バリトン (弦楽器)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
Aagrovebaryton.jpg
バリトン

バリトン: Baryton: Viola di bordone: Viola di bardone)は、ヴィオール属に属する擦弦楽器であり、オーストリア・南ドイツ・東欧の一部で18世紀末まで用いられた。

概要[編集]

チェロと似た大きさで、7本、あるいは6本のガット弦 Catgut が張られ、9本から24本の共鳴弦 Sympathetic string (主に12本)が張られている。

太ももで挟むように支え、チェロのように右手に持ったでガット弦を弾き、左手の指で弦を押さえつつ親指で裏に張られた共鳴弦をはじく。このように、演奏するのが非常に難しく、また調律も難しいので廃れてしまった。今日では演奏される機会は稀である。

ヴュルテンベルク公国のクリスティアン・ウルリヒ公(1704没)に、ヨハン・ゲオルク・クラウゼ Johann Georg Krause の楽曲 "9 partien auf die Viola Paradon" が捧げられたというのが、バリトンに関する最古の記述とされている[1]

バリトンの曲目として最もよく知られているのは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが、彼のパトロンでありこの楽器を嗜んだエステルハージ侯爵の為に書いた175曲である。これらのうち126曲は、ヴィオラ、チェロ、バリトンの三重奏である。これらの曲は1766年から1775年にわたって書かれた[2]。 エステルハージ侯が愛用していたバリトンは、バスのヴィオラ・ダ・ガンバ(バリトンのガット弦の音色と似ている)のように調律されていた(AA, D, G, c, e, a, d)。

クラシック音楽界での古楽の復興運動によりバリトンは復元・演奏されるようになり、レコーディングされたものも聴くことができる。

最初にヴィオラ・ダ・ガンバもしくはバリトンの復興に関心を寄せたのは、おそらく、ミュンヘンのクリスチャン・デーベライナー ドイツ語版 Christian Döbereiner である。1934年、彼はミュンヘンの著名な弦楽器商フェルディナント・ヴィルヘルム・ジャウラ Ferdinand Wilhelm Jaura に、サイモン・ショルダー Simon Schodler のバリトン(1782)の模造品の制作を依頼した。近代最初のバリトン演奏会は1936年にミュンヘンで開催され、ハイドンの三重奏が主な演目であった。この楽器は、ヴァスケス史的弦楽器コレクション the Vazquez Collection of Historical String Instruments の一部を成し、オルフェオン財団 the Orpheon Foundation による演奏会で頻繁に用いられる。ジャウラのバリトンの完全なドキュメンテーションが、オルフェオン財団のウェブサイトで利用できる。

2009年、アイゼンシュタットにあるエステルハージ宮殿(en)にて、エステルハージ・アンサンブル(バリトン:Michael Brüssing)が、ハイドン作曲によるバリトン曲全曲録音を成し遂げた。

スイスの作曲家クラウス・フーバーが、"À l'âme de marcher sur ses pieds de soie"(2004)の中で目立つバリトンのソロを書いている。

現代のバリトン演奏者[編集]

  • Jeremy Brooker
  • Kazimierz Gruszczyński
  • José Manuel Hernández
  • John Hsu
  • Roland Hutchinson
  • Philippe Pierlot
  • José Vázquez
  • Michael Brüssing

脚注[編集]

  1. ^ 岸辺成雄『音楽大辞典』1924-1925頁
  2. ^ Hsu, cited below

参考文献[編集]

  • Much of the information above is taken by program notes written by barytonist (and Cornell University professor) John Hsu for his performance of trios #97, 111 87, and 101 with violist David Miller and cellist Fortunato Arico on ASV (GAU 104, 1986).
  • Lucy Robinson's evaluation appeared in The Musical Times (1981), p. 540. (available on JSTOR)
  • 岸辺成雄『音楽大辞典』、平凡社、1983年、ISBN978-4-582-12500-9

外部リンク[編集]