ヒメアノ〜ル

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ヒメアノ〜ル
漫画
作者 古谷実
出版社 講談社
掲載誌 週刊ヤングマガジン
レーベル ヤングマガジンコミックス
発表号 2008年27号 - 2010年12号
発表期間 2008年6月2日 - 2010年2月22日
巻数 全6巻
話数 全65話
テンプレート - ノート

ヒメアノ〜ル』は、古谷実による日本漫画作品。『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて、2008年より2010年まで連載された。単行本は全6巻で発売されている。

主人公の岡田進と安藤勇次の主に恋愛にまつわる話と並行して、森田正一のサイコキラーとしての日々を描いている。

タイトルの『ヒメアノ〜ル』とはヒメトカゲという体長10cmほどの小型爬虫類で、つまり強者の餌となる弱者を意味する。

あらすじ[編集]

岡田進は清掃会社で働きながらも、漫然と過ぎていく時間に不安と孤独を募らせていた。そんな中、岡田は同じ清掃会社で働く、更に冴えない先輩の安藤勇次とひょんなことから仲良くなる。

安藤はコーヒーショップ店員の阿部ユカに恋をする。岡田はそれを制止するも安藤の恋心は止まらなかった。安藤の恋の手助けをする中で、皮肉なことにユカからの告白を受け、岡田とユカは付き合うことになってしまう。多少のトラブルはありつつも岡田たちの日常はぐだぐだと過ぎてゆく。

しかし岡田たちの恋愛劇の裏では凄惨な殺人劇が起きていた。岡田の元同級生で酷いいじめを受けていた森田正一は、突発的で理不尽な殺人を行いながらユカをつけまわすようになる。徐々に岡田たちの日常は森田によって侵食され始める。

登場人物[編集]

岡田 進(おかだ すすむ)
主人公。ビルの清掃会社のパートタイマー。25歳。判で押したような何もない日々と孤独に不安と不満を抱いていた。お人よしだが常識的な人物で、時には男らしい一面も見せる。安藤の紹介で阿部ユカを知り、その後彼女が岡田に告白したことで交際を始める。度々安藤にお願いされたり、訳の分からない話を聞かされたりしている。
安藤 勇次(あんどう ゆうじ)
岡田が勤務している清掃会社で働いている男性。31歳。阿部ユカに惚れている。根性無しでいじけ虫ではあるが、根は純粋な性格で迷走する岡田を説教するしっかりした一面を持つ。
映画版では岡田とユカの居場所を聞き出そうとした森田に股間と背中を撃たれるが、一命は取り留める。
阿部 ユカ(あべ ゆか)
カフェで働いている女性。21歳。かなりの美人で、森田の見立てでは声がとても綺麗。岡田に告白し、付き合い始める。基本的にしっかりした性格だが、天然かつ自虐的な一面も持っている。森田に付け狙われており、終盤で身の危険を感じて岡田と共に横浜へ引っ越すことになるが、警察から書き込みを受ける中で自分のせいで隣人が殺害され、その犯人である森田が待ち伏せしていたショックと恐怖心からパニック状態に陥り意識を失う。映画版では居場所を突き止めた森田に襲撃を受けたものの駆けつけた岡田が決死の覚悟で止めた事により軽傷ですんだ。
森田 正一(もりた しょういち)
もう1人の主人公。岡田の元同級生で、少年時代は自宅に招き入れて親しく遊ぶほどの仲だった。普段は無気力でぼんやりしているが、実態は人の首を絞めて殺すことに性的興奮を感じるサイコキラー。高校時代は河島と高橋に酷いいじめを受けていた。カフェで働いているユカを付け狙っている。
原作では生まれながらのサイコパスであり、本人も中学の時にその事を自覚するのだが、映画版では高校時代に受けたイジメと岡田の裏切りとも言える行為が原因で受けた屈辱的な嫌がらせで性格が変貌した事が示唆されている。最後はいずれも逮捕されて終わるのだが、原作では公園で眠っているところを呆気なく捕まるのに対し、映画版では岡田を人質に取り、強奪した車で警官から逃亡する最中に事故を起こして片脚を失う重傷を負ったところを拘束される結末となっている[注 1]
和草 浩介(わぐさ こうすけ)
岡田の元同級生。高校時代は森田同様に河島と高橋にいじめられていた。地元のホテルでマネージャーを務めているが、森田から恐喝されていた。
河島(かわしま)
岡田の元同級生。頭は悪く、ケンカも弱いが、持ち前の社交術を利用してあらゆる強面の人々に気に入ってもらい、それを利用して森田と和草をいじめていた。
高橋(たかはし)
岡田の元同級生。高校時代は河島と共に森田と和草をいじめていた。名前のみの登場で人物像は明らかにされないが、和草の話によれば、彼は既に結婚しており、子供も持っているようである。
伊藤(いとう)
森田が通っているパチンコ屋の常連。容姿が河島に似ている。自分の愚痴を聞いてほしいという理由で森田に接触する。
藤原(ふじわら)
大地主の妻。森田や伊藤と同様にパチンコに打ち込んでいる。自分の夫を事故に見せかけて殺してほしいと伊藤に依頼する。
飯田 アイ(いいだ あい)
ユカの親友。非常に我儘で遠慮が大嫌いな性格。不美人でキノコのような頭をしており、亀のかばんを背負っている。ユカと共にカフェを開くという夢を持っている。岡田と安藤に大説教し怒らせてしまう。
久美子(くみこ)
和草の彼女で婚約者。和草を恐喝する森田を殺そうと提案する。
家出の少女
夏休みから家出をしている女子高生。本名は不明。父親は事故で死んでおり、母親が再婚するかもしれないという理由で家出をしている事以外は素性が知れないやや謎の多い人物。風俗店に入るかどうか迷っていた安藤に声をかける。
エリナ / 美香(みか)
風俗店で働いている女性。OLでもある。安藤は彼女に一目惚れし、色々と話をするが、訳の分からない話をさんざん聞かされた彼女は呆れて安藤を振ってしまう。トオルに利用されていることには気づいていない。
トオル
エリナの彼氏で紐男。エリナを金を稼いでくれる存在としか思っておらず、エリナ同様の女性が他にも複数いる様子。
山田(やまだ)
岡田が勤務する清掃会社で働いている女性。孤独感に苛まれており、老後のために貯金したり節約したりしている。彼女の周りには様々な噂が流れているが、実際はごく普通のいい人。自分のピュアな性格を変えたいという理由で安藤が嘘の告白をする。
ホームレスの男
2ヵ月前にホームレスになった男性。本名は不明。岡田を殺すのを手伝わせるために森田が話しかける。
織田 涼子(おだ りょうこ)
スポーツジムで働いている女性。24歳。美人だが感情を表に出せない性格。しかし、安藤と知り合ってから徐々に感情を表に出すようになり、ついに安藤に告白し、付き合うに至る。
平松 ジョージ(ひらまつ - )
織田が勤務するスポーツジムに通っている男性。周囲の人間に自分が織田の恋人だと嘘をついて彼女に近づかせないようにしている。後に織田が安藤に告白したことを知った彼は、彼女をかけた勝負を安藤に持ちかける。
安斉 アザミ(あんざい あざみ)
不眠症を患っている女性。豪邸に一人で暮らしており、両親は既に癌で死んでいる。自分と雰囲気が似ているという理由で森田に接触するが、彼に絞殺され庭に埋められる。
高橋 健(たかはし けん)
売れない漫画家。自身を筋金入りの根性なしと自虐的に評しており、頭の悪い人間を極度に嫌っている。変装している森田に興味を持ち、彼の身辺を調査し始める。後に次々と殺人を繰り返す森田を警察に突き出そうとするが、射殺される

富田(とみた)
ユカのアパートの隣の部屋に住んでいる男性。難しい本を多数持っていることから知的な人物のようだが、友人には基本的に暗い人だと思われている。阿部の部屋の前で四六時中張っている森田を通報しようとするが、逆に森田に攻撃されてしまう。

書籍情報[編集]

単行本[編集]

文庫版[編集]

映画[編集]

ヒメアノ〜ル
監督 吉田恵輔
脚本 吉田恵輔
原作 古谷実
製作 由里敬三
藤岡修
藤島ジュリーK.
出演者 森田剛
濱田岳
佐津川愛美
ムロツヨシ
音楽 野村卓史
撮影 志田貴之
編集 鈴木真一
制作会社 ジャンゴフィルム
製作会社 日活
ハピネット
ジェイ・ストーム
配給 日活
公開 日本の旗 2016年5月28日
上映時間 99分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 2億円超[1]
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2016年5月28日に公開された、漫画を原作にした同名タイトルの日本の実写映画作品。R15+指定[2]。監督は吉田恵輔[注 2]、主演はV6森田剛[3]。森田剛にとって初めての映画単独主演作品である。

サイコキラーの森田正一 役に森田剛、同級生の岡田進 役に濱田岳、森田にストーキングされるヒロインを佐津川愛美が演じる。

あらすじ[編集]

「なにも起こらない日々」に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田。同僚の安藤に、想いを寄せるユカとの恋のキューピッド役を頼まれて、ユカが働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一と出会う。ユカから、森田にストーキングされていると知らされた岡田は、高校時代、過酷ないじめを受けていた森田に対して、不穏な気持ちを抱くが・・・。岡田とユカ、そして安藤らの恋や性に悩む平凡な日常。ユカをつけ狙い、次々と殺人を重ねるサイコキラー森田正一の絶望。2つの物語が危険に交錯する―――。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

原作との違い[編集]

  • 監督・吉田によると、原作では森田が抱える痛みが大きなテーマになっているが、映画ではそれをあえて外し、観客に解釈をゆだねた[4]という。
    • この改変について、原作ファンであり、漫画『進撃の巨人』の作者である諌山創はブログで、エンタメ映画として楽しかったが、原作のテーマである「反社会性人格障害者の悲哀」を矮小化している[5]と感想を述べた。
  • 原作では、森田の内面がモノローグで詳細に描かれているが、映画ではほとんど描かれていない。
    • 理由として監督の吉田は、「サイコパスの葛藤」というテーマ[6]は漫画ならモノローグで伝わるが、映画でしゃべり続けるのは厨二病みたいで痛いし[4][7]、2時間という短い時間の映画的な表現ではないこと[4][8]、また殺人鬼側の悲哀や事情を描いても被害者からしてみれば同情できないし殺人犯の擁護になりかねないこと[7][8][9]、を理由に「森田を突き放して、ある程度の距離感をとった[8]」と語る。
  • 原作の森田がシリアルキラーになった理由は、生まれつき"普通じゃない"と彼自身が自覚したことだが、映画では森田の内面がほとんど語られないので理由が明示されない。しかし映画では、きっかけがあって森田が変わってしまったことが示唆されている。
    • 映画では、"普通"の森田が酷いいじめを受けて怪物になってしまったという流れで描いている[7]。吉田によると、生まれつきの殺人鬼は絶対にいないと信じたいから[7]だという。犯罪者は自分たちとは違う人間だと思っている人に、そうではないと言いたい意味合いもある[10]という。
    • 吉田は、人生に絶望して自暴自棄になった人間は逆に欲望に忠実に動くようになるし、その可能性は誰にでもあるという感覚のほうがリアルで怖い[6]。事件を起こすような奴でも、誰かがそいつの手を離さないでいてやったら止められたのではないかと信じて、「そういう映画」にしたつもりだ[9]と語る。
  • 原作とはラストがまったく異なる。
    • 吉田は映画のクライマックスにはエンタテインメントな要素が必要だと語り、森田と岡田が対峙するシーンを作った[8][11]
    • 吉田が最初考えていたのは、ユカと岡田が一緒に暮らし始め、家電を買いに行ったときに、背景のテレビに森田の映像が映っている、というすごく嫌な感じの終わりだったが、吉田の「少し優しい俺」が出てしまってラストシーンを変更した[12]
    • 映画を見た観客が、森田をただの変な奴だと認識して終わらないように、脚本の第2稿から「彼に対して負の感情を持たなかった唯一の味方」を登場させた[10]。これに関してムロは、救いのある終わりで良かった[13]と語った。
    • 最後のシーンはノスタルジーを感じさせる終わりかたにした[4]。森田はこのシーンがすごく好きで、このシーンがあったからこの作品に出演したいと思ったと言っても過言ではない[14]と語った。
  • ラストシーンの変更にともない、岡田だけでなくユカや安藤も森田と直接的に関わるよう改変されている。
  • 映画では岡田と森田が近しい友人になっている。
  • 原作のユカはしっかりしたタイプの女性だが、映画では吉田の好みである、男性の理想の女の子になっている[15]

なお、これらの原作改変について古谷側[16]は、「これはこれで素敵だと思います」と答えたという[7]

製作[編集]

  • 2015年3月24日クランクイン[8]、4月中旬クランクアップ[17]
  • 森田役を演じる主演は原作に合わせて「23-4歳くらいの森田剛みたいな俳優」を探していた[15]が、舞台『鉈切り丸』のDVDを見て森田剛(『ヒメアノ~ル』を撮影した2015年当時36歳)をキャスティングした[18]
  • ストーリーの流れに沿って順撮りしている[4]
  • アバンタイトルが長く、タイトルが出る前(前半)は岡田を中心とする恋愛や友情などの日常をコミカルに、タイトルが出てから(後半)は森田を中心とする殺人などをシリアスに描き、あえて世界観をはっきり変えている[10]
    • 前半は、大きめの芝居をフィックス重視で撮影し、衣装や背景はポップで色味があるものを選んだ[10][11]。音楽そのものがなく、ノイズ処理されている[6]
    • 後半は、リアリティのある芝居を手持ちカメラで撮影し、色調もダークに調整している[10]。音楽は吉田監督が細かく指示を出したため1曲ごとにトーンが異なる[6]
  • R15+でおさまるギリギリを計算して撮影した[19]。R18+指定で客が限定されるのを防ぐためだ[19]という。具体的には、男女の体の重なりかた、凶器が人体に刺さる描写、血の色、などの条件を勘案した[19]
  • とにかく生々しく、リアルに撮ることにこだわった[17]。ありがちなアクションシーンにならないよう生々しく描いた[4][19]

受賞[編集]

関連商品[編集]

  • 映画ヒメアノ〜ル パンフレット(2016年5月28日発売)
  • Blu-ray(豪華版・通常盤)(2016年11月2日発売)
  • DVD(豪華版・通常盤)(2016年11月2日発売)

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ この時、森田の精神は事故のショックで記憶が少年時代に退行した状態となっていた
  2. ^ "𠮷"田恵輔が正しい字だが、環境依存文字であるため"吉の字で表記する。

出典[編集]

  1. ^ キネマ旬報 2017年3月下旬号』p.80
  2. ^ a b 森田剛主演『ヒメアノ〜ル』“異例”のR15指定へ”. ORICON STYLE (2015年10月26日). 2015年10月26日閲覧。
  3. ^ a b c d V6森田剛、映画初主演!古谷実原作『ヒメアノ〜ル』でサイコキラーに挑戦!”. シネマトゥデイ (2015年3月23日). 2015年3月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f "映画「ヒメアノ~ル」 吉田恵輔監督・森田剛・濱田岳インタビュー 「近年まれに見るくらい生々しいのを 作ってやったぞという気持ちがあります」"ぴあ中部版WEB(2016年5月27日)2017年2月8日閲覧。
  5. ^ "映画「ヒメアノ~ル」なんですが"『現在進行中の黒歴史』諌山創のブログ(2016年6月1日)2017年2月8日閲覧。
  6. ^ a b c d "吉田恵輔「俺はジャニーズでこれをやる」[2]" L maga.jp (2016年6月14日)2017年2月14日閲覧。
  7. ^ a b c d e "「ヒメアノ~ル」特集 映画監督・吉田恵輔インタビュー"コミックナタリー(2016年6月7日)2017年2月8日閲覧。
  8. ^ a b c d e 『映画ヒメアノ~ル パンフレット』(2016)p.14
  9. ^ a b "吉田恵輔監督インタビュー 2016年8月"アクターズ・ビジョン~映画監督による俳優のための実践的ワークショップ(2016年8月16日のインタビュー)2017年2月8日閲覧。
  10. ^ a b c d e 『映画ヒメアノ~ル パンフレット』(2016)p.16
  11. ^ a b "吉田恵輔「俺はジャニーズでこれをやる」[1]" L maga.jp (2016年6月14日)2017年2月14日閲覧。
  12. ^ "森田剛、濱田岳、吉田監督による映画『ヒメアノ~ル』舞台挨拶【詳細】レポート"SPICE(2016年6月12日)2017年2月11日閲覧。
  13. ^ 『映画ヒメアノ~ル パンフレット』(2016)p.11
  14. ^ 『映画ヒメアノ~ル パンフレット』(2016)p.7
  15. ^ a b "吉田恵輔「俺はジャニーズでこれをやる」[3]" L maga.jp (2016年6月14日)2017年2月14日閲覧。
  16. ^ 講談社に脚本を送った際の返答。
  17. ^ a b 『映画ヒメアノ~ル パンフレット』(2016)p.15
  18. ^ "【インタビュー】映画『ヒメアノ~ル』吉田恵輔監督が語る、漫画原作と映画化[1]"マイナビニュース(2016年5月23日)2017年2月14日閲覧。
  19. ^ a b c d 佐藤雄二"映画「ヒメアノ~ル」計算尽くのR15映像"朝日新聞デジタル(2016年6月2日)2017年2月11日閲覧。
  20. ^ 「ビデオ屋さん大賞」発表!邦画&洋画トップは『ヒメアノ~ル』『デッドプール』”. @niftyニュース (2017年4月1日). 2017年4月5日閲覧。
  21. ^ "森田剛と吉田恵輔が登壇、「ヒメアノ~ル」イタリアの映画祭でワールドプレミア"映画ナタリー(2016年4月27日)2017年2月8日閲覧。
  22. ^ a b c "映画「ヒメアノ~ル」濱田岳が自身の濡れ場に「誰が得するんだ」と自虐"コミックナタリー(2016年5月28日)2017年2月8日閲覧。

外部リンク[編集]