バイオパンク

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バイオパンク: Biopunk, 「バイオテクノロジー」と「パンク」の混成語)はバイオテクノロジー(生物工学)に焦点をあてる、SFの二次的ジャンルである。サイバーパンクからの派生ではあるが、IT(情報技術)よりもむしろバイオテクノロジーの織り込みに焦点をあてている[1]。バイオパンクは合成生物学と関わる。派生元はバイオハッカー、バイオテクノロジー系巨大企業、ヒトDNAを操る圧政的な政府機関というものを含んだサイバーパンクである。ほとんどはサイバーパンクの暗い雰囲気を踏まえつつ、一般にバイオパンクは遺伝子工学の暗黒面を吟味したり、バイオテクノロジーの低級な面を象徴したりする。

概要[編集]

バイオパンク(SF)は、サイバーパンクに深く関わっている二次的ジャンルである。近未来で(ほとんどは偶然に)組み換えDNAを発見したことから起きた、バイオテクノロジー革命の経過に焦点をあてている。 バイオパンクの物語は、たいてい人体実験から発生した個人集団の奮闘を探っていく。そのディストピア的背景となっているのは、概して全体主義政府や巨大企業であり、彼らは種々のバイオテクノロジーを社会の操作や暴利獲得のための道具として悪用している。サイバーパンクとは異なり、バイオパンクはIT(情報技術)ではなく合成生物学に立脚している。脱サイバーパンク(postcyberpunk)作品と同様に、各個人を改造・強化しているのはふつうサイバーウェア(電脳技術)ではなく、遺伝子操作である[1]。バイオパンク作品には共通して、「闇医者」("black clinic")という特徴がある。これは研究室診療所病院であり、違法・非規制または倫理的にうさんくさい生物学改造や遺伝子工学の手術を行っている[2]。多くのバイオパンク作品の特徴は、ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』という最初のサイバーパンク小説の一つに根ざしている[3]

著名なこの分野の作家の一人はポール・ディ・フィリッポ英語版である。しかしディ・フィリッポは、そのような物語をライボファンクと呼んだ。これは「ライボソーム」("ribosome")と「ファンク」("funk")の混成語である[4] 。『ライボファンク:宣言集』(RIBOFUNK: The Manifesto[5]においてディ・フリッポは次のように述べた。

なぜライボなのか?

サイバネティクスは、サイバーパンクSFが生まれた時には死んだ科学だった。活きた実践者など居ない行き詰まりだ。しかも、「サイバー」という接頭辞は、漫画から粗悪な映画にまでわたる伝達手法において乱用されために、取り返しがつかないほど劣化してきた。このタグ(定型句)は、一般の認識においてはコンピュータ・ハッキングや、ロボコップのような空想サイボーグを表している。また、体系立てられた世界観を構築するにあたって、ノーバート・ウィーナーの実際的なテクストは、実り多い隠喩を充分提供しているわけではない。

なぜファンクなのか?

パンクは、サイバーパンクSFが生まれた時には死んだ音楽だった。活きた実践者たちは居たが、彼らはまだメッセージを得ていなかったのであり、行き詰まりだ。この音楽虚無主義的で千年王国的な世界観は、ただ一つだけ存在し得た自らの終点にて、既に極致に達してしまっていた。つまり、自己消滅である。

では、ライボファンクとは何か?

ライボファンクとは、思弁創作(スペキュレイティヴ・フィクション)である。それは、次なる革命―本当に重要な唯一のもの―が生物学の分野内で起きるという信条を認め、信条から知らされ、信条を描く。ライボファンクが「法皇」を言い換えれば、「人類の正しき研究生命なり」となる。物理学化学は忘れるのだ。生体を探求するための単なる道具なのだから。コンピュータ? 生命のためのただのシミュレーターでありモデラーだ。細胞こそなり![5]

ディ・フィリッポの主張では、ライボファンクの先駆けに含まれるものとしてH・G・ウェルズの『モロー博士の島』やジュリアン・ハクスリーの『組織培養王』(The Tissue Culture King)、デイヴィッド・H・ケラーのいくつかの物語、デーモン・ナイトの『自然状態、その他』(Natural State and Other Stories)、フレデリック・ポールC・M・コーンブルースの『グラヴィティ・プラネット』(Gravy Planet)、T・J・バスジョン・ヴァーリイの小説、グレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック英語版ブルース・スターリングの『スキズマトリックス英語版』がある[5]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b Quinion, Michael (1997). World Wide Words: Biopunk. http://www.worldwidewords.org/turnsofphrase/tp-bio3.htm 2007年1月26日閲覧。. 
  2. ^ Pulver, David L. (1998). GURPS Bio-Tech. Steve Jackson Games. ISBN 1-55634-336-1. 
  3. ^ Paul Taylor. “Fleshing Out the Maelstrom: Biopunk and the Violence of Information”. Journal of Media and Culture. 2011年4月8日閲覧。
  4. ^ Fisher, Jeffrey (1996). Ribofunk. http://www.wired.com/wired/archive/4.11/ribopunk_pr.html 2007年1月26日閲覧。. 
  5. ^ a b c Di Filippo, Paul (1998). RIBOFUNK: The Manifesto. http://www.streettech.com/bcp/BCPtext/Manifestos/Ribofunk.html 2011年1月5日閲覧。. 

外部リンク[編集]

  • Hackteria.org:バイオアーティストのためのコミュニティ