バグダード爆弾テロ事件 (2016年7月)

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バグダード爆弾テロ事件 (2016年7月)
Aftermath of the July 2016 Baghdad bombings 3.jpg
テロにより炎上した建築物
場所 バグダードカッラーダ地区アダミーヤ地区
標的 イラクのシーア派住民
攻撃手段 自爆テロ
武器 車爆弾
死亡者 220[1]
負傷者 225
犯人 ISIL(イスラーム国)の旗 ISIL[2]
攻撃側人数 40[1]

2016年7月3日に発生したバグダード爆弾テロ事件は、バグダードカッラーダ地区英語版の繁華街で爆弾を積んだ冷蔵トラックが爆発し[3]、200人以上の犠牲者を出したテロ事件[4]

カッラーダは、シーア派が多い地区であり、ラマダーン明けの休日を控えた当時は、夜間に買い物客が集まっていた[5]。犯行声明を出したISは、シーア派を標的とした自爆テロであると発表している[6]。このテロは、6月28日の2016年イスタンブール空港攻撃、7月1日のダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件に続くテロ事件となった[注 1][8]

また、同日アダミーヤ地区英語版シャアブ英語版でも爆弾テロ事件が発生し、5人の犠牲者を出している[9][5]。この他、バグダード近郊で2件の爆弾テロも発生した[10][11]

背景[編集]

101人が死亡した2016年5月17日の爆弾テロ英語版は、ISILによるものであった。安全保障のアナリストのいくらかは、この自爆テロはイラク治安部隊の注目をファルージャ奪還作戦英語版から移す狙いがあったと考えている[12]ファルージャの戦闘は6月には終結し、イラク政府によって奪還された[13]

事件[編集]

カッラーダ地区での自爆テロは、買い物客やラマダーンの夕食であるイフタール英語版を楽しむ多くの人々が集まる通りで発生した[14]。爆弾は冷蔵トラックに隠されていた[15][14]

この事件は、ファルージャ奪還後最初の大規模なテロ事件となった[16]。少なくとも213人が死亡、200人以上が負傷した[1][17]。確認されていない報告ではあるが、車爆弾ADE 651のような偽爆発物探知機を利用し続けている[18]イラク治安部隊の検問を、通過した可能性があると指摘されている[19]

2回目の爆発は、深夜、バグダード北部に位置する住民の大半がシーア派であるアダミーヤ地区のシャアブで発生、少なくとも5人が死亡し、16人が負傷した[16]

3回目の爆発がシーア派民兵アル=ハシド・アル=シャービ英語版の構成員を標的として発生し、1人が死亡し5人が負傷、車両に損害が生じた。これは、バグダード県アブ・グレイブ英語版即席爆発装置によって行われた[10]

4回目の爆発は、バグダード南方の町アル=ラティフィヤ英語版車爆弾によって行われたものである。民間車の下に仕掛けられた爆弾が、発車により起爆したもので、1人が死亡し、この他にも負傷者が出ている[11]

4つの爆弾テロによる人的被害は、死者220人、負傷者225人に達する。事件発生後、バグダード作戦司令部では、犯行につながる細胞組織の構成員を逮捕したとしている[16]

犠牲者[編集]

イラク国防省は、3日の時点で死者167人、負傷者180人以上であり、この人数はさらに増加する見込みであると発表した[16][20]。現場からの報告では、犠牲者の多くは子供であった[2][16]

初期の報告の後、がれきの下から発見された遺体と負傷者の死亡により、死者は増加した[14]。2016年では、最大の死者をもたらしたテロとなった[14][16]アル=ルサーファ英語版の保健管理局で管理者を務めるアブデル・ガニー・サードンによれば、カッラーダ地区の爆破テロにより3件の病院に38人の負傷者を受け入れ、70体の遺体を保管しているとした[21]。また、50体の遺体は身元確認が出来ないほど焼け焦げ、確認のためDNAのサンプルを送付している[21]

犯行声明[編集]

ISILが犯行声明を出し、シーア派を標的としたものとした[2]。実行者は、アブ・マハ・アル=イラキとされた[15]。関与の度合いについては、独立した検証はまだ行われていない[2]

退役した陸軍士官でバグダードの安全保障アナリストのジャースィム・アル=バハドリーは、この事件をISILがファルージャで敗北した屈辱に対する報復であると述べた[14]

反応[編集]

イラクの反応[編集]

3日、ハイダル・アル=アバーディ首相が現地を訪れたが、住民の怒りは首相に対して向けられた[5][2][16][3]。これは、治安の強化を約束したにもかかわらず、それが果たされなかったことによるものである[14]ニューヨーク・タイムズのレポーターは、現地の店主が『子供たちの復讐のためにアバーディに投石し、命中したことを神に感謝する』と述べたことを伝えている[16]

イラク政府は3日間の服喪を宣言した。ハイダル・アル=アバーディ首相は攻撃の実行者を罰するとの声明を行った[4][22][23]

イラクのスンニ派を指導する組織イラク・ムスリム・ウラマー協会は、このテロ事件を「実行者が誰で、その動機がどこにあるにせよ、血なまぐさい犯行」であると述べた[16]

直近の死者数が報じられた後、イラク国防省は資材、検問地点、バグダードの安全を適切に制御するための諜報機関が十分ではなく、圧倒されていることを認めた[20]ソーシャルメディアでは、イラク人の中には、かつて首相が検問から撤収するとした偽爆発物探知機ADE 651に対する怒りを表すものもいた[24]

国外の反応[編集]

[編集]

  1. ^ 但し、ダッカの事件についてはバングラデシュ当局はISILの関与について否定的である[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c “Fury over insecurity as Iraqis mourn 200 dead in Baghdad blast”. AFP通信. (2016年7月5日). https://www.yahoo.com/news/more-200-dead-claimed-baghdad-blast-officials-072248788.html 2016年7月5日閲覧。 
  2. ^ a b c d e Chulov, Martin (2016年7月3日). “Isis claims responsibility for Baghdad car bombing as 120 die on single day”. ガーディアン. 2016年7月5日閲覧。
  3. ^ a b 繁華街の自爆テロ、死者125人に バグダッド”. CNN (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  4. ^ a b イラク首都自爆、死者200人を超える”. AFP通信 (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  5. ^ a b c バグダッド自爆攻撃、270人以上死傷 3日間の服喪”. BBC (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  6. ^ 買い物客でにぎわう繁華街で爆弾攻撃、ISが犯行声明 イラク首都”. AFP通信 (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  7. ^ ダッカ襲撃事件、国内の武装勢力が関与か”. CNN (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  8. ^ Hassan, Falih; Arango, Tim (2016年7月3日). “Bombing Kills More Than 120 in Baghdad”. ニューヨーク・タイムズ. http://www.nytimes.com/2016/07/04/world/middleeast/baghdad-bombings.html?_r=0 
  9. ^ バグダッドで爆弾テロ、12人死亡 ISISが犯行声明”. CNN (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  10. ^ a b Loaa, Adel (2016年7月3日). “Bomb explosion in western Baghdad, one al-Hashd al-Shaabi member killed”. Iraqi News. 2016年7月4日閲覧。
  11. ^ a b Sarhan, Amre (2016年7月3日). “Car bomb blast kills civilian in al-Latifiya in southern Baghdad”. Iraqi News. 2016年7月4日閲覧。
  12. ^ Salaheddin, Sinan (2016年5月30日). “Iraqi forces push into Fallujah as IS bombings kill 24”. Bigstory.ap.org. 2016年7月4日閲覧。
  13. ^ “119 dead as car bomb rips through Baghdad shoppers”. ザ・ヒンドゥー. AFP. (2016年7月4日). http://www.thehindu.com/news/international/is-claims-deadly-baghdad-shopping-street-bombing/article8803797.ece. "It came a week after Iraqi security forces recaptured Fallujah from IS, leaving Mosul as the only Iraqi city under the jihadist group's control." 
  14. ^ a b c d e f “Nearly 120 killed in overnight Baghdad bombings claimed by Islamic State”. ロイター. (2016年7月3日). http://www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-iraq-blast-idUSKCN0ZJ017 
  15. ^ a b “Baghdad bombing: ISIS claims responsibility; suicide bomber’s identity revealed”. Iraqi News. (2016年7月3日). http://www.iraqinews.com/iraq-war/baghdad-bombing-isis-claims-responsibility-suicide-bombers-identity-revealed 2016年7月5日閲覧。 
  16. ^ a b c d e f g h i “Iraq violence: IS bombing kills 125 Ramadan shoppers in Baghdad”. BBCニュース. (2016年7月3日). http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-36696568 
  17. ^ ISIS car bomb kills more than 100 in Baghdad”. CTV News. CTVテレビジョンネットワーク (2016年7月2日). 2016年7月4日閲覧。
  18. ^ Murtaza Hussain (2015年11月23日). “This Fake Bomb Detector Is Blamed for Hundreds of Deaths. It’s Still in Use.”. ザ・インターセプト. 2016年7月5日閲覧。
  19. ^ Saif Hameed、Maher Chmaytelli (2016年7月3日). “Nearly 120 killed in overnight Baghdad bombings claimed by Islamic State”. ロイター. 2016年7月5日閲覧。
  20. ^ a b Loaa Adel (2016年7月3日). “Baghdad bombing: Casualties in Karrada rise to 347”. IraqiNews.com. 2016年7月5日閲覧。
  21. ^ a b Adel, Loaa (2016年7月3日). “Baghdad bombing: Scores of people dead, dozens injured”. Iraqi News. http://www.iraqinews.com/iraq-war/baghdad-bombing-scores-of-people-dead-dozens-injured/ 2016年7月5日閲覧。 
  22. ^ Bom Baghdad Tewaskan 120 Orang, Irak Umumkan Berkabung Nasional”. SINDOnews.com (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  23. ^ Baghdad bombing: Abadi announces three-day mourning for Karrada victims”. Iraqi News (2016年7月3日). 2016年7月5日閲覧。
  24. ^ More than 120 killed in Islamic State's worst bomb attack in the Iraqi capital”. シカゴ・トリビューン (2016年7月4日). 2016年7月4日閲覧。
  25. ^ Indonesia Kecam Keras Teror Bom di Irak”. SINDOnews.com (2016年7月4日). 2016年7月5日閲覧。
  26. ^ Suara.com. “Pemerintah Indonesia Kecam Serangan Bom di Baghdad”. Suara.com. http://www.suara.com/news/2016/07/04/121009/pemerintah-indonesia-kecam-serangan-bom-di-baghdag 
  27. ^ Iran’s Zarif slams terror attack in Baghdad”. イラン学生通信 (2016年7月3日). 2016年7月3日閲覧。