ハンガリーグランプリ
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ハンガロリンク | |
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レース情報 | |
---|---|
周回 | 70[1] |
コース長 | 4.381[1] km (2.722 mi) |
レース長 | 306.630[1] km (190.531 mi) |
開催回数 | 38 |
初回 | 1936年 |
最多勝利 (ドライバー) |
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最多勝利 (コンストラクター) |
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最新開催(2022年): | |
ポールポジション |
![]() メルセデス 1:17.377 |
決勝順位 |
1. ![]() レッドブル-RBPT 1:39:35.912 2. ![]() メルセデス +7.834s 3. ![]() メルセデス +12.337s |
ファステストラップ |
![]() メルセデス 1:21.386 |
ハンガリーグランプリ(ハンガリーGP, 英: Hungarian Grand Prix, ハンガリー語: Magyar Nagydíj)は、ハンガリーのハンガロリンク[2]で開催されている自動車レースであり、1986年以降行われているF1のレースのひとつ。
概要[編集]
1986年のF1初開催時[3]は、共産主義体制下にあった東欧諸国での唯一のF1グランプリとして注目されるレースとなった。
地理的に東欧(特に隣国オーストリア)や北欧からの観客が多い。そのため、母国でGPが開催されない東欧・北欧圏のドライバーにとってはホームグランプリとしての扱いもされる。
開催コースのハンガロリンク[2]は予選のグリッドと決勝の戦略が非常に大きいウェイトを占めるグランプリとなっている。その背景はコースが低速コースに分類され、メディアからは「壁のないモナコ」と称されるように、コース幅が狭くストレートが短いため、コース特性的にオーバーテイクが難しいレイアウトと認識されている。その関係で抜くに抜けない膠着状態となってしまい、いわゆる「トレイン状態」「レーシングスクール状態」になる事もあるため、上位スタートが優位とされる。 その一方でハンガロリンクのポールシッターは37戦16勝と勝率は5割を切っている。これは、真夏のバカンス期の開催であるうえ、盆地に位置するので例年晴天、高温のレースになる事が多いため、環境によるドライバーへの負担も大きく、ブレーキおよびエンジン(パワーユニット)の熱負担、シフト回数も多いことによるギアボックスへの負担も大きいことから、車体側の負担も問われるコースでもあるため、マシンの速さも当然の事ながら、チームの戦略、マシンの信頼性、ピット作業なども明暗を分けることもある。そのため、レースに劇的な展開が突然起きること(番狂わせ)も起きたことがある。
実際、記録で見ても、チームとしては3チーム(ウィリアムズ、マクラーレン、メルセデス)が3連覇を記録しているものの、ドライバーによる連覇の記録では2018年から2020年にかけてのルイス・ハミルトンが3連覇を記録したものの、彼以外は2連覇以下に留まっている。特に2002年から2008年まで毎年別々の勝者が生まれており、そのうち3人が初優勝である。
2009年からコスト削減の一環としてサマーブレイクが導入されたため、サマーブレイク前の最後のレースとなることが多い。それを考慮しなくても、レース数で言えば、シーズン中盤戦に位置することが多く、タイトル争いの分岐点として扱われることが多いが、チャンピオン争いが独走となった1992年のナイジェル・マンセル、2001年のミハエル・シューマッハはこのレースでチャンピオンを確定させた。2002年のミハエル・シューマッハは2戦前のフランスGPでチャンピオンが決定したため、唯一チャンピオン決定後となっている。
ハンガロリンクでは、2027年まで継続開催される予定である[4]。
余談[編集]
2004年にミハエル・シューマッハがハンガロリンクを制し、その年のチャンピオンになったが、2005年以降、13年にわたりその年のハンガロリンクを勝利したドライバーは年間チャンピオンになっていないという奇妙なジンクスも生まれた。ただ、初開催の1986年から2004年までの間、ハンガリーGPを制したドライバーがその年のチャンピオンを獲得したのは19回中8回となっており、統計上2005年以前からそのジンクスの兆候が見られた年もあった。それを破ったのはメルセデス在籍時のルイス・ハミルトンだけであり、2018年ハンガリーGPを制し、同年のメキシコGPでチャンピオンを獲得。2019年,2020年もメルセデスのルイス・ハミルトンが同GPを制し、その年のチャンピオンを獲得ている。
他にも2015年から2017年にかけてホンダのパワーユニットを搭載したマクラーレンだが、この時期のホンダ製エンジンの性能の低さもあり、その3年間は振るわない成績であったが、このハンガリーGPに限っては2015年から5位、5位、6位(ドライバーはいずれもフェルナンド・アロンソ。2017年にはファステストラップを記録した。)と3年間好成績を残している。
F1の歴史において、いくつかの記録も生まれており、F1通算100人目の記録が二つ(初優勝とキャリア初ポールポジション)生まれたGPでもある。また、初開催から同一コースでの連続開催の回数という点では、結果的にハンガリーGPを上回る回数を開催したことがある国々を上回る結果となった。なぜなら、初開催から同一コースでの連続開催の回数で言えば、国としての開催数ではハンガリーを上回っていても、コース変更の経歴や数年間の未開催の時期があるため、記録上、初開催から同一コースで31回連続開催を迎えた時点(2016年)でもモナコGP(モンテカルロ市街地コース)に次ぐ最長記録となっている。
主な出来事[編集]
- 1986年 - 先頭を走るアイルトン・セナ(ロータス)と2位のネルソン・ピケ(ウィリアムズ)が1コーナーでバトルを展開。最初のアタックではインを差したピケのラインが膨らんだ隙にセナが抜き返す。2度目はピケがアウト側から被せ、マシンをドリフトさせながら前に出た。
- 1987年 - ナイジェル・マンセル(ウィリアムズ)がレースをリードしていたが、残り6周という所でリアタイヤのホイールナットが外れてリタイアした。
- 1989年 - リカルド・パトレーゼ(ウィリアムズ)が6年ぶりにポールポジションを獲得。決勝は12番手スタートのマンセル(フェラーリ)が順位を上げ、周回遅れを利用してセナ(マクラーレン)をかわして優勝した。
- 1992年 - 2位でフィニッシュしたマンセル(ウィリアムズ)が悲願のチャンピオンを獲得。16戦中11戦目という当時最短でのタイトル決定戦となった。
- 1993年 - デイモン・ヒル(ウィリアムズ)がF1初優勝。父親のグラハムに続き史上初の親子2代ウィナーとなった。
- 1995年 - アロウズの井上隆智穂がエンジントラブルのためマシンを停めた直後、エンジンから出火。消火器を持って自ら消火しようとした所、後方からやってきたマーシャルカー(救急車)に撥ねられる事故が発生。井上はボンネットに乗り上げ、脚の傷みのため倒れこんでしまった。レース終了後に病院に搬送されたものの、大事には至らなかった。この撥ねられたシーンを含め事故の一部始終は国際映像で放送されていた。
- 1997年 - アロウズに移籍した前年度王者ヒルが予選3位、決勝でも11周目にミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を抜いてトップを快走。アロウズならびにヤマハエンジン、ブリヂストンタイヤにとってのF1初優勝に近づいたが、残り2周で油圧トラブルが発生して急失速、惜しくも2位に終わるも、表彰台に駆け付けた観客からはデイモンコール一色であった。
- 1998年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が想定外の3ピットストップ作戦を敢行、マクラーレンの2台を逆転して優勝した。
- 2001年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が優勝し、2年連続4度目のチャンピオンを獲得。また、コンストラクターズにおいてもフェラーリが3年連続11度目のチャンピオンも獲得した。
- 2003年 - フェルナンド・アロンソ(ルノー)がスペイン人ドライバーとしてF1初優勝。当時の最年少優勝記録も作る。
- 2006年 - ジェンソン・バトン(ホンダ)がF1初優勝。ホンダのコンストラクターとしての勝利は1967年イタリアGP以来。
- 2007年 - 予選Q3でアロンソ(マクラーレン)がピットスタートを遅らし、チームメイトのルイス・ハミルトンがタイムアタックに入る機会を妨害したとして、5グリッド降格処分を受ける。
- 2008年 - 先頭を走るフェリペ・マッサ(フェラーリ)が残り3周という所でストップし、ヘイキ・コバライネン(マクラーレン)がF1初優勝。F1通算100人目のウィナーになった。
- 2009年 - フェリペ・マッサ(フェラーリ)のヘルメットに前走車から外れたパーツが直撃。頭部に重傷を負い、シーズン残りを欠場(この事故が頭部保護デバイス「Halo」導入のきっかけとなる)。決勝ではルイス・ハミルトン(マクラーレン)がKERS搭載車として初優勝。
- 2015年 - 2014年の開幕戦オーストラリアGPから続いていたメルセデスのチームとしての連続表彰台記録が28でストップ[5]。セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がハンガリーGP初優勝。
- 2016年 - 予選Q1は雨のため4回の赤旗が出され、11台が107%ルールをクリアできないハプニングがあった(例外的な状況と判断され全車決勝に出走した)。ハミルトン(メルセデス)が優勝し、ハンガリーGPの単独最多勝利ドライバーとなる5勝目を記録。
- 2019年 - マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が自身のキャリア初ポールポジションを獲得したうえ、F1通算100人目となるポールポジション獲得者となった。決勝ではハミルトンがタイヤ戦略によってフェルスタッペンを逆転し、自身が持つハンガリーGPの最多勝利記録を7に伸ばした。
- 2020年 - ハミルトンがポール・トゥ・ウィンでハンガリーGP8勝目を挙げ、ミハエル・シューマッハがフランスGPで挙げた同一GPの最多勝利数に並んだ。
- 2021年 - 多重クラッシュによる中断後のスタンディングスタートでグリッドに1台しか並ばない珍事。また、エステバン・オコンが初優勝し、オールフランス(チーム(アルピーヌ)・パワーユニット(ルノー)・ドライバー)による優勝を38年ぶりに達成した[6][7]。
結果[編集]
F1世界選手権[編集]
ハンガロリンクのコースレイアウトの変遷については、ハンガロリンク#コースレイアウトを参照。
年 | 決勝日 | ラウンド | サーキット | 勝者 | コンストラクター | 結果 |
---|---|---|---|---|---|---|
1986 | 8月10日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ホンダ | 詳細 |
1987 | 8月 | 9日9 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ホンダ | 詳細 |
1988 | 8月 | 7日10 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-ホンダ | 詳細 |
1989 | 8月13日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
1990 | 8月12日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ルノー | 詳細 |
1991 | 8月11日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-ホンダ | 詳細 |
1992 | 8月16日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-ホンダ | 詳細 |
1993 | 8月15日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ルノー | 詳細 |
1994 | 8月14日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
ベネトン-フォード | 詳細 |
1995 | 8月13日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ルノー | 詳細 |
1996 | 8月11日 | 12 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ルノー | 詳細 |
1997 | 8月10日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
ウィリアムズ-ルノー | 詳細 |
1998 | 8月16日 | 12 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
1999 | 8月15日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2000 | 8月13日 | 12 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2001 | 8月19日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
2002 | 8月18日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
2003 | 8月24日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
ルノー | 詳細 |
2004 | 8月15日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
2005 | 7月31日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2006 | 8月 | 6日13 | ハンガロリンク | ![]() |
ホンダ | 詳細 |
2007 | 8月 | 5日11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2008 | 8月 | 3日11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン | 詳細 |
2009 | 7月26日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2010 | 8月 | 1日12 | ハンガロリンク | ![]() |
レッドブル-ルノー | 詳細 |
2011 | 7月31日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2012 | 7月29日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2013 | 7月28日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
メルセデス | 詳細 |
2014 | 7月27日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
レッドブル-ルノー | 詳細 |
2015 | 7月26日 | 10 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
2016 | 7月24日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
メルセデス | 詳細 |
2017 | 7月30日 | 11 | ハンガロリンク | ![]() |
フェラーリ | 詳細 |
2018 | 7月29日 | 12 | ハンガロリンク | ![]() |
メルセデス | 詳細 |
2019 | 8月 | 4日12 | ハンガロリンク | ![]() |
メルセデス | 詳細 |
2020 | 7月19日 | 3 | ハンガロリンク | ![]() |
メルセデス | 詳細 |
2021 | 8月 | 1日11 | ハンガロリンク | ![]() |
アルピーヌ-ルノー | 詳細 |
2022 | 7月31日 | 13 | ハンガロリンク | ![]() |
レッドブル-RBPT | 詳細 |
F1世界選手権外[編集]
年 | 決勝日 | サーキット | 勝者 | コンストラクター | 結果 |
---|---|---|---|---|---|
1936 | 6月21日 | ネープリゲト | ![]() |
アルファロメオ | 詳細 |
複数回優勝したドライバー[編集]
回数 | ドライバー | 優勝年 |
---|---|---|
8 | ![]() |
2007, 2009, 2012, 2013, 2016, 2018, 2019, 2020 |
4 | ![]() |
1994, 1998, 2001, 2004 |
3 | ![]() |
1988, 1991, 1992 |
2 | ![]() |
1986, 1987 |
![]() |
1993, 1995 | |
![]() |
1996, 1997 | |
![]() |
1999, 2000 | |
![]() |
2006, 2011 | |
![]() |
2015, 2017 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のドライバー。
複数回優勝したコンストラクター[編集]
回数 | コンストラクター | 優勝年 |
---|---|---|
11 | ![]() |
1988, 1991, 1992, 1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011, 2012 |
7 | ![]() |
1986, 1987, 1990, 1993, 1995, 1996, 1997 |
![]() |
1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017 | |
5 | ![]() |
2013, 2016, 2018, 2019, 2020 |
3 | ![]() |
2010, 2014, 2022 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のコンストラクター。
複数回優勝したエンジン[編集]
回数 | メーカー | 優勝年 |
---|---|---|
13 | ![]() |
1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011, 2012, 2013, 2016, 2018, 2019, 2020 |
9 | ![]() |
1990, 1993, 1995, 1996, 1997, 2003, 2010, 2014, 2021 |
7 | ![]() |
1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017 |
6 | ![]() |
1986, 1987, 1988, 1991, 1992, 2006 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のメーカー。
- * 1999-2005年はイルモアが製造。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ^ a b c “Hungarian Grand Prix 2022 - F1 Race”. formula1.com. 2022年7月29日閲覧。
- ^ a b ハンガロリンク(サーキット解説)formula1-data.com 2021年8月8日閲覧。
- ^ F1世界選手権が始まる前の1936年に1度だけ、ブダペストのネープリゲトで開催されている。
- ^ “無観客イベントとなるF1ベルギーGPとハンガリーGP、収入減の補償の一環で開催契約を1年延長”. autosport web (2020年6月6日). 2020年6月8日閲覧。
- ^ 歴代2位。1位はフェラーリが1999年第15戦から2002年最終戦までチームとして記録した53。
- ^ 前回は1983年オーストリアGPのアラン・プロスト(ルノー)。
- ^ “アルピーヌの伏兵オコンが初勝利 1周目の多重クラッシュが追い風 8番手から勝機 角田は自己最高位タイ7位【F1第11戦ハンガリーGP】”. 中日新聞Web (2021年8月2日). 2021年8月3日閲覧。