 83.

参考文献[編集]

  • 稲垣栄洋ワイド判 散歩が楽しくなる 雑草手帳』東京書籍、2018年5月22日、200 - 201頁。ISBN 978-4-487-81131-1
  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、354 - 355頁。ISBN 4-415-01906-4
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、168頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 川原勝征『食べる野草と雑草』南方新社、2015年11月10日、64頁。ISBN 978-4-86124-327-1
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、82頁。ISBN 978-4-09-208303-5
  • 田中修『雑草のはなし』中央公論新社〈中公新書〉、2007年3月25日、101 - 102頁。ISBN 978-4-12-101890-8
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、97頁。ISBN 4-416-49618-4

関連項目[編集]