ヒュアデス
ヒュアデス(古希: Ὑάδες, Hyades)は、ギリシア神話に登場するニュムペーたちである。キュレーネー山で生まれた5人ないし7人の姉妹。名前は「雨を降らす女」を意味する。ティーターン族の巨人アトラースの娘で、カリュプソー、ディオーネー、マイラ(Maira)、プレイアデス、ヘスペリデスとは異母姉妹の関係にある(プレイアデスとは同母姉妹とも言われる)。ヒアデス星団と同一視される。
神話
[編集]神話によると、ヒュアデスはアトラースとオーケアニスのプレーイオネーとの間に生まれた5人の娘たちで、兄弟であるヒュアースが狩りの最中に命を落としてしまったのを嘆いて自殺したため、天上の星になったという[1]。しかし別の説もあり、オーケアニスのアイトラーとの間に生まれたとも[2][注釈 1][3]、ヒュアースとボイオーティアーとの娘ともいう[3]。
姉妹の名前については諸説ある。ヒュギーヌスによると、彼女たちの名前はパイシュレー、アムブロシアー、コローニス、エウドーラー、ポリュクソーである[1]。アラトスの『星辰譜』の古註に引用されたヘーシオドスの詩は、パイシュレー、コローニス、クレエイア、パイオー、エウドーラーの5人を挙げている[4][注釈 2]。
レーロスのペレキューデースによると、彼女たちはアムブロシアー、エウドーラー、ペディーレー、コローニス、ポリュクソー、ピュートー、テュオーネーの7人姉妹とされており、ゼウスの幼い息子ディオニューソスを養育し、イーノーのもとに連れて行った[5]。しかしアスクレーピアデースの説によれば、彼女たちはアンブロシアーを除いてテーテュースのもとに逃亡したともいう[6]。
アポロドーロスはヒュアデスの系譜や名前について述べていないが、彼女たちはニューサのニュムペーで、ディオニューソスを育てた功績により星に変えられたと述べている[7]。
ヒュアデスのリスト
[編集]ヒュアデスたちは5人とも、7人ともいわれる。ヒュアデスたちの総人数については下表参照[8]。
# | ヒュアデス | 古代ギリシア語 | ラテン語 |
---|---|---|---|
1 | パイシュレー | Φαισυλη | Phaesylē |
2 | アムブロシアー | ἀμβροσία | Ambrosiā |
3 | クレエイア | Κλεεια | Cleeia |
4 | コローニス | Κορωνις | Corōnis |
5 | エウドーレー | Ευδωρη | Eudōrē |
6 | ペディーレー | Πεδιλη | Pedīlē |
7 | パイオー | Φαιω | Phaiō |
8 | ピュートー | Φυτω | Phȳtō |
9 | ポリュクソー | Πολυξω | Polyxō |
10 | テュオーネー | Θυώνη | Thyōnē |
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- 『ソクラテス以前哲学者断片集 第1分冊』「ムゥサイオス」山口義久訳、岩波書店(1996年)
- 『ソクラテス以前哲学者断片集 第1分冊』「ヘシオドス」国方栄二訳、岩波書店(1996年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)