パレンバンLRT

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パレンバンLRT
シンボルマーク
Bandara駅に停車する電車(2018年撮影)
Bandara駅に停車する電車(2018年撮影)
基本情報
インドネシアの旗 インドネシア
南スマトラ州
所在地 パレンバン
種類 ライトレール[1][2]
駅数 13箇所[2]
開業 2018年8月1日[1]
運営者 インドネシア鉄道会社[3]
車両基地 1箇所[2]
路線諸元
路線距離 23.4 km[1][2]
軌間 1,067 mm[4]
電化区間 直流750 V(第三軌条方式[4][5]
路線図
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パレンバンLRT英語: Palembang LRT)は、インドネシアスマトラ島の都市であるパレンバン市内に存在する鉄道の名称。2018年に開通した、インドネシア初となる小規格の鉄道車両を用いたライトレール(LRT)である。2020年現在はインドネシア鉄道会社によって運営が行われている[1][3]

概要・歴史[編集]

インドネシアスマトラ島の都市であり南スマトラ州の州都でもあるパレンバンでは、長年に渡り都市内の公共交通機関は自動車のみしか存在せず、渋滞が深刻な問題となっていた。これを解決するため、南スマトラ州政府は新たな公共交通としてモノレールの建設計画を進めていたが、輸送力や安全性の面を踏まえ、2015年にレールを用いた小規格の普通鉄道であるライトレール(LRT)へと計画が変更された[6][7]

このライトレール計画は渋滞緩和に加えて2018年に開催されたアジア競技大会への観客輸送を踏まえたものであり、2015年から工事が始まった。当初はアジア大会に先駆けた2018年5月から営業運転を開始する予定であったが、遅延により開業への準備が完了したのは同年6月スルタン・ムハンマド・バダルディン2世国際空港とパレンバン中心部を結ぶ全長23 kmの区間における本格的な営業運転が始まったのは8月1日となった[注釈 1][1][8][9]

開業当初は初日を含めて信号や車両の故障が相次いだ他、工事の遅れなどから同年9月現在で営業運転を実施する駅は7駅のみという事態になったが、翌2019年5月までに駅を含めた工事の全工程が完成し、利用客についても増加傾向を示しており、2020年7月までの利用者数は480万人を記録している。ただし同年度については新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり利用客が大幅に減少している[10][6][2][11][3]

運行[編集]

系統図(2016年撮影)

2020年現在、パレンバンLRTはスルタン・ムハンマド・バダルディン2世国際空港から中心部へ向かい、パレンバンを東西に結ぶ全長23.4 kmの路線を有する。2020年1月時点で全列車とも以下の13箇所に設けられた駅の全てに停車するダイヤが組まれており、所要時間は47分である[1][2][12]

運賃は利用駅によって異なり、空港駅(Bandara)から乗降する際は10,000ルピア、それ以外の駅については5,000ルピアとなっている[3]

駅一覧[編集]

  • 太字の6駅は開通当初から営業運転が行われていた駅[13]
駅番号 駅名 駅間
キロ

(km)
累計
キロ
(km)
接続路線・備考 所在地
日本語 インドネシア語
P01 スルタン・ムハンマド・バダルディン2世国際空港駅 Bandara Sultan Mahmud Badaruddin II - 0.0 スルタン・ムハンマド・バダルディン2世国際空港 パレンバン
P02 アーシュラマ・ハジ駅 Asrama Haji      
P03 プンティカユ駅 Punti Kayu      
P04 RSUD駅 RSUD      
P05 ガルーダ・デンポ駅 Garuda Dempo      
P06 デマン駅 Demang      
P07 ブミスリウィジャヤ駅 Bumi Sriwijaya      
P08 ディスホブ駅 Dishub      
P09 シンデ駅 Cinde      
P10 アンペラ駅 Ampera      
P11 ポルレスタ駅 Polresta      
P12 ジャカバリング駅 Jakabaring      
P13 DJKA駅(鉄道総局駅) DJKA   23.4   Banyuasin

車両[編集]

パレンバンLRT用車両(2018年撮影)

パレンバンLRTで使用されている車両は、インドネシア国内の鉄道車両メーカーであるインダストリ・クレタ・アピが製造した3両編成の電車である。編成は主電動機および運転室を搭載した電動制御車(Mc)とこれらの機器を持たない中間付随車(T)で構成され、軽量化のためステンレス鋼製の構体アルミニウム製の車体が用いられる。また猛暑対策のために冷房に加えて直射日光や紫外線を抑制する安全ガラスが側面窓に用いられる。詳細な諸元は以下の通りである[4][14]

パレンバンLRT用車両 主要諸元
車両数 軌間 編成
24両 1,067mm 3両編成 Mc + T + Mc
全長 編成長 全幅 全高 床上高さ 編成重量 軸重
18,000mm 51,800mm 2,650mm 3,850mm 1,025mm 88t 12t
最高速度 着席定員 立席定員 編成定員
営業 設計 Mc T Mc T
85km/h 100km/h 40人 48人 81人 89人 379人

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 本格的な開業に先立ち、7月23日から7月31日にかけてパレンバン市民向けの試験的な営業運転が実施された。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f Lenny Tristia Tambin, Heru Andriyanto (2018年8月1日). “Palembang LRT Begins Operations, Jakarta to Follow Next Week”. Jakarta Globe. 2020年12月29日閲覧。
  2. ^ a b c d e f Delivering Indonesia’s first Light Rail Transit system”. SMEC (2019年8月17日). 2020年12月29日閲覧。
  3. ^ a b c d Dinda Wulandari (2020年7月23日). “2 Tahun Beroperasi LRT Sumsel Angkut 4,8 Juta Penumpang”. Ekonomi. 2020年12月29日閲覧。
  4. ^ a b c 55% Komponen LRT Palembang yang Diproduksi INKA Masih Impor”. KumparanBISNIS (2018年4月11日). 2020年12月29日閲覧。
  5. ^ Ini Perbedaan LRT di Palembang dan Jakarta”. Kompas.com (2018年4月12日). 2020年12月29日閲覧。
  6. ^ a b 武内彩 (2018年10月). “トラブル続く次世代型電車 ジャカルタ”. 毎日アジアビジネス研究所. 2020年12月29日閲覧。
  7. ^ Proyek Monorel Bandara-Jakabaring Batal, Pemprov Sumsel Pilih LRT”. Industri (2015年3月9日). 2018年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  8. ^ Tri Multi (2018年2月14日). “Palembang LRT to Be Ready in July; Initial Fare Set at Rp 5,000”. Jakarta Globe. 2020年12月29日閲覧。
  9. ^ Anton Hermansyah (2017年10月24日). “Palembang LRT to begin commercial service in May 2018”. The Jakarta Post. 2020年12月29日閲覧。
  10. ^ Achmad Dwi Afriyadi (2018年8月13日). “LRT Palembang Berkali-kali Mogok”. detikfinance. 2020年12月29日閲覧。
  11. ^ Muhammad Choirul Anwar (2020年10月3日). “Tak Diduga LRT Palembang 'Mati' Dilibas Ojol & Taksi Online”. CNBC Indonesia. 2020年12月29日閲覧。
  12. ^ Jadwal LRT Palembang 2020, Jangan Sampai Ketinggalan!”. Kitogalo (2020年1月6日). 2020年12月29日閲覧。
  13. ^ Raja Adil Siregar (2018年7月23日). “LRT Palembang Mulai Beroperasi Hari Ini”. detikFinance. 2020年12月29日閲覧。
  14. ^ Light Rail Transit”. PT INKA. 2020年12月29日閲覧。