ノボリリュウ

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ノボリリュウ
分類
: 菌界 Fungus
: 子嚢菌門 Ascomycota
: チャワンタケ綱 Pezizomycetes
: チャワンタケ目 Pezizales
亜目 : チャワンタケ亜目 Pezizineae
: ノボリリュウタケ科 Helvellaceae
: ノボリリュウ属 Helvella
: ノボリリュウ H. crispa
学名
Helvella crispa
(Scop.) Fr.
和名
ノボリリュウ(昇龍)、

ノボリリュウタケ(昇龍茸)

英名
White saddle
Elfin saddle
Common helvel

ノボリリュウもしくはノボリリュウタケ(昇龍・昇龍茸、学名:Helvella crispa)はチャワンタケ亜目ノボリリュウタケ科ノボリリュウ属に属するキノコ。近縁種に柄が細く、溝のないアシボソノボリリュウHelvella elastica)、傘の表面が黒色、茎が汚白色のクロノボリリュウHelvella lacunosa)がある。

分布[編集]

北半球の雑木林[1]に分布し、ユーラシア北アメリカに分布し、日本では離島など一部を除く全土で発生する。

形態[編集]

頭部径は3~5㎝[1]

頭部表側は胞子ができる子実層面である[2]。胞子はこの子嚢の中でつくられ、胞子は楕円形で平滑であり、内部に1個の大きな油球があり、無色[1][3]。表面は平滑で淡黄土色~淡クリーム色[2][3]。頭部は膜質で、中央で2つに折れ曲がり、馬の鞍の形[2]やハート形をしている[4]。しかし、しばしば歪み波打ち、形状はやや不規則[2]で、縁はときに切れ込み波打ち[5]、形はしわが多くはっきりしない。あえていうならばの形をしたのような形。

頭部裏側は表側と同色で、はじめ軟毛がある[5]

の高さは8~10㎝[1][3]。柄は中が空洞すなわち中空で[1][2]、顕著な縦じわが根元まで何本も走っている[2][4][3][1][5]。このしわが深いため、数本の柄が集まっているように見える[1]。色は頭部と同色で[2]類白色[1][5][3]、上下同大または下方に太い[2]つばつぼはなし[1]

は表面と同色であり、肉はごく薄く、弾力があり、無味無臭[2]

生態[編集]

8月~10月頃に湿った落葉樹林や庭先で発生。まれに春に発生することもある。

夏~秋に単生~群生[5]腐生菌[1]または菌根菌[4]

名称[編集]

本種はノボリリュウタケともノボリリュウとも呼ばれる。和名の由来は、鞍形の頭部と縦方向に深いしわひだのある柄のある様子が、勢いよく天に昇る龍を想像させるから。そのほか地方名として、「ずきんかぶり」、「ぼっちきのご」というものがある[5]

学名のcrispaは、ラテン語形容詞で、「しわ」または「巻き毛」の意味。

利用[編集]

pickled

優れた食菌で、味には癖がなく加熱すると歯切れが良くなる。白ワインハーブを使った西洋料理におすすめのキノコである[3]。ただし、微量ながらジロミトリンが検出されているため、軽いヒドラジン中毒を起こすため、大量に食べたり、生で食べることは控えるべきであり[5]、要加熱である[2]味噌汁お吸い物炊き込みご飯酢の物和え物煮込み雑煮鍋物天ぷらフライ佃煮茶碗蒸し塩焼き味噌焼きたれ焼きなど、主要な和食に合う。また、ポタージュコンソメ煮込みピクルスマリネピラフコロッケグラタンピザシチューオムレツホイル焼きなど、洋食に大いに合う。さらに中華スープチャーハン油炒め煮込むあんかけギョーザシュウマイなどの、中華料理にも合う[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 小宮山勝司、ヤマケイポケットガイド⑮『きのこ』、山と渓谷社、2000年、220頁
  2. ^ a b c d e f g h i j 柳沢まきよし、ポケット図鑑『新版 日本のキノコ275』、文一総合出版、2022年、299頁
  3. ^ a b c d e f g 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄、山渓カラー名鑑『増補改訂新版 日本のきのこ』、山と渓谷社、2011年、557・604頁
  4. ^ a b c 保坂健太郎、小学館の図鑑NEO『[改訂版]きのこ』、小学館、2017年、133頁
  5. ^ a b c d e f g 長沢栄史、増補改訂フィールドベスト図鑑13『日本の毒きのこ』、学研、2009年、234頁