ハウチワカエデ

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ハウチワカエデ
Acer japonicum Japan1.JPG
福島県会津地方 2011年5月
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: ムクロジ目 Sapindales
: ムクロジ科 Sapindaceae
: カエデ属 Acer
: ハウチワカエデ A. japonicum
学名
Acer japonicum Thunb.[1]
シノニム

本文参照

和名
ハウチワカエデ(羽団扇楓)

ハウチワカエデ(羽団扇楓[2]、学名:Acer japonicum)はムクロジ科カエデ属[注 1]落葉高木。同じ株に両性花雄花が生ずる雄性同株[3]。別名、メイゲツカエデ[2]カエデのなかまの中でも掌状の葉が特に大きいのが特徴である。

名称[編集]

和名ハウチワカエデの名の由来は、カエデのなかまの中でも葉が特に大きく、これを天狗が持つ羽で出来た団扇(羽団扇)に例えたものである[4][2][5]。別名のメイゲツカエデ(名月楓)は、秋の名月の光で紅葉が映えて、落ちるのも見えるという意味が込められている[2][6]

そのほか様々な別名があり、アカバナハウチワカエデ[1]、ネバリハウチワカエデ[1][7]、オオメイゲツ[1][8][9]、シナノハウチワカエデ[1][8][9]、ケハウチワカエデ[1][10]、コバコハウチワ[11]、モミジハウチワ[12]などとも呼ばれている。中国名では、羽扇槭(羽扇楓)とも書かれる[1]

分布と生育環境[編集]

日本の北海道および本州の中部以北に分布し[4]、日本国外では朝鮮半島に分布する[4]。山地の中腹から尾根にかけて生え[4]、低山帯から亜高山帯下部の山地の谷間などに広く自生する[5][3]。他のカエデ類とより寒冷に強く、標高の高いブナ帯に生育する[5]

観賞のため人の手によって、園芸種が庭などにも植えられている[4]

特徴[編集]

落葉広葉樹の高木で、樹高は5 - 10メートル (m) [2]、高いもので15 mに達する[5]樹皮は青灰色や灰白色、灰褐色で若木はなめらかである[2][5]、成木の樹皮は浅く裂ける[13]。今年は赤褐色または紅紫色で[4]、花時のみわずかに白色の長軟毛を散生させるが、後に落ち無毛で光沢がある[13]。鱗片葉は長さ2.5 - 3センチメートル (cm) で紅紫色を帯びる。

対生し、葉身は長さ7 - 15 cm、幅5.5 - 12 cm、掌状に9 - 11浅裂・中裂する[4][2][5]。裂片の先端は鋭くとがり、基部は心形になり、葉縁には重鋸歯がある[2]。花時の葉両面には白色の軟毛があるが[6]、成葉では裏面の脈上や脈腋に毛が残る。葉柄は葉身の4分の1から2分の1の長さで、2 - 4 cmになり[3][14]、葉柄裏には白い毛がある[5]。秋10 - 11月になると、葉全体が一度には色づかず、葉の先から黄色や橙色、赤色に色づいて紅葉(黄葉)が変化に富んで美しい[2][5][3][14]

花期は4 - 5月[2]。本年枝の先に、若葉と同時に散房花序を出して下垂し、暗紅紫色の花をつける[2][6]。花は1つの花序に10 - 15個つき、雄花両性花が混生する[2]萼片は長さ6 - 7ミリメートル (mm) で暗紅色、花弁は萼片より短く淡黄色でそれぞれ5個、雄花の雄蕊は長さ5 mmで8個あり、葯は黄色。両性花の子房には黄白色の軟毛がある。

果期は10月[2]果実翼果で2個の分果からなり、分果の長さは2 cmになる[2]。秋の紅葉が見られる頃に、翼果も熟す[4]

冬芽は大きめで無毛、芽鱗は8枚あり、基部は膜質の芽鱗に包まれ、鱗片の内側に長い毛がある[13]。仮頂芽は2個だが1個のものもある[13]。側芽は枝に対生する[13]。冬芽のわきにある葉痕は細く、維管束痕は3個ある[13]

シノニム[編集]

園芸品種など[編集]

園芸種が多数あり、庭木として観賞される[4]

エゾメイゲツカエデ - Acer japonicum Thunb. f. microphyllum(Koidz.) Rehderの品種のほか、園芸品種では、葉が全裂するマイクジャク(舞孔雀)や、カサド、ココノエ、マツヨイ、サヨシグレなどがある[3][15]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ APG体系ではムクロジ科に分類されるが、古いクロンキスト体系エングラー体系ではカエデ科に含められていた[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 20.
  3. ^ a b c d e 『日本の野生植物 木本II』p.11
  4. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 138.
  5. ^ a b c d e f g h 松倉一夫 2009, p. 98.
  6. ^ a b c 邑田仁・米倉浩司編 2013, p. 175.
  7. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. f. viscosum Hayashi” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  8. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. var. insulare (Pax) Ohwi” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  9. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. var. circumlobatum (Maxim.) Koidz.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  10. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. f. villosum (Koidz.) H.Hara” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  11. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. var. kobakoense (Nakai) H.Hara” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  12. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer japonicum Thunb. var. stenolobum H.Hara” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月23日閲覧。
  13. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 109.
  14. ^ a b 『樹に咲く花 山溪ハンディ図鑑4』pp.328-329
  15. ^ 米倉浩司・梶田忠(2003-) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]

  • 佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本II』(1989) 平凡社
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、109頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 西田尚道監修 学習研究社編 『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂ベストフィールド図鑑 5〉、2000年4月7日、20頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
  • 平野隆久監修 永岡書店編 『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、138頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 松倉一夫 『葉・花・実・樹皮で見分ける! 樹木観察ハンドブック 山歩き編』JTBパブリッシング〈るるぶDo!ハンディ〉、2009年、98頁。ISBN 978-4-533-07564-3 
  • 邑田仁米倉浩司 編 『APG原色牧野植物大図鑑II』(初版)北隆館、2013年3月25日、175頁。ISBN 978-4-8326-0974-7 
  • 茂木透、石井英美他『樹に咲く花(離弁花2) 山渓ハンディ図鑑4』(2000) 山と渓谷社

関連項目[編集]