バカッター

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バカッターは、日本のインターネットにおいて誕生したTwitter利用者による行為の様相を表すインターネットスラング。「馬鹿」と「Twitter」のかばん語

概要[編集]

Twitterの利用者が投稿するツイートに内容の酷いものが多く見つけられ話題になったことから、『バカッター』という名称が造られ、広まった。

Twitterの利用者が投稿を通して自らの犯罪、詐欺、その他の反社会的行動を世間に曝け出す行為を指す[1]

中には個人名を出した上で、非行や犯罪行為を自慢する自己顕示欲のある者などが存在する。投稿者が悪ふざけで投稿した文章や画像から炎上することが多い。

たとえ当該投稿を削除しても、キャプチャされた画像(スクリーンショット[2]や検索エンジンのサーバー(インターネットアーカイブなど)に残ったキャッシュが半永久的に残り続け、これらの写真や動画に写り込んだわずかな情報(背景、周囲の建造物など)を元に第三者が住所・氏名・学校などの個人情報を特定し、晒し上げることで誹謗中傷がインターネットに拡散される[3]

この事態に周囲の目に恐れを感じ、外出を控える場合が多く、また個人情報の流出や訴訟・失業・停学・退学により、その人あるいは周囲の人生を大きく変えてしまうケースが少なくない[4][5][3]

2013年はバカッターに該当する投稿が数多く行われ、同年8月25日の産経新聞ではこれらの現象を一面で報じ[6]、また「バカッター」の語が「ネット流行語大賞 2013」の4位となった[1]

2019年からは、投稿する場がTwitterからInstagramに移ったことから、バカッターから転じて「バカスタグラム」という言葉が生まれているが[7]、投稿先のSNSの種類にかかわらず十把一絡げに「バカッター」の名称を使うメディアも多い。

分析[編集]

インターネット上で犯罪行為を告白するユーザーの多くは私物のパソコンを持っていない(スマートフォンしか持っていない)ため、ITリテラシーが低くてネットに不慣れな初心者が多い。このようなユーザーは

  • インターネットが「匿名」だと思い込んでいること
  • リモートホストIPアドレスの存在を知らないこと(大まかな地域や会社名が特定できることを理解していない)
  • 写真や動画が日本のみならず、全世界に公開されることを理解していない
  • たとえ顔を隠しても、写真や動画のわずかな情報(投稿者の声、体格、服装、周囲の背景や建造物など)で居場所と個人情報を特定できる
  • 当該投稿を削除しても、(削除前の投稿を)スクリーンショットや動画で保存できることや、検索エンジンのサーバーに残ったキャッシュが半永久的に残り続ける

ことを理解していない者が多い。加えて、Twitterは思いついたことを簡単に(フィーチャーフォン、スマートフォンでも)投稿できるのもバカッターの発生原因のひとつとして考えられている。内容に問題がないかを投稿前にゆっくりプレビューする者が少ないツイッターでは特に顕著だ[8]

7月 - 8月の夏休みシーズンでは時間が有り余った若者が増えることによってバカッターが続出するという分析もあり、この現象を「バカッター騒動」と総称されることもある[6]

バカッター騒動によって被害を受けた店舗が多額の損害を受けたり、最悪の場合は自主廃業となった実例もある。この中には騒動によって直接的および間接的に危害を加えたバカッターユーザーに対して、民事の損害賠償を請求する(または雇用契約の締結時に「故意および過失で損害を与えた場合、損害賠償を請求する」という誓約書を書かせる)企業も出ている。

ブロンコビリーで発生した事件(後述)に関して、日本大学法学部(刑法)名誉教授の板倉宏は「(店側は)2000万円ほど請求してみるのもいい。実際に取れるのは500万円ほどになると思う」と意見を述べた[9]

高校・大学生の場合は退学処分になるだけですまず[10]、正社員・非正規従業員の場合も懲戒解雇に至った例もある[11]

ITジャーナリストの井上トシユキは、2013年の夏の騒ぎの過熱について、

  • スマートフォンの普及により、写真を撮ってすぐにツイートしやすくなったこと
  • 他者のツイートに触発されてさらに過激な内容をツイートしようとする競争意識が働いたこと
  • 折しも夏休み期間で、迂闊なツイートをしたりそれを拡散したり糾弾したりするのに格好の時間的余裕が生じていたこと

の3つが相乗的に影響したためだと分析している[12]

日本における主なバカッター事件[編集]

  • 2013年
    • 5月 - 國學院大學に通う男が、個人情報を公表したアカウントで自身の肛門に公園の水道の蛇口を差し込んだ様子を投稿。ネットユーザーが本名や大学名を特定、9月2日に大学が在学生であることを確認して公式サイトに謝罪文を掲載し厳正な処分を下す方針を明らかにした[13]
    • 5月9日 - ピザハットのアルバイト従業員が閉店後にピザ生地を顔に張り付け8月18日にその写真を投稿。店から懲戒解雇処分を受けた[14]
    • 7月20日(推定) - 神戸市営地下鉄大倉山駅とみられる駅で、線路内に男4人が侵入しその様子を仲間が撮影して投稿。神戸市交通局兵庫県警察に相談し、侵入者の特定を開始した[15]
    • 7月23日 - 京都在住とみられる学生数人がコンビニエンスストアのアイス冷蔵庫に入り、1人がその映像を投稿し投稿者の本名や学校名がネット上に出回った[16]
    • 8月5日 - ブロンコビリー梅島店のアルバイト店員が、別の同店のアルバイト店員が店内の冷蔵庫に入っている様子を投稿。同店は閉店し、ブロンコビリーはアルバイト店員に損害賠償の請求を検討している[17]
    • 8月9日 - 多摩市そば屋・泰尚で多摩大学に通うアルバイト店員が業務用の食器洗浄機や冷蔵庫に寝そべった状態で入りながらはしゃぐ様子を撮影した写真をTwitterに投稿した[18]。この事件が原因で泰尚は営業停止、後に破産し廃業に追い込まれる事態となった。
    • 8月19日 - フードスクエアガーデン前橋店で学生がアイスクリーム用の冷凍庫に寝そべった様子を投稿。この学生は21日付で退学処分となったほか、店側はアイスクリーム類全てを撤去、ケースを清掃・消毒し、指定した期間にアイスクリーム類を購入した客に返金することとなり、被害額確定後に警察に通報する方針を明らかにした[19]
    • 8月25日 - ピザーラ東大和店の従業員が、キッチンの冷蔵庫やシンクに入ってピースサインをするなどの悪ふざけを行い、その写真を投稿した。同店は営業停止、保存食材の廃棄、冷蔵庫などの清掃を行うこととなり、ピザーラを運営するフォーシーズは店員に厳正な処分を課す方針を明らかにした[20]
    • 8月25日 - 北海道釧路町の当時19歳の男らがパトロールカーの屋根やボンネットによじ登り、それを撮影した画像付きで、Twitterに「中2病だから みんなでパトカー荒らしてきたぜ」と投稿。通報を受けた北海道警察がパトカーを調べたところ、屋根に10cmから20cmの傷が見つかったため器物損壊の容疑で逮捕された[21][22]
    • 9月3日 - 北海道札幌市しまむら苗穂店にて、客の女が「購入した商品に穴が開いていた」として、店までの交通費を要求するとともに店員2人に土下座させ、その写真を実名付きで投稿。21日頃からネット上で話題となりテレビでも報じられた。店員は9月下旬に被害届を出したことから、女は10月7日に強要容疑で逮捕された。客の女は容疑を否認している[23]
    • 9月19日23時過ぎ頃 - 山口大学医学部の学生数人が宇部駅の線路内に立ち入り、その様子を別の学生がそれを撮影して投稿した。関係した学生数人はJR西日本に謝罪して25日から謹慎となり、大学は「事実確認を行い、厳正に処分したい」とコメントした[24]
  • 2014年
    • 1月11日 - 大分県のジョイフル別府鶴見店で客がタバスコの瓶を鼻に入れ、翌日その写真を投稿。この客の個人情報が発覚する事態となった[25]
    • 11月3日 - 石川県加賀市の職員が勤務先等を明らかにしたアカウントで仕事の不平不満や同僚の悪口等の書き込みをおこなっていたところ、ネットユーザーが探偵ファイルに情報を提供し記事となった[26]。同記事によれば、探偵ファイルの問い合わせに対して加賀市役所は当該職員の調査等は行わないという趣旨のことを述べたとのことだった。
    • 12月6日1時頃 - 男1人・女2人の3人組が滋賀県内のボウリング場を訪れ、女2人が未成年であることに気付いた店員が女2人に年齢確認を求めると、これに怒った男が「前に来たときはそんなこと聞かれなかった」「未成年と分かってて受付通したのか」などと罵倒し、さらに「土下座して謝らないと店のものを壊す」と脅し、女2人も「はよ、やりいさ」などとはやし立て、女1人が店員の土下座の写真を投稿。これを見たネットユーザーが滋賀県警に通報。また、土下座を強要された店員も被害届を出し、3人は翌年1月19日に強要容疑で逮捕された。男は起訴され懲役8か月の実刑判決を受け、女2人は家庭裁判所に送致された。また、投稿者の氏名や出身中学などの個人情報、インターネット上に晒された[27]
  • 2016年
  • 2017年
  • 2019年
    • 大阪府守口市くら寿司守口店に勤務していたアルバイト従業員2人が生魚をゴミ箱に放り込み、その魚を再び調理する様子を撮影、投稿した。くらコーポレーション(現・くら寿司)は2月6日に謝罪した。ネット上でくら寿司に対する不買運動が発生しただけでなく、株価大暴落を起こし27億円の損失を出す事態となった。くらコーポレーションはこのアルバイト従業員2人を2月8日付けで懲戒解雇処分としたと同時に、多発する飲食店での同様の事件への抑止力とするため刑事と民事での法的措置を取ることを明らかにした[37]
    • 2月7日 - 神奈川県横浜市セブン-イレブン横浜高島台店に勤務していたアルバイト従業員2人が商品のおでんの白滝を口に含み吐き出した後タバコでバカ踊りをする様子を撮影、投稿した。加盟店のオーナーはこの2人を2月9日付けで懲戒解雇処分とした上で法的措置を含む処分を検討していることを発表した[38]
    • 2月16日 - 大阪府泉佐野市大戸屋りんくうシークル店に勤務していたアルバイト従業員が下半身丸出しでお盆を陰茎に当てその様子を他の店員2人とその仲間が撮影して投稿。大戸屋は動画で使用されたお盆を廃棄し、この3人を2月18日付けで懲戒解雇処分とした上で法的措置を検討していることを発表した。しかし、今回の動画を別のSNSに投稿した人物の特定には至っていない[39]

脚注[編集]

  1. ^ a b 花 (2013年12月6日). “「ネット流行語大賞 2013」発表! 「バカッター」「ブラック企業」などランクイン”. RBB TODAY. http://www.rbbtoday.com/article/2013/12/06/114687.html 
  2. ^ 本来、Twitterの投稿を引用するには埋め込みを用いなければならず、スクリーンショットの掲載による引用は利用規約に違反する。
  3. ^ a b カトウ伊香保 (2018年1月9日). “10代“バカッター”のその後…就職や進学が困難に「行く先々で“炎上したヤツ”と言われ続けた」”. 日刊SPA!. https://nikkan-spa.jp/1444370 
  4. ^ Taka (2013年10月19日). “『Twitter』に悪ふざけ画像投稿で炎上の蕎麦屋が破産 撮影の状況について女性店主と投稿した学生の主張に食い違いも”. ガジェット通信(東京産業新聞社). http://getnews.jp/archives/438979 
  5. ^ “冷蔵庫に入りバイト先を閉店に追い込んだ学生 人生に悩み中”. 女性セブン (小学館). (2013年9月12日). http://www.news-postseven.com/archives/20130829_207930.html 2017年1月28日閲覧。 
  6. ^ a b 2014年8月8日“アイスケース入ったり無免許運転 今年もバカッターが活発”. 夕刊アメーバニュース. (2014年8月8日). オリジナルの2014年8月26日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140826120918/http://yukan-news.ameba.jp/20140808-11603/ 
  7. ^ バカッターの次は「バカスタグラム」流行? 変わる“バイトテロ”の発火点,Yahoo!ニュース,2019年2月12日
  8. ^ 何故Twitterで犯罪自慢をしてしまうか 「匿名だと思っている」「ITリテラシーの低い」
  9. ^ “「ブロンコビリー」おバカバイトの投稿代償は2千万?”. (2013年8月13日). http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/172828/2/ 
  10. ^ バカッターで「人生詰んでしまった」若者たち 続々損害賠償請求に踏み切る企業が… J-CASTニュース 2013年8月30日
  11. ^ “玉木宏の伝票をツイッター投稿の土産物店員ら解雇”. スポニチ Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2013年9月26日). オリジナルの2013年9月29日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130929003308/http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/09/26/kiji/K20130926006693400.html 
  12. ^ “この夏、30人近くがおバカ写真で炎上 国民総「バカッター」化で日本はどうなる”. J-CASTニュース: p. 2/2. (2013年8月26日18時42分). http://www.j-cast.com/2013/08/26182242.html?p=2 2015年12月6日閲覧。 
  13. ^ 尻の穴に蛇口の男 大学謝罪 TomoNews公式YouTubeアカウント 2013年9月3日公開 2015年12月6日閲覧
  14. ^ 顔面ピザで炎上 ピザハット TomoNews Japan公式YouTubeアカウント 2013年8月19日公開 2015年12月6日閲覧
  15. ^ 次は神戸の地下鉄線路でピース TomoNews公式YouTubeアカウント 2013年8月29日公開 2015年12月6日閲覧
  16. ^ バカ再び アイス冷蔵庫に学生 TomoNews Japan公式YouTubeアカウント 2013年7月24日公開 2015年12月6日閲覧
  17. ^ 悪ふざけ写真のステーキ店閉店 TomoNews Japan公式YouTubeアカウント 2013年8月12日公開 2015年12月6日閲覧
  18. ^ “店員が食洗機に入った画像をTwitter投稿のそば屋、倒産 不謹慎画像、書類送検も相次ぐ”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年10月21日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/21/news127.html 2014年1月13日閲覧。 
  19. ^ アイス冷凍庫に今度は客 群馬 TomoNews Japan公式YouTubeアカウント 2013年8月21日公開 2015年12月6日閲覧
  20. ^ 加盟店アルバイト従業員の不適切な行為のお詫びとお知らせ
  21. ^ 北海道の19歳バカ者ネット投稿「パトカー荒らしてきたぜ」で器物損壊逮捕 J-CASTニュース 2013年8月27日10時15分配信 2015年12月6日閲覧
  22. ^ 北海道警のパトカー乗りツイッター 器物損壊容疑で少年2人逮捕 - どうしんウェブ(北海道新聞社 2013年8月26日 Internet Archiveキャッシュ)
  23. ^ 「しまむら店員に土下座強要」で「炎上」した女性が逮捕
  24. ^ 線路内立ち入り、ツイッター投稿 山口大医学部生 朝日新聞 2013年10月4日10時49分配信 2015年12月6日閲覧
  25. ^ 2014年もバカッター出没 TomoNews Japan公式YouTubeアカウント 2014年1月13日公開 2015年12月6日閲覧
  26. ^ 公務員がツイッターで暴言や誹謗中傷を連発!役所は調査拒否、隠蔽か? 探偵ファイル 2014年11月3日配信 2015年12月20日閲覧
  27. ^ 「くそおもろい笑」で炎上、ボウリング場で「土下座強要」させた学習能力ゼロの男女3人組(産経WEST 2015年5月9日17時0分配信 2015年12月6日閲覧:(1/3) / (2/3)
  28. ^ 新年早々バカッター 電車の中で下半身モロだし迷惑行為した写真をTwitterに投稿 ゴゴ通信 2016年1月4日
  29. ^ UFOキャッチャーの景品に手を伸ばし窃盗 撮影した親が投稿し大炎上 ゲームセンターの場所も特定される ゴゴ通信 2016年1月6日
  30. ^ 線路内に立ち入った動画投稿…警察が事情聞く 読売新聞 2016年3月11日11時55分配信 2016年3月11日閲覧[リンク切れ]
  31. ^ ミニバイク少年が娯楽施設内を走行 建造物侵入容疑で捜査 戸部署 カナロコ 2016年9月27日2時00分配信 2016年9月30日閲覧
  32. ^ ラウンドワンの店内をバイクで暴走!動画で自慢した少年、密漁や盗撮も発覚 探偵ファイル 2016年9月27日配信 2016年9月30日閲覧
  33. ^ ゲーセンでバイク、容疑の高2逮捕 「のりで乗った」 朝日新聞 2016年9月30日配信 2016年9月30日閲覧
  34. ^ “動画撮影の共犯女を書類送検 常滑のおでんつんつん事件”. 中日新聞. (2016年12月21日). オリジナルの2016年12月21日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20161221143437/http://www.chunichi.co.jp/s/article/2016122190214651.html 
  35. ^ モノレール軌道で寝そべり 北九州の中学生、悪ふざけ 産経フォト 2017年1月14日配信 2017年2月6日閲覧
  36. ^ “保冷庫に入り込む 未成年か コンビニが被害届 糸満市西崎”. 琉球新報 (琉球新報社). (2017年8月4日). オリジナルの2017年8月4日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/20170804084447/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-548380.html 2017年8月4日閲覧。 
  37. ^ くら寿司守口店における不適切行動をとった従業員2名について
  38. ^ 当社加盟店従業員による不適切行為について
  39. ^ 当社従業員による不適切な行為についてのお詫びとお知らせ

参考文献[編集]

  • 永島穂波 (2011年9月9日). バカ発見器 インターネットから火がついた大事件. クイン出版. ISBN 978-4-862-84115-5. 
  • 高橋暁子 (2014年12月4日). ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち. 幻冬舎. ISBN 978-4-344-97951-2. 

関連項目[編集]