パイロットウイングス
ジャンル |
スカイスポーツ・シミュレーション フライトシミュレーション |
---|---|
対応機種 | スーパーファミコン |
開発元 | 任天堂情報開発本部 |
発売元 | 任天堂 |
プロデューサー | 宮本茂 |
ディレクター | 杉山直 |
プログラマー |
加藤周平 矢嶋肇 河越巧 |
音楽 |
近藤浩治 岡素世 |
美術 |
スージー 森直樹 |
シリーズ | パイロットウイングスシリーズ |
人数 | 1人 |
メディア |
4メガビットロムカセット[1] DSP-1チップ搭載 |
発売日 |
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対象年齢 |
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コンテンツ アイコン |
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売上本数 |
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その他 |
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『パイロットウイングス』は、任天堂より発売されたスカイスポーツ・シミュレーションゲームである。
概要[編集]
スーパーファミコンの回転・拡大・縮小機能(Mode 7)を活用した擬似3D表現のスカイスポーツ・シミュレーションゲーム。プロデューサーは宮本茂。スーパーファミコン本体発売の1ヶ月後にリリースされ、ローンチタイトルである『スーパーマリオワールド』(1990年)、『F-ZERO』(1990年)に続く任天堂の3作目の作品である。
プレイヤーは「フライトクラブ」という一見平和的なスカイスポーツスクールを装ったフライトスペシャリスト養成所に入会し、軽飛行機(ライトプレーン)、スカイダイビング、ロケットベルト、ハンググライダーの四種を、与えられた課題をこなしていきながら上達を図っていく。4つのエリアが用意されており、これをフライトエリアと呼ぶ。こなすべき種目、課題はフライトエリア毎に異なる。評価は100点満点だが、いくつかの種目では100+αの点が得られるボーナスチャンスが存在する。
各種目の合計点がフライトエリアごとの規定の点数に達すれば、すべての種目をこなさなくてもライセンスが貰え、次のフライトエリアに進むことができる。
4つのフライトエリアを修了すると、なぜか突然教えを請うた教官達が麻薬のシンジケートに囚われるという「事件」が発生し、問答無用でミサイル搭載の攻撃ヘリコプターでアジトに突入し、多くの飛び交う対空砲火をよけながら特定のヘリポートに着陸するという極秘指令が与えられる。一発被弾したら即座にゲームオーバーという非常にシビアなミッションとなっている。
このミッションをクリアするとタイトル画面が変わり、夕暮れ時の街を見下ろしたような画面になる。また難易度がさらに上がったEXPERTモードになり、同じフライトエリア、同じ教官で降雪、降雨、強風、夜間にアレンジされる。最後は再びヘリコプターのミッションを拝命し、前回を遥かに上回る苛烈な対空砲火を潜り抜け、前回と同様に目的地であるヘリポートへの着陸を目指す。
本作品の説明書は「フライトクラブへの案内状」という体裁ではあるが、このフライトクラブは戦闘ヘリを所有し某国との軍事的な繋がりを感じさせるなど、まるで傭兵養成機関のようなニュアンスを匂わせる演出が施されている。
ニンテンドーゲームキューブ版の発売も、『週刊ファミ通』の発売日未定欄にしばらく記載されるなど、検討されていた。
機械競技は全て燃料設定があり、燃料切れは全てゲームオーバーとなる。
採点対象は所要時間や精度や角度や、リングやビームの通過や接触の有無など多岐にわたる。
ゲーム内容[編集]
種目と課題[編集]
- 軽飛行機(ライトプレーン)
- 赤色の複葉機。EXPERTでは青色になる。表現上の制約によりバンク角やピッチ角が制限されているため宙返りなどのアクロバチックな飛行は出来ず、旅客機並みのかなり鈍重な挙動となっている。初心者でも容易に操縦出来るよう操作は簡略化されラダーやトリムなどの操作はないものの、揚力や慣性、失速や風見効果など飛行機の特性をある程度考慮しており、当時のコンシューマー機用ゲームとしては本格的なものとなっている。
- 空中に設置されたガイドビームにタッチしながら着陸、または所定のリングをくぐって滑走路へ着陸し、滞空時間と着陸時の進入角度、精度を競う。
- ボーナスチャンスは存在しない。
- フライトクラブの必修科目となっており全フライトエリアで登場する。空中からスタートするフライトエリアと滑走路から離陸も行うフライトエリアがある。
- スカイダイビング
- ヘリで高度3800フィートまで上昇、縄ばしごから「とうっ!」の掛け声とともにダイブする。落下中は体の傾きにより落下速度と進行方向を制御でき、高度1000フィート以下になるとパラシュートの展開が可能になる。パラシュートは左右の旋回とフレアが行える操作性の高いラム・エア型で、前方へ滑空しながら降下する。なお、ゲームの進行上必ずしもパラシュートを開く必要はないが、開かないとまともな得点を取ることができず、地面に激突すると教官の厳しいコメントが出る。
- 落下中は空中に設置された複数のリングを出来るだけ多く通過し、パラシュート展開後は地上ターゲットへの着地の精度を競う(アキュレシーランディング)。
- 水上を移動するターゲットに着地するとボーナスチャンス。
- フライトエリア1、2、4、5、6、8で登場。フライトエリア1、2、4ではプレイヤーが銀のウェアを着用、パラシュートの色が赤と黄の縦縞であるが、5、6、8では赤のウェア、青と緑の縦縞に入れ替わる。
- ロケットベルト
- 背中に背負ったブースターを使って空中飛行を行う。慣性の影響を強く受ける。LボタンやRボタンで視点の切替が可能。フライトエリアの随所にあるドーム状の物体に乗るとバウンドし跳ね上がることが出来るがゲームの進行に関わりがない。
- リングを潜ったりビームに接触する課題が与えられ、全てクリアした後に地上ターゲットへ着地しその精度を競う。課題クリア前に着地してしまうと減点になる。なお、EXPERTではターゲットに着地する際、視点を切り替えていないと着地しても得点が下がってしまう。
- 水上を移動するターゲットに着地するとボーナスチャンス、減点もなくなる。
- AボタンとBボタンで出力と炎の色が異なり、Aボタンが出力大で青色い炎で高速移動用でBボタンが出力小で赤い炎で微調整用である。
- フライトエリア2、3、4、6、7、8で登場。フライトエリア2、3、4ではプレイヤーが赤のヘルメットと黄色のウェアを着用しているが、6、7、8では銀のヘルメットと緑のウェアに入れ替わる。
- ハンググライダー
- ライトプレーンに牽引され空中からスタート。マップ上に上昇気流が発生しているポイントがあり、それに乗ると高度を急上昇させることができる。ハング用の地上ターゲットはスカイダイビングやロケットベルトとは別に設置されている。
- 規定の高度に達するか所定のリングを2回潜った後、地上ターゲットへの着地精度を競う。
- スカイダイビング・ロケットベルト用のターゲットに着地するとボーナスチャンス。
- フライトエリア3、4、7、8で登場。フライトエリア3、4ではプレイヤーのウェアが黄色、翼の色が赤であるが、7、8では赤のウェア、翼の色が黄色に入れ替わる。
- ボーナスチャンス
- スカイダイビングでは、ペンギンの着ぐるみを纏ったプレイヤーが高さ1000フィートの飛び込み台からプールへ飛び込む。着水した場所により取得できるポイントが異なる。
- ロケットベルトでは、カモメらしきデザインの翼を装着したプレイヤーが、トランポリンで大ジャンプしながら地上のポイントターゲット(Pマーク)を踏んだ後、プールへ飛び込む。ポイントターゲット、プールそれぞれでポイントが加算される。LボタンかRボタンで視点も切り替えられる。
- ハンググライダーでは、ニワトリのようなものに扮したプレイヤーがAボタン連打で激しく羽ばたきながら飛距離を競う。長距離を飛ぶほど取得できるポイントが高い。
- ヘリコプター
- 2回ある極秘指令で搭乗する攻撃ヘリコプターでミサイル(弾数無限)とサーチライトを装備。敵地上砲台に打ち落とされたらゲームオーバー。敵砲台は発砲時のプレイヤーの進行方向と速度から正確な射撃をしてくるので、発砲されたら即座に進路を変更しなければならない。
- 照準点に敵砲台が来た段階で警報音が鳴るようになっている。木の影に隠れて見えない砲台も照準の音を目当てに砲撃で撃破できる。
- 敵は3連弾の地対空砲撃をしてきて、味方はL(左)とR(右)のそれぞれのミサイルを発射できる。
- 夜間の飛行ではXボタンを押し続けるとサーチライトが明るくなる(ゲームの進行に影響はない)。
フライトエリア等[編集]
フライトエリア5以降はEXPERTモード。合格までの合計点も20点ずつ上がる。
- フライトエリア1
- メサやビュートの立ち並ぶ砂漠地帯に作られた練習用フライトエリア。広大な滑走路を1本備える。種目はライトプレーンとスカイダイビング。
- フライトエリア2
- 草原地帯に作られたフライトエリア。種目にロケットベルトが追加。滑走路が左右平行に2本併設されている。右側の方が短くて狭い分ポイントが高く設定されている。
- フライトエリア3
- 2本の交わった滑走路を持つ、洋上の孤島に作られたフライトエリア。スカイダイビングに代わりハンググライダーの技量が試される。ロケットベルト用ターゲットが海上に設置。
- フライトエリア4
- 幾何学的な形状の人工島に建設されたフライトエリア。4つの種目が全て登場する。ライトプレーン時は滑走路にガイドビームが付くが、フライトエリア1と違い触れても得点にはならない。
- イラフ島1(極秘指令1)
- 軍も手を焼くほどの強大な麻薬シンジケートがアジトを構える要塞のような島。砲身のない未知の軍事技術で作られた地対空兵器が島内のいたる所に設置されプレイヤーのヘリを迎撃する。
- フライトエリア5
- フライトエリア1の発展型。積雪のため見渡す限りの雪景色となっている。滑走路にも残雪があり、これに一定速度以上の飛行機が乗ると失敗となる。ターゲットもリングも小さくなっている。
- フライトエリア6
- フライトエリア2の発展型。雨雲が低く垂れ込め、雨天後で滑走路が濡れているため飛行機の停止に必要な制動距離が伸びる。
- フライトエリア7
- フライトエリア3の発展型。夕闇の迫る上空は強風が吹いておりかなり風に流される。
- フライトエリア8
- フライトエリア4の発展型。強風に加え視界不良の夜間でのシチュエーションとあって最終試験にふさわしい高難易度となっている。ターゲット、滑走路等は光っているので見落とすことはない。
- イラフ島2(極秘指令2)
- イラフ島1の発展型。視界不良の夜間でのシチュエーションとなっている。イラフ島1よりも数多く設置された地対空兵器がプレイヤーのヘリを迎撃する。
登場人物[編集]
- 田中文也
- フライトエリア1と5を担当。28歳。人当たりの良い穏やかな青年だが、失敗時には「わざとやってませんか」などの辛辣なコメントを吐くこともある。100点を取ると目を見開いて驚愕する。
- 白石蘭
- フライトエリア2と6を担当。24歳。フライトクラブの紅一点。100点を取ると目が点になる。
- 続編の『パイロットウイングス64』には未登場だが、取扱説明書のQ&Aに彼女についての質問がある。
- インディ・スコット
- フライトエリア3と7を担当。31歳。ややカタコトの日本語を喋る金髪の白人男性。元空軍のパイロットという噂。100点を取ると目を回す。
- 黒田藤兵衛
- フライトエリア4と8、極秘指令(EXPERT含む)を担当。49歳。滅多なことでは笑顔を見せない鬼教官だが、100点を取ると涙を流す熱い男。単車の免許しか持っておらず、ヘリを操縦できないと主張している。EXPERTの極秘指令で、政府の要人である兄が麻薬のシンジケートに関わっているとして、人質にされている事を伝える。
- 後に『大乱闘スマッシュブラザーズX』でシールとして登場。
他機種版[編集]
No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 売上本数 |
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1 | パイロットウイングス バーチャルコンソール | ![]() ![]() ![]() | Wii | 任天堂情報開発本部 | 任天堂 | ダウンロード | - | - |
2 | パイロットウイングス バーチャルコンソール | ![]() | Wii U | 任天堂情報開発本部 | 任天堂 | ダウンロード | - | - |
3 | パイロットウイングス バーチャルコンソール | ![]() | Newニンテンドー3DS | 任天堂情報開発本部 | 任天堂 | ダウンロード | - | - |
開発[編集]
スーパーファミコン発売の2年前である1988年11月21日、『ドラゴンフライ』の仮称でマスコミ向けに任天堂社内でビデオ上映され、のちに『フライトクラブ』と改題されたサンプルゲームが原型であり、本作が同機の新機能をアピールするのに誂え向きのデモンストレーション的性質が色濃いのはこのためである。開発初期の段階では地面を見下ろす俯角のアングルのみで、見下ろし型シューティングゲームに近いものだった。
最終的な製品ではロムカートリッジ内にDSP-1という拡張チップを搭載することで、スーパーファミコン本体が持つ能力以上の映像技術をスムーズに動作させることを実現している。ただし初期ロットは拡張チップ非搭載。滑走路やターゲット、建築物など地表オブジェクトが配置された地面は起伏のない完全な平面であるが、回転・拡大・縮小機能によってダイナミックに動くパースペクティブで描かれ、半透明のグラデーションを重ねた擬似的なフォグで空気遠近法による距離感も表現している。ガイドビームやリング、上昇気流など高低差のあるオブジェクトは3次元の座標を持ったスプライトオブジェクトによって表現。さらに地平線や雲などが描かれた遠景を消失点と連動させるなど、画面内の要素を基礎的な遠近法に基づいて描画することにより当時のコンシューマー機用ゲームとしては他に類を見ない正確なパースペクティブと説得力のあるリアルな空間表現を実現した。DSP-1は、他にも『スーパーマリオカート』(1992年)などに使われている。
スタッフ[編集]
- エグゼクティブ・プロデューサー:山内溥
- プロデューサー:宮本茂
- ディレクター:杉山直
- プログラマー:加藤周平、矢嶋肇、河越巧
- グラフィック・デザイナー:スージー、森直樹
- サウンド・コンポーザー:近藤浩治、岡素世
評価[編集]
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ゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」では合計30点(満40点)でシルバー殿堂入りを獲得[4]、『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、21.51点(満30点)となっている[1]。この得点はスーパーファミコン全ソフトの中で103位(323本中、1993年時点)となっている[1]。また、『SUPER FAMICOM Magazine』1993年8月情報号特別付録の「スーパーファミコンオールカタログ'93」巻末に収録されている「部門別ベスト30」では、オリジナリティ20位を獲得している[14]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | 操作性 | 熱中度 | お買得度 | オリジナリティ | 総合 |
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得点 | 3.49 | 3.47 | 3.46 | 3.64 | 3.42 | 4.03 | 21.51 |
ゲーム内容は地味ながらも好評であったが、人気シリーズである『スーパーマリオワールド』や、派手な『F-ZERO』の陰に隠れてしまい、売上げは任天堂の予想を下回った。なお、任天堂はこのゲームの発売後に販売のテコ入れのため「飛ばず嫌いになっていませんか?」という広告をゲーム雑誌に掲載した。
脚注[編集]
- ^ a b c d 「8月情報号特別付録 スーパーファミコンオールカタログ'93」、『SUPER FAMICOM Magazine』、徳間書店、1993年8月1日、 71頁。
- ^ a b c “Pilotwings for SNES (1990) - Moby Games” (英語). Blue Flame Labs. 2017年9月16日閲覧。
- ^ “Reviews: Pilotwings”. Electronic Gaming Monthly (Sendai Publishing Group, Inc.) (1992 Video Game Buyer's Guide): 55.
- ^ a b “パイロットウイングス まとめ [スーパーファミコン]/ ファミ通.com” (日本語). KADOKAWA CORPORATION. 2015年4月12日閲覧。
- ^ “Pilotwings”. Game Informer (GameStop) (169). (May 2007).
- ^ “Pro Reviews: Pilotwings”. GamePro (IDG Communications) (30). (January 1992).
- ^ Thomas, Lucas M. (2010年2月3日). “Pilotwings Review”. IGN. 2011年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月18日閲覧。
- ^ “Pilotwings for Wii (2009) - Moby Games” (英語). Blue Flame Labs. 2017年9月16日閲覧。
- ^ “Now Playing: Pilotwings”, Nintendo Power (Nintendo of America) (31): 87, (December 1991)
- ^ Scullion, Chris (2009年8月21日). “Virtual Console Review: Pilotwings”. Official Nintendo Magazine. 2009年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年11月21日閲覧。
- ^ “Reviews: Pilotwings”. Mean Machines (EMAP) (8): 88. (May 1991). オリジナルの2010-07-15時点によるアーカイブ。 2009年11月23日閲覧。.
- ^ “UK Review: Pilotwings”. Super Play (Future Publishing) (1): 72. (November 1992).
- ^ “Reviews: Pilotwings”. Total! (Future Publishing) (8). (November 1992).
- ^ a b 「8月情報号特別付録 スーパーファミコンオールカタログ'93」、『SUPER FAMICOM Magazine』、徳間書店、1993年8月1日、 104 - 107頁。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 任天堂 - パイロットウイングス(スーパーファミコン)
- パイロットウイングス - Wiiバーチャルコンソール
- パイロットウイングス - Wii Uバーチャルコンソール
- パイロットウイングス - New3DSバーチャルコンソール
- Pilotwings - MobyGames(英語)
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