バードストライク

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鳥の衝突によって破損したAMXのキャノピー
衝突により破壊されたコクピット
破損した航空機

バードストライク英語: bird strike)とは、が人工構造物に衝突する事故をいう。主に航空機と鳥が衝突する事例を指すことが多い。この他、鉄道自動車といった他の乗り物、風力発電風力原動機送電線送電鉄塔ビル灯台などにおいても起きている。高速移動中の人工構造物への衝突の場合は小鳥程度の大きさであっても非常に衝撃が大きく、大きな事故へと発展する可能性がある。

航空機[編集]

大群が飛び交う空港
音で鳥対策をする車両(コペンハーゲン国際空港
アメリカ空軍のバードパトロール

航空機におけるバードストライクは離陸動作中(滑走、離陸直後)もしくは着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こりやすい。

飛行機ではジェットエンジンが主流の現在はエアインテーク(空気吸入口)に吸い込まれる事故が多く、特に旅客機のジェットエンジンはエアインテークの直径と推力が大きくかつ地面に近いこともあるため、バードストライクが起こりやすい。例えば、ボーイング777のエンジンGE90型に到ってはファンの直径が3 m以上もある。

ヘリコプターではローターに巻き込まれる事故が多い。飛行中に衝突することもあり、小型の鳥類であっても高速で飛行する航空機にとって衝突時の衝撃は大きなものとなり、最悪の場合は墜落に至るケースもある。民間用旅客機については離着陸時のバードストライクによる墜落を防ぐため、装備するジェットエンジン開発の際に体重4ポンド(1.8kg)の生きた鳥を吸い込ませるテストを行い、吸い込んだ後でも基準を上回る推力が保てることを実証することがほぼ必須となっている[要出典]

旅客機のウィンドシールド(風防、コクピット前面ののこと)が多層構造になっているのも、バードストライクが理由の1つである。たとえばボーイング747のウィンドシールドは5層構造であるが、これはガラス層の間にビニール層が挟まれている「合わせガラス」となっており、衝突時の衝撃を吸収できるようになっている。

また、ターボファンエンジンのファンブレードに最近では複合材料が使用される例が増えているが、複合材料は金属材料に比べて耐衝撃性に劣るため、重量が増するにも関わらず前縁部をチタンで覆う設計が多い。かつてロールス・ロイス・ホールディングスRB211エンジンの開発時に当初、複合材製ファンブレード(商品名ハイフィル)を採用したもののバードストライク試験を通過できず改良のための費用がかさんだことで資金繰りが悪化、倒産して国営化された例もある。この教訓を踏まえ後に開発されたトレントではチタン製の中空ファンブレードを採用した。

空港では対策係の『バードパトロール』が車で巡回し、散弾銃の空砲や爆竹の音により追い払っている。近年では車にスピーカーを搭載し、銃声や鳥の苦しむ鳴き声(ディストレスコール)を流すこともある。この他に訓練された犬を使い、航空機とは正反対の方向に鳥を追い立てるといった予防策も行われている。

日本の状況[編集]

日本国内における航空機のバードストライクは、2006年に1233件の報告があった。例えば東京国際空港(羽田空港)では118件、神戸空港では94件などである。そして羽田は国際化やLCCの導入などにより2014年には約200件に増えた。

これらによるエンジンの損傷や事故機が空港への引き返すことで発生した損失は、毎年国内だけで数億円程度あるといわれる。事故予防のため航空会社空港はさまざまな対策を講じている[1]が、確実な有効策がないのが現状である。

例えば全日本空輸では1985年からエンジンに目玉マークを書いて鳥が近寄るのを防ごうと試みたことがあるが、効果が上がらなかったために中止された。高知空港高松空港松山空港ではハヤブサを放して空港周辺から鳥を追い払う試験が行われたことがあるが、これも効果が上がらなかったために実用化には至っていない。

日本では実銃は免許の取得が難しいため、手軽な遊戯銃紙火薬を用いたり、録音した銃声で追い払うことも多い。

NECではバードストライクの危険性を軽減するための装置群「鳥位置検出ソリューション」を開発しており、東京国際空港で採用されている[2]

航空機以外の乗り物[編集]

鉄道[編集]

高速列車に衝突した痕跡

新幹線などの高速鉄道にて起きるケースが多い。特に新幹線においてはかなりのバードストライクが発生している模様で、フロントガラスに当たらなければ走行に大きな支障は無いため報告は少ない。また、在来線でも発生することがある。2014年3月28日東日本旅客鉄道(JR東日本)武蔵野線東川口 - 南越谷間を走行中の東所沢西船橋行き下り列車のフロントガラスにカラスが衝突し、フロントガラスが破損した[3]

自動車[編集]

レース中にハゲタカが衝突したスポーツカー

自動車のバードストライクは道路上に横たわるタヌキなどの死骸に集まるカラス、トビなどにより引き起こされる。大形の鳥であるために動きが遅く、車との接触事故を起こす。また、小形のスズメなども起こすことがある。

上体をむき出しののまま乗車するフォーミュラカーオートバイでは重大事故に直結する場合があり、F1ではアラン・ステイシーが顔面に鳥が衝突したことにより事故死している。

建造物[編集]

民家の窓に鳥が衝突した痕跡

灯台[編集]

灯台のバードストライクは、主に渡り鳥により引き起こされる。灯台の明かりを太陽と勘違いし、ぶつかるのではといわれている[要出典]

ビル[編集]

ビルへのバードストライクは、窓ガラスハトカラスなどが衝突することによって起きる。全体がのようになっているビルが増加したことで、ビルに写った背景が本物のと区別が付きにくくなった。これにより鳥がビルの存在に気付かず衝突したり、反射する太陽に反応して衝突する事故が増えている。

風力発電施設[編集]

風力発電施設のバードストライクは、国内ではトビオジロワシやその他の猛禽類、カモメ類、カモ類、カラス類などで衝突死が報告されている。風力発電の先進国であるデンマークオランダイギリスアメリカなどから、より長期にわたる詳細かつ定量的な調査報告がなされている。

猛禽類渡り鳥の衝突事故が懸念されている。また、施設が希少種の生息域やその近くとなることも心配されている。クリーンなエネルギー源として風力発電施設の設置が推進されている一方、風力発電事業は環境影響評価法の対象からはずれており、環境影響評価に関するガイドラインもいまだ整備されていない。

このような現状に対して野鳥保護の観点から、日本野鳥の会環境省に対して意見・要望を表明している。その概略は野鳥への影響がありそうな立地を避けること、風力発電の野鳥の生態に対する影響を調査研究すること、さらに事前の環境影響評価と事後の調査を事業者に義務つけることなどである。特に国立公園国定公園内の設置には、慎重な姿勢を表明している。

移動性野生動物種の保全に関する条約(通称:ボン条約)の第7回締結国会議で風力発電建設に関する決議が採択され、特に大規模海上風力発電の渡り鳥海鳥に対する影響に考慮することを求めている(⇒風力発電#鳥への影響)。

脚注[編集]

  1. ^ 羽田空港で「いやがるカモ」作戦 冬鳥対策あの手この手 - 朝日新聞 2012年12月9日(インターネットアーカイブ2013年11月12日分キャッシュ)
  2. ^ 「羽田空港でバードストライク低減に向けて適用中」、NECが鳥位置検出支援装置を発売 - Tech-on! 2012年10月15日
  3. ^ カラスと衝突しガラスひび、緊急停止 JR武蔵野線スポーツニッポン2014年3月28日8時14分配信

関連項目[編集]

登場作品[編集]

バードストライクが取り扱われた、もしくは劇中にて登場する映画も存在する。

外部リンク[編集]