ハザードマップ

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ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものである。予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が既存の地図上に図示されている。

ハザードマップを利用することにより、災害発生時に住民などは迅速・的確に避難を行うことができ、また二次災害発生予想箇所を避けることができるため、災害による被害の低減にあたり非常に有効である。

日本では、1990年代より防災面でのソフト対策として作成が進められているが、自然災害相手だけに発生地点や発生規模などの特定にまで及ばないものも多く、また予測を超える災害発生の際には必ずしも対応できない可能性もある。掲載情報の取捨選択、見やすさ、情報が硬直化する危険性などの問題も合わせて試行錯誤が続いている。

2000年有珠山噴火の際に、ハザードマップに従い住民・観光客や行政が避難した結果、人的被害が防がれたことで注目された。

また、2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、100年に一度の大災害に耐えられるとされていた構造物ですら災害を防ぐことができなかった結果を受け[1]、国や地方自治体は構造物で被害を防ぐよりも、人命を最優先に確保する避難対策[2]としてハザードマップ に注目している。そして新たなハザードマップの作成、ならびに従来のハザードマップを大幅に見直し、ハザードマップの策定過程に地域住民を参画させることで、地域特性の反映や、住民への周知、利活用の促進、さらには地域の防災力の向上を見込んでいる[3]

主なハザードマップの種類と表示内容[編集]

  • 河川浸水洪水(破堤等の河川氾濫水害治水
    • 主に河川の氾濫を想定した「洪水ハザードマップ」を言うことが多い。このマップは、下記の浸水想定区域図に、地方自治体が、避難場所等を書き加えたものである。
    • 水防法(平成13年7月改正)に基づき、堤防が決壊した際の浸水想定区域およびその際の水深を示した「浸水想定区域図」が作成される。
    • 「水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(法律第37号(平17年5月)」により、浸水想定区域の指定対象河川の拡大及び浸水想定区域における警戒避難体制の充実等がはかられた(浸水想定区域の指定対象河川を主要な中小河川まで拡大し、特別警戒水位の到達情報を周知等する。浸水想定区域内の主として高齢者等が利用する施設への洪水予報等の伝達及び地下施設における避難のための計画の作成等により、警戒避難体制を充実)。
  • 土砂災害
    • 土石流の発生渓流、がけ崩れの危険地など
    • 土砂災害防止法(第7条:警戒避難体制の整備等)に基づき、都道府県知事による土砂災害警戒区域の指定が行われ、これを地図上に平面的に図示した「土砂災害警戒区域図」が作成される。
    • 「水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(法律第37号(平17年5月)」により、災害時要援護者(災害弱者)の利用する施設への対応(これら施設への土砂災害情報の伝達方法を市町村地域防災計画に規定)や、土砂災害ハザードマップの配布が義務化(土砂災害情報等の伝達方法、避難場所などの周知の徹底)された。
  • 地震災害
    • 液状化現象が発生する範囲、大規模な火災が発生する範囲など
  • 火山防災
    • 火口が出現する地点(範囲)や、溶岩流火砕流火砕サージの到達範囲、火山灰の降下する範囲、泥流の到達範囲など(火山災害予測図参照)
    • 火山ハザードマップの利用には、特有の注意点がある。マップに示される火山の諸現象は、一瞬(短時間)で発生するものではなく、時間とともに変化しながら発生する。また火口の位置も予測であり、従って泥流等の流下範囲も予測である。
  • 津波浸水・高潮
    • 浸水地域、高波時通行止め箇所など

このほか、特定の災害を対象とせず、避難経路や避難場所、防災機関等の情報を表した地図を「防災マップ」と呼ぶことがある。

ハザードマップの例[編集]

有珠山火山防災マップ[編集]

2000年3月に有珠山噴火が発生した。この噴火では、3月29日に気象庁より「緊急火山情報」が発表され、これを受けた自治体(伊達市壮瞥町虻田町)は、危険地区の住民に対し「避難指示」を発令した。

この噴火では、金比羅山火口群から熱泥流が流出し温泉街を埋めるなど、甚大な被害が発生した。しかしながら、一人の死傷者も出ていない。これは第一に日本で初めて事前予知に成功したこと、第二に「有珠山火山防災マップ」(平成7年度版)が作成・公表されており、第三に各自治体がこの防災マップに基づいて避難指示を出し、第四に住民の迅速な行動があったためといわれている。なおこの噴火では、最大で15,815名が避難勧告・指示の対象となった。

2002年3月、有珠火山防災会議協議会(災害対策基本法第17条に基づく。伊達市(事務局)・虻田町・壮瞥町)と、豊浦町・洞爺村の5市町村により平成7年度版の「有珠山火山防災マップ」を新しく改訂した。これは2000年の噴火により火口の地形変動があったなどのため、火砕流到達範囲などの危険区域が変わったことなどによる。このマップは、5市町村のほとんどの世帯に配布された。

富士山火山防災マップ[編集]

富士山火山防災マップ

本州の真ん中にある富士山が噴火した場合社会に与える影響が大きい。そこで国の防災機関や地方自治体を中心に学識経験者などが集まって「富士山ハザードマップ検討委員会」を設立し、万が一の際の被害状況を想定して避難・誘導の指針とした。この「富士山火山防災マップ」では過去の富士山の噴火を参考にしながら、様々な火山災害を予想している。その中で火山灰被害の例として宝永噴火貞観噴火の被害実績が詳細に検討されている。ハザードマップについては、中間報告(2002年6月)と検討報告書(2004年6月)の2回、調査結果をまとめた報告書が出されており、内閣府の防災部門のホームページで公開されている。

ハザードマップ整備に伴う問題点[編集]

上記のとおりハザードマップの作成は防災面で重要であるが、その一方で作成は思うように進んでいない。これは以下の理由による。

  • 作成費用がかさむ。しかし、これは地形図などの基礎的なデータをたとえば市町村単位で一から作成するのではなく、都道府県単位で作成したあと、市町村単位で各々の分を作成することで軽減される。
  • かつてはハザードマップで「危険度高」とされた地域からの、「公表されると不動産価値の低下などの損害が起きる」との懸念があった。しかし人命優先やリスクを正しく知るという観点、危険度高地域から行政が適切な対応をしているかの監視が可能になる点、ハザードマップの有用性の認知により、この懸念は解決しつつある。
  • 市町村の施設や避難所を兼ねた地域の公民館等に掲示し周知を図る例が多いが、平常時には目をとめる人は少なく、地域住民への浸透度が高いとは言えない状況にある。新聞の折込広告として配布した自治体も存在したが、反響はほとんど無かったという。
  • どの種類のハザードマップも、基本的に想定される外力(災害条件)を入力条件として、算定される被害の最大包絡処理を行っている。このため、マップに記載した地域全体として見ると、想定以上の相当に過大な表現になっていることに注意が必要であるが、ほとんどの人々は正しく「過大である」という意味を認知・理解できていない。つまり、マップに記載の想定は、「想定の外力によって生じる被害であろう」と勘違いしている場合が多い。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

総合
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洪水
土砂災害
火山ハザードマップ
林野火災
事件・事故
その他の災害