ハッピーバースデー 命かがやく瞬間

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ハッピーバースデー〜命かがやく瞬間〜』(ハッピーバースデー いのちかがやくとき)は、青木和雄による児童書。1997年12月金の星社から刊行。以降、コミック化やアニメ映画化(1999年公開)、ドラマ化(2009年放映)もされており、2005年には文芸書版として刊行されている(文芸書版は『ハッピーバースデー』と改題されており、作者は青木和雄と吉富多美)。原作は65万部、文芸書版は50万部を突破。

書籍情報[編集]

金の星社版
1997年12月、青木和雄の『心の処方箋シリーズ』第1作として金の星社より刊行。
文芸書版
2005年刊行。タイトルが『ハッピーバースデー』に変更され、青木和雄と吉富多美の共作。幅広い年齢層に読んでもらいたい、静代の背景を知りたいという感想が多く寄せられたことから、原作に加筆・修正をしている。児童書版で詳しく描かれなかった母・静代の心の闇や、娘のあすかを愛せない理由も丹念に描いており、幅広い年齢層に読んでもらえるような内容になっている。
コミック版
上下2巻。児童書版を原作としており、作者は青木・吉富の連名。作画はオ・スギルが担当。
  • 『ハッピーバースデー 上』(初版:2005年12月、第8刷:2008年9月、ISBN 4-323-07066-7
  • 『ハッピーバースデー 下』(初版:2006年1月、第7刷:2008年9月、ISBN 4-323-07067-5

あらすじ[編集]

あすかは母・静代の精神的虐待を受け続けていたが、それでも「母に愛されたい」と思っていた。しかし、あすかの11歳の誕生日に兄・直人から暴言を吐かれ、その直後に母親の非情な言葉を聞いたショックから声を失ってしまう。「生まれてこない方がよかった」とまで思うほど追いつめられるあすかだったが、祖父母の無償の愛によって心の傷を癒し、人々との出会いによって多くの事を学び、成長していく。最終的には家族もあすかのことを大事に思うようになった。

登場人物[編集]

藤原 あすか(ふじわら あすか)
この物語の主人公。公立小学校の5年生(原作では転校時に進級)。日々母親から精神的虐待を受けており、心の苦しみから逃れるために喉をつまむ癖があり、喉にはそのために出来た痣がくっきり残っている。11歳の誕生日に兄から暴言を吐かれ、その直後に母親の「産まなきゃよかった」という非情な言葉を聞いたショックから声を失ってしまう。祖父母の元での療養や、新しい人々との出会いによって命の大切さを学び、心身ともに成長していく。
藤原 静代(ふじわら しずよ)
あすかの母親。旧名は「堀 静代(ほり しずよ)」。通訳と翻訳を請け負う会社で働いている。出来が良く自分の期待以上の答えを出してくれる直人と違い、出来の悪いあすかを愛することができず、あすかに児童虐待を行う。これは幼いころ両親が病気がちの姉の春野ばかりを心配し、実家の庭に静代の「誕生の木」だけが無いなど自分の方を向いてくれなかった事と、あすかが春野に雰囲気が似ている事がトラウマになっている。また、過去のトラウマの影響により、モモが嫌い。愛されないことに一番敏感になっているため、夫の母との比較に苦しむこともある。
藤原 直人(ふじわら なおと)
あすかの兄。レベルの高い私立中学に通っている。あすかのことを何一つ思っておらず、ある日軽い気持ちで妹に「お前、生まれてこなきゃよかったよな」と暴言を吐くが、橋本の言葉から傷つけてしまったことを知り、心から悔やむようになる。それ以降は改心し、自分(と静代)のせいで声を失ったあすかを救うために動き出す。また、自身の家庭のひずみから静代に反発するようになる。後にあすかの指摘を受け、ストレスで次々と退学する友達を見た事から自身の道を考え直し、静代の言う高校への内部進学はせず、単位制高校への進学を決める。
藤原 裕治(ふじわら ゆうじ)
あすかの父親。信託銀行に勤務し、名古屋に単身赴任をしている。「より高くより前へ」という考え方であり、自身もそう教えられて育ってきたため本人曰く「机に向かう以外は無駄な時間」だと思っている。マザコンな一面があり、静代と母を比較する事も多い。
堀(ほり)
あすかの祖父であり、静代の実父。ボランティアや畑仕事をしながら宇都宮でのんびり暮らしている。かつては高校の国語教師をしていた。自分たちの静代への愛情が足りなかったことが、あすかの苦しみに繋がっていると知り、申し訳ないと思っている。
堀 正子(ほり まさこ)
あすかの祖母であり、静代の実母。病弱だった長女の春野ばかりに目が向き、完全に静代を放任していただけではなく、寂しさで泣いていた静代を叱るなど、かなりきつく当たっていた。故に静代のことはよくわかっていない。彼女自身の静代に対する態度が悪影響をおよぼし、春野が孤独のまま死んでしまったことと、あすかへの虐待に繋がってしまった。夫同様に静代とあすかを苦しめてしまった事を後悔している。
堀 春野(ほり はるの)
静代の死んだ姉。容姿があすかに似ている。生まれつき心臓病を患っており、わずか16歳で他界している。穏やかな性格で、妹の静代のことも好きだったが、病気がちなために両親を独占する事が多く、静代には妬まれていた。庭に植えられている誕生の木はモモであり、それが静代のトラウマの対象になってしまっている。
橋本 敦子(はしもと あつこ)
あすかが通っていた桜小学校5年1組の担任。あすかの異変に気付き、内面のケアをしようとする。その事を心配して、あすかが転校した後も、手紙などであすかの祖父母と交流している。
金沢 順子(かなざわ じゅんこ)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の女子生徒。クラスにおけるいじめられっ子で、貧しい経済状況と貧弱で冴えない容貌から「カナキン」と呼ばれている。いじめの辛さから一度は死を考えるが、あすかの説得により思いとどまった。その後一度真知子をいじめたが、学級会を機にいじめを止めた。
野村 真知子(のむら まちこ)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の女子生徒。当初は他の生徒達とともに順子をいじめていたが、順子が学校からエスケープした一件の数日後に自分も順子と同じようにいじめられることになってしまう。
小林 大輔(こばやし だいすけ)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の男子生徒。男子の中で体が大きいリーダー的存在、真知子と共謀し順子をいじめ、クラスから追放したこともある。順子がエスケープした後自分のやったことの愚かさを知り後悔する。
浜本 晶(はまもと あきら)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の友達。クラス全体による順子へのいじめを見て見ぬふりをしてきたが、あすかの言葉により変わっていく。
アニメ版では「晶子(あきこ)」という名前に変更されている。
吉浦 茂(よしうら しげる)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の友達。男子。学級委員。あすかが黒沢先生に逆らい交流委員をひき受けたときのカッコよさに惹かれ、あすかのことが好きになった。
青田 祥司(あおた しょうじ)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の友達。男子。交流委員。
黒沢 修(くろさわ おさむ)
あすかの転校先の青葉小学校6年2組の担任。いわゆる事なかれ主義で、順子が他の生徒に対するいじめを嫌がって学校を脱走した際には、彼女の安否を気づかうよりも彼女に対する苛立ちのほうが先立っていた。また、順子へのいじめを助長するような発言さえしていた。教師でありながら涙もろく泣き出したりする事もあるため、クラスの児童たちには見放されている。
ドラマ版では、橋本の設定を引き継いでおり、あすかの理解者となっている。
杉本 めぐみ(すぎもと めぐみ)
あすかの転校先の青葉小学校と隣接している養護学校の児童。重い障害があり余命は短い。休み時間にあすかが養護学校に顔を見せるようになり、楽しみが増えた。アニメ映画版では苗字が「はなむら」となっている。
杉本 薫(すぎもと かおる)
めぐみの母親。めぐみの長い髪に毎朝美しい花飾りをつけている。あすかをピクニックに誘ったり、抱き合って涙を流すなど、あすかを実の娘のように優しく接する。
真田(さなだ)
めぐみが通う養護学校の男性教師。筋肉質な体躯とおおらかな性格の持ち主。余命の短いめぐみを常に心配している。
星 なつき(ほし なつき)
文芸書版に登場する人物。静代とは年下ではあるが彼女の上司を務めている。有能で、見事なまでの語学力を有している。静代の心の弱さを見抜いており、キツい物言いで接する。自身も母親から愛されなかった経験があり、自身とあすか、静代と実母を重ねて見ている。
ドラマ版にも登場する。

鍵となる設定[編集]

宇都宮の祖父母の家には、春野(モモ)・直人(ナシ)・あすか(アンズ)の誕生記念の木が植えてあるが、静代の木はない。静代が生まれた日に春野の手術があり木を植えることができなかったというのが理由であり、その後も改めて植えることもしなかったことから、いかに彼らが春野のことにばかり目がいっていたかを表している。文芸書版では、あすかが療養を終えた後、静代の誕生の木としてコブシを植えようとする描写が登場する。

静代は一度だけ両親との団欒を過ごしたことがあったが、その際入院中の春野の危篤の連絡を受けた静代は、自分と両親との数少ない団欒を両親が病院に行く事でぶち壊されるのが嫌だったため、両親にそのことを告げなかった。結果、春野は家族に看取られず独りで亡くなり、この団欒を最後に静代は好物だった水蜜桃を食べなくなり、モモが嫌いになる。

アニメ映画[編集]

1999年に公開。

スタッフ[編集]

  • 原作:青木和雄
  • 監督:出崎哲
  • プロデューサー:桂壮三郎、出崎哲
  • 脚本・キャラクターデザイン・絵コンテ:四分一節子
  • 脚色原案:小出一巳
  • 演出:棚橋一徳
  • 作画監督:小林ゆかり
  • 美術監督:脇威志
  • 色彩設定:鈴城るみ子
  • 撮影監督:升沢達也
  • 音楽:中島優貴
  • 音響監督:清水勝則
  • アニメーション制作:マジックバス

キャスト[編集]

原作との相違点[編集]

  • 原作にあるあすかが喉をつまむ描写が登場しない。
  • 原作ではあすかが宇都宮を発つ直前にロングヘアからショートカットに変える描写があるが、映画ではカットされ、最初からショートカットになっている。
  • 原作では静代が仕事の都合からあすかが転校する設定があるが、映画では黒沢が登場せず、またあすかがいじめられる描写も登場する。
  • 原作で登場した祖父の死の描写がカットされている。またあすかの父である祐治も登場しない。

ラジオドラマ[編集]

2007年1月22日から同年1月26日まで、NHK-FM青春アドベンチャーで『ハッピーバースデー』というタイトルで放送された。ストーリーは、文芸書版を元にしている。

スタッフ[編集]

  • 原作:青木和雄・吉富多美
  • 脚色:山下君子
  • 音楽:内山周作
  • 演出:小島史敬
  • 音響効果:三谷直樹
  • 技術:長谷川忠昭
  • 制作統括:青木信也

キャスト[編集]

舞台[編集]

株式会社フリーダムエンタテイメント(演劇集団フリーダム)によって、2007年7月13日の九州の学校巡演を皮切りにスタートした。この作品には、ミュージカル版とストレートプレイ版が存在し、ミュージカル版は児童書版がベースとなっており、ストレートプレイ版は文芸書版がベースとなっている。2008年11月に第1回福岡市民参加型ミュージカルとして始まった市民参加型ミュージカルは、2010年に第2回福岡市民参加型ミュージカル、2011年には東京都民参加型ミュージカルとして発展している。

スタッフ[編集]

  • 原作:青木和雄・吉富多美
  • 脚本・演出:坂口聡
  • 振付:氷室敬子、中島GEN元治、中島美芽、落満信幸
  • 美術:市川洋
  • 照明:釘宮照良
  • 音響:吉岡資朗
  • SE編集:余瀬正
  • 大道具:ジャンクランド
  • 小道具:吉川友加里、北村美弥子
  • 衣装:浜川園美、吉田周未、宮地悦子
  • 稽古場進行:しおん
  • 写真・ビデオ録画:おとじろう
  • 表方:松尾知美、山本佳代子、山田菅子、豊島絹美
  • 出演協力:ヴァンズエンタテイメント福岡、A-プロジェクト、j-jack、第一薬科大学付属高等学校(芸能コース)
  • 協賛:株式会社ふくや
  • 制作協力:有限会社花クラヤ
  • 制作総指揮:清水聖
  • 企画・制作:株式会社フリーダムエンタテイメント

キャスト[編集]

  • 藤原あすか:西村優
  • 藤原直人:乾弘満
  • 藤原静代:しおん
  • 祖父:杉山春行
  • 祖母:吉田周未
  • アンズの精:浜川園美
  • モモの精:山田彩子
  • ナシの精:宮地悦子
  • トマトの精:工藤美幸
  • 青虫の精:隈井理絵
  • メリー:別府実紗紀
  • 草の精:井村智美
  • 草の精:平田愛咲
  • 草の精:大谷美咲
  • 草の精:富永妃美子
  • 草の精:濱田亜邪
  • 草の精:野中めぐみ
  • 草の精:野中ななみ
  • 小林大輔:北村美弥子
  • 宏:平田愛咲
  • 光男:坂本一徳(坂本瑠依)、井村智美
  • 晶子:大谷美咲、富永妃美花
  • かおり:濱田亜邪
  • 金沢順子:吉川友加里
  • 校長先生:津留崎義人
  • 橋本先生:今給黎早
  • 順子の父:中村大悟
  • 幼少期の春野:野中めぐみ
  • 幼少期の静代:野中ななみ

朗読劇[編集]

毎年11月の児童虐待防止推進月間及び春にも別の会館で行われている。出演者はすべて賢プロダクション所属の声優および付属養成所の研修生。この劇の収益金は「神奈川子ども未来ファンド」に寄付されている。

公演日[編集]

キャスト[編集]

オーディオブック[編集]

2009年11月20日よりオーディオブック配信サービスのFeBeより配信。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

テレビドラマ[編集]

2009年11月21日の21:00 - 23:10 (JST) に、フジテレビ開局50周年3夜連続スペシャル『探そう!ニッポン人の忘れもの』第2夜の位置付けで、かつ『ハッピーバースデー』というタイトルのスペシャルドラマとして『土曜プレミアム』枠内で放送された。視聴率10.9%。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

  • 藤原あすか:大橋のぞみ
    主人公。母親の精神的虐待を受け続け、声を失う。
  • 藤原静代:木村佳乃
    あすかの母。幼少時のトラウマからあすかに虐待を加え続けている。
  • 藤原直人:鈴木宗太郎
    あすかの兄。中学受験を控え勤勉に励んでいる。母からの愛情を一身に受け育つが、あすかが声を失ったことをきっかけに次第に自身の家庭のひずみに気づき、あすかを救おうと祖父母と共に奮闘する。
  • 藤原裕治:勝村政信
    あすかの父。現在単身赴任中。仕事第一主義で家庭のことは妻に担当させている。妻同様、あすかのことは二の次に考えている。
  • 堀正子:加賀まりこ
    あすかの祖母(静代の母)。
  • 堀道夫:伊東四朗
    あすかの祖父(静代の父)。
  • 堀春野:大橋のぞみ※二役主演
    静代の姉。静代が子供の頃に他界している。
  • 黒沢修:田中裕二爆笑問題)※友情出演
    あすかが通う小学校の教師。あすかの異変に気づき、しゃべれないのにあすかが必死に「母親に愛されるようないい子になりたい」と口を動かしていたことを静代に伝える。
  • 野々宮大悟:三國連太郎特別出演
    あすかの祖父母の近所に住む老人。草笛が得意。あすかからは「ノノじい」と呼ばれ慕われている。
  • 星なつき:星野真里
    静代が勤務する会社の上司。
  • 前川泰之小林隆岸博之天田暦浜田道彦ふくまつみ仲野元子加藤四朗川口圭子水野由結、Riccardo.B

原作および文芸書版との相違点[編集]

  • 文芸書版が原作となっているが、金沢順子、野村真知子、浜本晶、杉本一家など、青葉小学校に関連する人物は登場しない。
  • あすか・直人の年齢設定が引き下げられており、それぞれ小学四年生・小学六年生に変更。また春野が没した年齢もあすかと同じ10歳になっている。
  • 静代の故郷が宇都宮から長野県上田市に変更。
  • 「誕生の木」の設定が登場しない。このためあすかが静代の本音が綴られたノートを発見し、ともに読んだことから道夫・正子が静代の心の闇を知る設定となった。なお原作ではノートを読むのはあすかのみ。
  • 橋本が登場せず、黒沢が橋本の役割を引き継いでいる。
  • 文芸書版ではなつきは静代を除く藤原家の人物と交友がないが、ドラマでは登場しない橋本に代わって倒れたあすかの看病を手伝った事から直人と交友を持つようになる。
  • 祖父・道夫の死が野々宮になっている。

朗読×芝居×映像×音楽[編集]

2016年11月9日から2016年11月15日にアトリエファンファーレ高円寺にて公演。MASTERPIECE THEATER企画制作、株式会社スタンダードソング主催で、朗読・芝居・映像・音楽の要素を融合した演出で舞台化された。

スタッフ[編集]

  • 原作:青木和雄・吉富多美
  • 演出:横山仁一
  • 上演台本・監修:宇治川まさなり
  • 企画制作:MASTERPIECE THEATER
  • 協賛:一般社団法人 花のある街振興会
  • 主催:株式会社スタンダードソング

キャスト(公式HP配役公表分)[編集]

  • 藤原あすか:荒井レイラ
  • 藤原静代:武者真由 
  • 橋本先生:戸島花 (ダブルキャスト、GREEN公演)

出演者(公式HP配役非公表分)[編集]

  • 重友健治
  • 鈴木秀和
  • 綾津ユリ
  • 大日方絢子(ダブルキャスト、GREEN公演)
  • 織田あいか(ダブルキャスト、BLUE公演)
  • 木下珠希
  • 宍倉香織
  • 鈴木唯
  • 富田未来(ダブルキャスト、BLUE公演)
  • 本郷まい
  • 茂木綾音
  • 山﨑絵里佳
  • 小林篤
  • 田邊敬太

脚注[編集]

  1. ^ 当初引き続き甲斐田が出演予定だったが、甲斐田自身の都合で降板となった。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]