パション

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パション』(英語: Pasyon, スペイン語: Pasión)は、フィリピンで作られて詠唱される長編のキリスト受難詩[1][2]イエス・キリスト受難の生涯を中心に描く[1]。フィリピンでは18世紀から四旬節[3]にパションが詠唱されるようになり、フィリピンのキリスト教英語版の特徴の一つとなっている[1]

歴史[編集]

16世紀から始まるスペインによる植民地化の過程で、フィリンピンにおける伝統的な文字で書かれたものは、主にフィリピンに布教に来たカトリック教会によって「悪魔の文字」とされて、すべて消滅させられた[4][5]。フィリピンの伝統的な文学は叙事詩や伝説や歌など主に口承文学だったが、カトリック教会はそれらをキリスト受難物語に置き換えようとした[5]。18世紀になり、現地の詩人アキノ・デ・ベレン英語版タガログ語で書いた長編詩『我が主イエス・キリストの受難』 (Mahal Na Pasion ni Jesu Christo) が1704年に出版された[5]

その後19世紀になり1814年に神父ピラピル (Mariano Pilapil) によって編集された「ピラピル版パション」が現代でも詠唱されている[1]

詠唱[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 池端雪浦「パション」『改訂新版 世界大百科事典平凡社、第6刷、2014年。
  2. ^ 寺田勇文「フィリンピンのキリスト教」『岩波キリスト教辞典岩波書店、2002年、950頁。
  3. ^ キリスト教で1年の内もっとも重要な行事である復活祭(イースター)の前の期間。
  4. ^ 鈴木静夫『物語 フィリピンの歴史』中公新書中央公論新社、1997年、4頁。
  5. ^ a b c Francis C. Macansantos, Priscilla S. Macansantos "Literature in the Spanish Colonial Period" National Commission for Culture and the Arts. 2022年10月12日閲覧。

外部リンク[編集]