ネルソン・バンカー・ハント

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ネルソン・バンカー・ハント
生誕 1926年2月22日(88歳)
アーカンソー州エル・ドラド, アメリカ合衆国
国籍 アメリカ合衆国
職業 石油・採鉱業
競走馬オーナー
政党 共和党 (アメリカ)
H. L. ハント(父)
ライダ・バンカー(母)
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ネルソン・バンカー・ハント(Nelson Bunker Hunt、1926年2月22日 - )はアメリカ合衆国の石油会社役員。もとは億万長者であったが、弟のウィリアム・ハーバート・ハント (William Herbert Hunt) とともに銀の世界市場の買い占めを図り、これに失敗して破産したことで知られる[1]。サラブレッド競走馬のブリーダーとして成功している[2]

人物[編集]

アーカンソー州エル・ドラドに生まれ、現在テキサス州ダラスに在住[3]。石油王のH.L.ハントが父親、アメリカン・フットボール・リーグカンザスシティ・チーフスの創設者であるラマー・ハント (Lamar Hunt) は弟。

キャリア[編集]

ハントは、のちにムアンマル・アル=カッザーフィーによって国有化されたリビア油田の発見と開発に大きく関わった[4]。 ハントは北アフリカの石油開発事業を行うタイタン・リソーセズ社(Titan Resources Corporation、本社:テキサス州ダラス)を所有する[5]とともに、ハント探鉱・採鉱社 (Hunt Exploration and Mining Company、略:HEMCO) の理事を務める。

シルバーサーズデー (銀の木曜日)[編集]

1970年代初頭からハントと弟のウィリアム・ハーバート・ハントは大量の銀を蓄積し始め、1979年にはほぼ世界市場を独占していた[6]。兄弟は銀投機により1979年12月までの9か月間で推定20億から40億ドルの利益を得ており、推定銀保有量は1億オンスであった[7]。 ハント兄弟が銀を蓄積していた1979年から1980年にかけて、銀先物取引と銀塊価格は1979年9月の1オンス11ドルから1980年1月の1オンス50ドルまで値上がりしたが、その2か月後1オンス11ドル以下に暴落した。一日の値下がりが最大を記録した1980年3月27日木曜がシルバーサーズデー(銀の木曜日)である[1]1988年9月、ハントは連邦破産法第11章に基づき、銀投機に発端する訴訟の費用をおもな原因として破産を申請した[1]。 ハントは、銀市場の独占を図り市場操作を企てたとして民事告訴された結果、1989年の米国商品先物取引委員会との和解において1000万ドルの罰金と市場取引の禁止を命じられた。この罰金のほかに、国税庁に対し、同期間の未払い税金・罰金・利子として数百万ドルの和解金の支払いがあった[1]

政治[編集]

保守的政治活動に非常に積極的であり[8]2011年現在、ジョン・バーチ・ソサエティの委員会 (National Council) 会員である[3]。ハントは、ジョン・K・シングローブ少将、ジャーナリストのジョン・リース、ジョージア州選出の民主党下院議員ラリー・マクドナルドによって1979年に設立された保守派団体、ウェスタン・ゴールズ財団の主要スポンサーのひとりであった。ハントは1980年代半ば、のちにイラン・コントラ事件に深く関与することとなる保守派の資金調達団体「米国自由維持基金 (The National Endowment for the Preservation of Liberty) 」[9]に対して総額約50万ドルを寄付した[10][11]。ハントは過去に、テキサス州聖書協会の理事長を務め、また国際キャンパスクルセードフォークライスト (Campus Crusade for Christ International) の「ヒアズ・ライフ」運動 ("Here’s Life” campaign, 1976-1980) の委員長かつ主要な貢献者であった[12][13]。また、1979年のキャンパスクルセードの映画『ジーザス (Jesus) 』のために350万ドルの融資保証を提供した[14]

サラブレッド競馬[編集]

ハントは全米サラブレッド競馬協会から「伝説的オーナーブリーダー」の称号を与えられている[15]。ハントは総じて158頭のステークスの勝ち馬を飼育し、25頭の優勝馬を飼育または所有した[16]1955年に最初のサラブレッドを購入し、1970年代にはハントの飼育プログラムは世界最大規模となった。ハントは1976、1985、1987年のエクリプス賞最優秀生産者である。8000エーカー(32平方キロメートル)のブルーグラス牧場をケンタッキー州レキシントンに所有し、ヨーロッパ北アメリカでサラブレッド競馬に参加した。飼育しレースに出場させた馬の中には、ヴェイグリーノーブルダーリア、エンペリー、ユース、エクセラー、トリリヨン、グローリアスソング、ダハール、エストラペイドなどがいる[2]。 1973、1974年の最優秀イギリス平地馬主であり、1976年にはエプソムダービーで優勝した[2]。 破産によってサラブレッド事業売却を余儀なくされ、世界的なサラブレッド競り市であるキーンランド・セールで1988年に行われた580頭の分散売却では46,911,800ドルを売上げ、当時の史上最高額となった[2]1999年、総額2,075,000ドルで51頭の仔馬を購入し、ハントはふたたびサラブレッドオーナーとなった。当時ハントは「この年で飼育も牧場経営もするつもりはない。ただ楽しみたい、運がよければレースに勝ちたい、というだけ」と語っている[15]

参照元[編集]

  1. ^ a b c d Eichenwald, Kurt (1989-12-21). "2 Hunts Fined And Banned From Trades". New York Times.『ハント兄弟に罰金と取引禁止令』
  2. ^ a b c d Bowen, Edward L. (2004). Legacies of the Turf: A Century of Great Thoroughbred Breeders. Lexington, KY, United States: Eclipse Press. pp. pp249–262. ISBN 158150117X.
  3. ^ a b Nelson Bunker Hunt”. The John Birch Society, Inc. 2011年3月7日閲覧。
  4. ^ Lauterpacht, Elihu; Greenwood, C. J. (1984). International Law Reports. 66. Cambridge University Press. p. 340. ISBN 0521464110. 
  5. ^ Ethiopia, U.S. Billionaire's Titan Resources Signs Oil Accord, by Jason McLure, www.bloomberg.com, 8/21/08
  6. ^ Gwynne, S. C. (September 2001). “Bunker HUNT”. Texas Monthly (Austin, Texas, United States: Emmis Communications Corporation) 29 (9): p78. 
  7. ^ “Bunker Hunt's Comstock Lode”. Time Magazine (Time Inc) 115 (2). (1980-01-14). 
  8. ^ Tuccille, Jerome (2004). Kingdom: The Story of the Hunt Family of Texas. Beard Books. p. 311. ISBN 1587982269. 
  9. ^ Berke, Richard L. (1987年4月9日). “Investigators say group raised $2 Million for Contra Arms Aid”. New York Times. http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9B0DE5DB1739F93AA35757C0A961948260 2008年7月5日閲覧。 
  10. ^ Walsh, Lawrence E. (1993年8月4日). “Final report of the independent counsel for Iran/Contra matters”. 2008年7月5日閲覧。
  11. ^ Hamilton, Lee H.; Inouye, Daniel K. (1995). Report of the Congressional Committees Investigating the Iran/Contra Affair. DIANE Publishing. pp. 93–94. ISBN 0788126024. 
  12. ^ Diamond, Sara (1989). Spiritual Warfare: The Politics of the Christian Right. Boston, USA: South End Press. pp. p53. ISBN 0896083616. 
  13. ^ Harrington Watt, David (1991). A Transforming Faith: Explorations of Twentieth-century American Evangelicalism. Rutgers University Press. p. 19. ISBN 0813517176. 
  14. ^ Van Biema, David (2003-06-30). “The Life of Jesus in 830 Languages”. Time Magazine (Time Inc) 161 (26): p42. 
  15. ^ a b Nelson Bunker Hunt”. Breeders' Cup. 2011年3月7日閲覧。
  16. ^ Blood-Horse.com - February 14, 2005

外部リンク[編集]