ハリモグラ科

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ハリモグラ科
ハリモグラ
ハリモグラ Tachyglossus aculeatus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 単孔目 Monotremata
: ハリモグラ科 Tachyglossidae
学名
Tachyglossidae Gill, 1872[1]
和名
ハリモグラ科[2]

ハリモグラ科 (ハリモグラか、Tachyglossidae)は、哺乳綱単孔目に分類される科。

単孔目の中で、カモノハシ亜目カモノハシのみが現生)と姉妹群をなすグループである。ハリモグラ科には、ハリモグラ属のハリモグラと、ミユビハリモグラ属に属する3種の、計4種が現生である。

英語圏では Echidna (エキドナ、ギリシア神話に登場する上半身が美女で下半身はヘビという魔神)、または、Spiny Anteater (トゲのあるアリクイ) と呼ばれる。

分布[編集]

ハリモグラはオーストラリアタスマニアを含む)およびニューギニアに、ミユビハリモグラ属はニューギニアに分布する。

絶滅したミユビハリモグラ属2種は、Z. hacketti は現在の西オーストラリア州に、Z. robustus はタスマニアに、Megalibgwilia 属はオーストラリアに分布していた。

分類[編集]

以前はミユビハリモグラ属は、ミユビハリモグラZaglossus bruijniのみで構成されていた。1998年にアッテンボローミユビハリモグラZaglossus attenboroughiが新種記載された際に、ヒガシミユビハリモグラZaglossus bartoniを独立種とし新亜種Z. b. smeenkiも含めて4亜種に分割するという説が提唱された[3]

以下の分類は、Groves(2005)に従う[1]。和名は川田ら(2018)に従う[2]

特徴[編集]

ハリモグラ科の動物は、体表を覆う柔らかい体毛のほかに、太くて硬いトゲ(体毛が特殊化したもの)をもつが、ハリモグラが背面から側面にかけてトゲに覆われているのに対して、より大柄で鼻面も長いミユビハリモグラはやわらかい毛に覆われ、トゲが少ない。そのために、両者の外見的な印象は、かなり異なっている。

体温はハリモグラで30–32程度で、寒い季節でも外気より高く保たれている。ハリモグラは冬期には冬眠を行う。[4]

目は小さく、視覚はネズミと同程度。の穴はかなり大きいが耳介がなく、外からは見分けづらい。

ハリモグラ類は、細長くとがった鼻面をもち、その先端近くに、わりに大きな鼻孔がある。嗅覚も鋭く、落ち葉や下生えの中に鼻先を突っ込んで掘り返しながら食物を探すのに役立つ。は小さく、はまったくない。ハリモグラはシロアリアリ、ミユビハリモグラはミミズや単独性の昆虫を主な食物とし、細長く柔軟なでこれらの食物をなめとり、素早く口の中に運ぶ。四肢にはそれぞれ5本の指があり、そのうちの数本には長くて丈夫ながあり、蟻塚を壊したり、ミミズを押さえたりすることに利用されるほか、毛繕いに使われる。

ミユビハリモグラ属[編集]

現生種 Zaglossus bruijni, Z. bartoni, Z. attenboroughi は、いずれもニューギニアに分布する。

頭胴長45~90cm、体重5~10kgと、ハリモグラより大きい。灰色から黒色のトゲをもつが、このトゲはハリモグラのものよりも短く、数も少ないので、褐色から黒色の体毛の下に隠れて、目にふれないことが多い。前後肢とも、3本の指の爪が発達している。山岳地帯の森林に住み、主食とするミミズのほかに、単独性の昆虫類も食べる。下方に湾曲した、きわめて細長い鼻面は、頭長の3分の2を占める。舌には、先端から口の奥に向かって、約3分の1のところまで、1本の溝があり、その中に角質の突起が生えている。この突起でミミズをひっかけると、ミミズは頭または尾から、舌の溝にそって、ちょうど蕎麦をすすりこむようにして、長い鼻面に取り込まれる。

ミユビハリモグラ属の現生種は、従来 Z. bruijni の1種のみとされていたが、最近になって Z. bartoniZ. attenboroughi が分離されて、3種となった。なお、従来 Z. bartoniZ. bruijniシノニム(同種異名)であった。Z. attenboroughi (Sir David’s Long-beaked Echidna) はデイビッド・アッテンボローへの献名である。

ミユビハリモグラ属は、現生種のほかに2種の化石種が知られる。それらはかつて、オーストラリアとタスマニアの多くの地方に生息していたが、更新世後期までに絶滅した。現生のミユビハリモグラは、ニューギニアの高地にしか分布していない。しかしニシミユビハリモグラに関しては、1901年(明治34年)に西オーストラリア州キンバリー地域で捕獲された標本が存在することが、Kristofer M. Helgenらの研究で明らかになった。[5]化石種のうちで最も大きなものは、更新世に生息したジャイアントミユビハリモグラ Zaglossus hacketti で、頭胴長が約90cmあった。

ミユビハリモグラには、狭義のハリモグラに比べて飼育例が少ない。野外での生態についてもあまり知られていないが、だいたいのところはハリモグラに準ずるものと考えられる。野生での寿命も不明だが、ロンドンの動物園で、30年間飼育された例がある。生息の実態にも不明な点が多いが、現地ではをとるために広く狩られており、存続が危ぶまれている。

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b Colin P. Groves, "Order Monotremata," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 1-2.
  2. ^ a b 川田伸一郎, 岩佐真宏, 福井大, 新宅勇太, 天野雅男, 下稲葉さやか, 樽創, 姉崎智子, 横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  3. ^ T. F. Flammery & C. P. Groves, "A revision of the genus Zaglossus (Monotremata, Tachyglossidae), with description of new species and subspecies," Mammalia, Volume 62, Issue 3, 1998, Pages 367-396.
  4. ^ BBC. “Short-beaked echidna, common echidna, spiny anteater”. 2010年5月9日閲覧。 [リンク切れ]
  5. ^ http://www.pensoft.net/journals/zookeys/article/3774/twentieth-century-occurrence-of-the-long-beaked-echidna-zaglossus-bruijnii-in-the-kimberley-region-of-australia

関連項目[編集]