ヒヨケムシ目

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ヒヨケムシ目
生息年代: 323–0 Ma
ペンシルベニア紀現世
Sunspider.jpg
ヒヨケムシの一種(アリゾナ州
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: ヒヨケムシ目 Solifugae
学名
Solifugae
和名
ヒヨケムシ目

ヒヨケムシ目(ヒヨケムシもく、日避虫目、Solifugae)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱に所属する分類群であり、熱帯の乾燥気候の場所に多い。大型種が多く、活発な捕食者である。研究は少なく、生態面にまだ不明点の多い動物である。

形態[編集]

ヒヨケムシの腹面。ll2l3=気門;ge=生殖孔
ヒヨケムシの腹面、第4脚基部に一例の白い扇状突起はラケット器官である。

体長は数㎜から数㎝まで達し、陸生節足動物にしては大型種を含む。多くの種は5㎝辺り、最大のものは脚を含めて12-15㎝となる[1]

巨大な鋏角をもち、全身に毛が生えた動物である。頭胸部前半は大きく膨らみ、後半部は第2-4歩脚に合わせて3節に分かれて落ちむ。腹部は楕円形で柔らかく、体節に分かれ、えさを食べると大きく膨らむ。

頭胸部の前端中央に一対の目があり、視力は発達している。前の端からは、前向きに巨大な鋏角が突き出す。鋏角は頭より大きいほどで、上下に動く爪を備えた鋏になっている、毒腺はない。触肢は歩脚状で発達し、先端には吸盤がある[2]。第一脚は細短く歩行に使わず、感覚器官の役割に立つ。残り三対は歩行用で第四脚は最も発達し、その基部の下面にはラケット器官(malleoli)と呼ばれる小さな扇状の構造が並ぶ。一般のクモ型類と異なり、歩脚に膝節はなく、第三、四脚の転節と腿節は更に2節に分かれる。

呼吸器官は、クモ型類には他に例がないほどよく発達した気管を持つ。頭胸部と腹部の腹側に気門を持ち、気管は全身に貫通し、脚と触肢までにも分布する。ガス交換の動力源である数対の気嚢は鋏角に集約し、このような配置は鋏角の重さを減少し、効率を上がる役割に立つと考えられる[3]

雄、鋏角先端に上向きの突起を持つ。

性的二形として、雌の方が大きく;雄は細身て脚も長く、ラケット器官は雌より発達し、鋏角の上に特殊な突起や鞭状構造を持つ。この構造は交接の役割に立つと思われるが、詳細は不明である。

生態[編集]

乾燥地に多く生息し、地域によっては都市部でも見られる。主に夜行性で、昼行性の種類もいる。活発な捕食者であり、昆虫クモなど小動物を捕食するが、ときには共食いもし、大型種は小型の脊椎動物も食うことがある。素早く走り、木に登ることもある。また、しばしばタランチュラオオツチグモ科)やサソリ類と互いに捕食しあう関係でもある。もっとも偶発的に接触して捕食する場合が多い。 触肢の吸盤で平滑な表面に歩く、獲物を捕まえ[2]、強力な顎によって獲物の外皮や肉を食い千切り、出血多量で弱らせてから捕食する。過程に腹部は伸縮し、鋏角は左右相互に動きながら獲物の体液を口に運ぶ。

刺激を受けると触肢を高く上げ、腹部を立てる動作をする。これは一種の威嚇姿勢と考えられている。それでも相手が諦めない場合は、鋏角で噛み付いて防御する。威嚇行動として鋏角を摩擦して音を出す種も知られる[1]

配偶行動では、雄が雌に触れれば、雌は体を倒し、雄は地表に排出した精包を鋏角を使って雌の生殖孔へ受け渡す。雌は雄よりも体が太っていて力が強く、配偶行動に失敗した雄や、終了後の雄が食べられてしまう事もある。

産卵を迎えると、雌は深く穴を掘って卵を産む、卵の数は種によって50から200までとなる。雌は卵を保護する間に捕食しない為、産卵の前には大量の餌を摂食する。幼生は9-10齢期を通じて成体になる。生命周期はほとんど一年掛かって循環する[4]

分布と分類[編集]

Hexisopodidae科・Chelypus属のヒヨケムシ。
Rhagodidae‎科のヒヨケムシ。

砂漠など乾燥な地方を中心として世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布する。日本には分布しない。

12科153属1000種以上が記載されている。

Ammotrechidae
Ceromidae
Daesiidae
Eremobatidae
Galeodidae
Gylippidae
Hexisopodidae
砂堀り特化の分類群。小型、脚は極端に短く、全身は濃い毛束に包まれる。
Karschiidae
Melanoblossidae
Mummuciidae
Rhagodidae
体型のずんぐりした分類群。黒を基調にした体色、目は小さく、鋏角は大きく、脚は太短く棘は発達する。アリの巣を自発的に襲いかかる行動が知られる。
Solpugidae

人間との係わり[編集]

嚙まれると傷つけるほど大変痛い種もいるが、ヒヨケムシは無毒で人間を自発的に襲う動物ではなく、症状を起こす恐れは無いとされる[5]

その奇妙な姿から、「毒を持つ」「寝ている間に人間に食いつく」など、根拠の無い風評や生態が原産地やネットなどで誇張されて伝えられた。イラクに駐留する米兵の間で恐怖と好奇の対象となる。なかには、基地内でペットとして飼育する兵士もいる。

インド産のRhagodes nigrocinctusという種に関しては、上皮腺に毒があるとの報告がインド人の研究者らによって1978年になされている[6]。それによれば、この種の上皮腺から抽出した毒をトカゲ類に注入したところ、10匹のうち7匹が麻痺したとされる。しかし他のヒヨケムシからはそのような上皮腺は見つかっておらず、この種についての追試も行われていない。またもし上皮腺に毒があるとしても、その毒を彼らがどのように用いるのかも不明である。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b G. Schmidt (1993). Giftige und gefährliche Spinnentiere (in German). Westarp Wissenschaften. ISBN 3-89432-405-8.
  2. ^ a b Holm, Erik; Dippenaar-Schoeman, Ansie (2010). Goggo Guide: The arthropods of southern Africa. Pretoria: LAPA Publishers. ISBN 0799346896.
  3. ^ Morphology of the tracheal system of camel spiders (Chelicerata: Solifugae) based on micro-CT and 3D-reconstruction in exemplar species from three families
  4. ^ Fred Punzo (1998). The Biology of Camel-Spiders. Springer. ISBN 0-7923-8155-6. Retrieved January 25, 2010.
  5. ^ David Penney (2009). “Solifugae (camel spiders)”. Common Spiders and Other Arachnids of The Gambia, West Africa. Siri Scientific Press. p. 71. ISBN 978-0-9558636-3-9. https://books.google.com/books?id=yjVGuc76_RkC&pg=PA71. 
  6. ^ Aruchami, M. & Sundara Rajulu, G. (1978) An investigation on the poison glands and the nature of the venom of Rhagodes nigrocinctus (Solifugae: Arachnida). Nat. Acad. Sci. Letters (India) 1: 191-192.

参考文献[編集]

  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。