ノウゼンカズラ
ノウゼンカズラ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() ノウゼンカズラ
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Campsis grandiflora (Thunb.) Loisel.[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
Bignonia grandiflora[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Chinese trumpet vine[2] Chinese trumpet creeper[2] |
ノウゼンカズラ(凌霄花[3][4][5][6][7]、Campsis grandiflora)はノウゼンカズラ科の落葉性のつる性木本[8]。夏から秋にかけ橙色あるいは赤色の大きな美しい花をつけ、気根を出して樹木や壁などの他物に付着してつるを伸ばす。
中国原産[9][6][7][4]で平安時代には日本に渡来していたと考えられる[9][7]。夏の季語[6][4]。
名称[編集]
古名は「ノウセウ(陵苕[4])」または「ノセウ」で、それが訛って「ノウゼン」となった[10][4]。蔓が他の木に絡み攀じ登るため「カズラ」の名がついた[10]。また、古くは「まかやき(陵苕)」とも呼ばれた[11]。
「ノウセウ」については凌霄(りょうしょう)の朝鮮読み「ヌンソ」の訛りとする[10]説もある。
別名に「ノウゼン」、「ノショウ」がある[8]。「のうぜんかつら」と表記される場合もある[12]。
漢名の凌霄花は「霄(そら)を凌ぐ花」の意で、高いところに攀じ登ることによる命名[10]。漢詩では他物に絡むため愛の象徴となる[10]。また、「陵苕」(リョウチョウ)も本種を表す[13]。現代中国語では「紫葳」(拼音 : zǐ wēi)とも呼ばれる[14]。
花の形がトランペットに似ていることから英語では「トランペット・ヴァイン」(trumpet vine[2])、「トランペット・クリーパー」(trumpet creeper[2])あるいは「トランペット・フラワー」と呼ばれる。
特徴[編集]
蔓性落葉低木[7][1][4]で、花期は7-8月[6][15][9][1]。
蔓は長さ3mから10mほどまで成長し[7][4]、他のものに吸着する付着根(木質の気根[2][15])を出して這い登る[6][9][15]。 幹はフジと同じように太くなる。樹勢が非常に強く丈夫な花木であり、地下茎を延ばし蘖を周囲に芽生えさせ、繁殖する。
葉は奇数羽状複葉で対生する[6][7]。小葉は2-6対[6](5-13枚[1])、長さは3-7cmで表裏面ともに無毛[6][1]、幅は2-4cm[1]、縁には粗い鋸歯がある[6][1]。柄は無柄[1]。側小葉は卵形ないし広卵形または楕円形で、その表面は濃緑色で光沢があり、裏面は帯白緑色[1]。先端は鋭頭または鋭尖頭で基部は広い楔形[1]。側脈は5-7対[1]。
枝先に円錐花序を萌出し、直径6-7cmの橙黄色の花を対生する[6]。花房は垂下し[2]、花冠は広い漏斗型で、先端は5裂し平開する[6]。雄蕊は4本のうち2本が長い[6]。日本では結実しにくい[6]。花は暖地では晩夏から秋にかけ大量に形成される[2]。 落花すると、蜜がたれ周りを湿らすほど。その蜜にメジロや蜂が集まってくる。その蜜は毒性があるといわれるが、根拠のない俗説・風評である。
利用[編集]
古くから観賞用に植えられており、庭園、公園などに庭木として利用される[6][1]。日本での植栽地は本州東北地方以南で日当たりと水捌けがよい肥沃地に生育する[7]。寒さを嫌うため植え付けは3月下旬から4月上旬にかけ行われる[7]。6月から7月上旬にかけ挿し木で殖やされる[7]。また、樹勢が強く、よく成長するため落葉期の2月に前年の枝を全て切り落とし、幹だけにする整姿剪定が行われる[7]。日光不足では花がつかず、蔓は固定していないと冬に枯れてしまう[7]。近年では赤花や黄花も作出されている[7]。長雨で蕾が落ちやすい[16]。
花や樹皮は漢方薬では利尿や通経に使われる。園芸品種が複数存在し、ピンクや黄色などの花色もある。新梢に房となって花が枝元から次々に咲き、花は毎日のようにすぐに散る。花が終わった新梢をそのままにしておくと、樹の姿が乱れ、樹勢が衰えるので適切な剪定が必要。鳥媒花であり、ハチドリが空中をホバリングしながら嘴を花の中にさし込んで蜜を吸う。
毒迷信[編集]
上記、特徴でも記されているように本種には古来より有毒であるとされる迷信がある。中には「ノウゼンカズラの花を触った手で目をこすると失明する」などとする物まである。しかし実際には無毒であり、少なくとも言われているような簡単に失明事故を起こすような強毒性は有していない。何故このような有毒迷信が伝えられるようになったのか詳細な迷信の由来などは定かではない。一説には花の色や形が似ていて実際に猛毒であるキダチチョウセンアサガオとの混同ではないかとする説もあるが、キダチチョウセンアサガオは葉の形も樹形も葉の大きさもさらには花の大きさもノウゼンカズラとは全く異なる様相であり、果たしてそれとの混同が有りうるのか疑問である。
また、同じように無毒であるが古来より有毒であるとされた植物は他にも複数あり、中で特に有名な例にドウダンツツジがある。ノウゼンカズラもドウダンツツジも実際は無毒であるにもかかわらず、1970代頃までの古い物図鑑や百科事典などでは有毒と記されていたものが多く存在した。
作品[編集]
正岡子規の俳句に「家毎に凌霄咲ける温泉(いでゆ)かな」がある。
近縁種[編集]
ノウゼンカズラ属は本種ノウゼンカズラ C. grandiflora と、アメリカ合衆国南東部原産のアメリカノウゼンカズラ(C. radicans)、およびこれらの雑種ノウゼンカズラ ‛マダムガレン’ C. × tagliabuana からなる。アメリカノウゼンカズラの花は中国系ノウゼンカズラより小ぶりで細長く、濃い赤橙色。
ノウゼンカズラ ‛マダムガレン’[編集]
ノウゼンカズラ ‛マダムガレン’ (C. × tagliabuana 'Madame Galen'[2]、カンプシス ‛マダムガレン’[16]、カンプシス×タグリアブアナ ‛マダムガレン’[17])は C. grandiflora と C. radicans の雑種で、蔓性の耐寒性木本植物[16]。樹高は5m[16]から10m[17]。花期は6-9月で直径5cmの橙色の花を咲かせる[16]。喇叭形の花房が下垂する[17]。原種より剛健で生育は旺盛、日向と水捌けの良い用土を好む[16]。雨や曇りが続いても蕾は落ちない[16]。小葉は7枚以上で、鋸歯のある細い卵形[17]。
ギャラリー[編集]
脚注[編集]
- ^ a b c d e f g h i j k l 馬場, p.369
- ^ a b c d e f g h i j k 『新・花と植物百科』, p.515
- ^ 『漢字に強くなる 難読漢字辞典』,p.25
- ^ a b c d e f g 『広辞苑』, p.2188
- ^ 加納, p.127
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 『山溪カラー名鑑 日本の樹木』, p.670
- ^ a b c d e f g h i j k l 川原田, p.158
- ^ a b 『難読誤読植物名漢字読み方辞典』、p.37
- ^ a b c d 鈴木, p.39
- ^ a b c d e 加納, p.130
- ^ 『広辞苑』, p.2630
- ^ “【徳島市】「のうぜんかつら」の花が見ごろ”. 徳島県観光サイト 阿波ナビ. 2014年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月15日閲覧。
- ^ 『漢字源』, p.1324
- ^ Weblio日中中日辞典 紫葳の意味
- ^ a b c 『ポケット版 学研の図鑑2 植物』, p.92
- ^ a b c d e f g 山田, p.108
- ^ a b c d 『新・花と植物百科』, p.217
参考文献[編集]
- 英国王立園芸協会(責任編集:Christopher Brickell『新・花と植物百科(New Encyclopedia of Plants and Flowers)』監訳:塚本洋太郎)、同朋舎、2001年3月15日、217,515頁。ISBN 4810426572。
- 新村出『広辞苑 第六版』岩波書店、2188,2630頁。ISBN 9784000801218。
- 学研辞典編集部『漢字に強くなる 難読漢字辞典』(初版)GAKKEN、2000年11月14日、25頁。ISBN 405300439X。
- 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年1月10日、127,130頁。ISBN 9784381022004。
- 林弥栄『山溪カラー名鑑 日本の樹木』山と溪谷社、1985年9月1日、670頁。ISBN 4635090175。
- 鈴木庸夫『葉 実 樹皮で確実にわかる 樹木図鑑』日本文芸社、2005年。ISBN 4537203544。
- 川原田邦彦『花色・仲間・落葉・常緑で引ける 庭木・植木図鑑』日本文芸社、2006年4月28日、158頁。ISBN 4537204389。
- 山田幸子『花色図鑑』講談社、2003年3月27日。ISBN 4062109905。
- 馬場多久男『葉でわかる樹木』信濃毎日新聞社、1999年12月10日、89,369頁。ISBN 478409850X。
- 高橋秀男 監修『ポケット版 学研の図鑑2 植物』学習研究社、2002年4月10日、92頁。ISBN 4052014863。
- 藤堂明保、松本昭、竹田晃、加納喜光『漢字源』(改訂第5版)GAKKEN、1324頁。ISBN 9784053031013。
- 日外アソシエーツ『難読誤読植物名漢字読み方辞典』(初版)日外アソシエーツ、2015年2月25日、37頁。ISBN 9784816925221。