バイオダイナミック農法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

バイオダイナミック農法(ビオダイナミック、ビオディナミ、シュタイナー農法とも)とは人智学ルドルフ・シュタイナーによって提唱された、太陰暦に基づいた「農業暦」にしたがって種まきや収穫などを行い、また牛の角や水晶粉などの特殊な物質を利用する有機栽培の一種。

概要[編集]

バイオダイナミック農法とは、神智主義で有機栽培実践家に有機栽培の神智学的な基礎付けを求められたルドルフ・シュタイナーが、1924年ドイツのコバーヴィッツで行った8回に及ぶ講演に基づくものである。鉱物製肥料の使用を中心としたそれまでの農法を否定し、土壌と植物、動物の相互作用だけでなく、天体の動きにも着目した農業を行う。ただしシュタイナー自身がバイオダイナミック農法を実践していたのかについては証拠がない。藤原辰史は、バイオダイナミック農法の名付け親の一人エルンスト・シュテーゲマンが1922年から化学肥料を用いない農法を試していることから、シュタイナーが農法を発明したと言うより、シュテーゲマンらが行なっていた農法に対して理論を構築したのではないかと考察している(藤原 2005)。

理想的には農場が生態系として閉鎖系であることを目指す。これは、当時成立しつつあった生態学や社会学の有機体論との関係が指摘されている。

神智学を根拠にするとされるが、元来ドイツで伝統的に行われていた農法を神智学的に再解釈して作られたという理解されている。しかしその際に、伝統的には効率や有効性を根拠に理解されてきた事柄が、シュタイナーの農業への幻想により希釈されたり、場合によってはそれは機械化の否定として現れているという。

ナチス時代、生産量の低さからバイオダイナミック農法は公的には禁止されたが、ハインリッヒ・ヒムラーリヒャルト・ヴァルター・ダレーなど支持者によって実質的に研究や実践が続けられ、それは強制農場にも及んだ。

農法としての特徴[編集]

有機栽培の一種であり、農薬化学肥料を使わない。

農業暦[編集]

月やその他の天体の動きが植物に与える作用を重視した農業暦を用いた栽培を行う。ただし重視しているのは重力放射線などの実際の力学的な作用ではなく、占星術などで培われた知識を元にしたスピリチュアルなものである。太陰暦だけでなく、黄道十二宮や惑星の位置と関連させて決定される。


調合剤[編集]

以下に代表的な調合剤を示す。なお材料はその地方でとれたものを使う。

バイオダイナミック農法の調合剤
番号 調合剤 使い方 目的
500 雌牛の糞 雌牛の角に糞を詰て土の中に冬につくり、雨水で希釈し散布 根の強化
501 水晶(長石石英)の粉 砕いて雌の牛角に詰めて6ヶ月土中に埋め希釈し散布 根の強化
502 セイヨウノコギリソウの花 アカシカの膀胱につめて一冬寝かし、夏にまく 硫黄の供給
503 カモミールの花 秋に牛の小腸につめて、春にまく 石灰分の供給窒素量を調整
504 イラクサの腐葉土 乾燥させておいて、使う時に煎じる。いつでも利用してよい。 窒素と鉄分の供給
505 オークの樹皮 樹皮を細かく砕き、家畜の頭蓋骨につめて一冬寝かせたもの
506 タンポポの花 牛の腹膜につめて一冬越したもの 珪酸の供給
507 セイヨウカノコソウの花 絞った汁を発酵させたもの  リンの供給
508 スギナ 陰干しして乾燥させ、煮出して使う サビ病など病害を防ぐ

ワイン[編集]

シュタイナーはアルコールを忌避していたので、本来バイオダイナミック農法とワインは無関係であるが、有機栽培の変種としてバイオダイナミック農法で使われる調剤や農業暦を応用したぶどう栽培と、酸化防止剤としての二酸化硫黄を使わない醸造が行われている。またバイオダイナミック農法を実践しているとされているワイン農家のいくつかは、必要に応じてボルドー液などの農薬を使うことや農業暦に関しても柔軟に対応していることを明言している。

批判[編集]

畑中の微生物の多様性や数について、農薬を使わない分たしかに農薬を使っている畑に比べて多いが、他の有機栽培に比べて、調剤や太陰暦を用いたバイオダイナミック農法が特に優れている証拠は全くない。

参考文献[編集]

  • ルドルフ・シュタイナー 『農業講座 : 地球、鉱物・植物・動物・人間の霊的・宇宙的関連』 市村温司訳、人智学出版社、1987年9月
  • 藤原辰史 『ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」』 柏書房、2005年

外部サイト[編集]