ネクトカリス

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ネクトカリス
生息年代: 525–505 Ma
Nectocaris 59660.jpg
バージェス頁岩のネクトカリスの化石
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
約5億2,500万年前-約5億0,500万年前
古生代カンブリア紀中期
分類
: 動物界 Animalia [注釈 1]
: 軟体動物門(?) Mollusca
亜門 : 貝殻亜門(?) Conchifera
: 頭足綱(?) Cephalopoda
: 不明
: †ネクトカリス科 Nectocarididae
: ネクトカリス属 Nectocaris
学名
genus Nectocaris 
Conway Morris1976
和名
ネクトカリス
英名
Nectocaris
下位分類(

ネクトカリス学名genus Nectocaris)は、約5億2,500万年前-約5億500万年前(古生代カンブリア紀中期)のに棲息していた頭足類と考えられている生物。バージェス動物群の中から初めて発見され、のちに澄江動物群エミュー・ベイ頁岩の中にも見つかっている。

発見と命名[編集]

1976年に、コンウェイ・モリスによって、バージェス頁岩から見つかったたった一つの化石に基づいて報告され、「ネクトカリス・プテリクス Nectocaris pteryx」と命名された[1]。属名の意味は「泳ぐエビ」、種名は「翼」。

「エビ」から「イカ」へ[編集]

当初のネクトカリスの復元像

最初に発見された(当時唯一の)化石から推定された体の構造は、細長い体の先端には、甲皮で覆われた頭部に一対の眼があり、1または2対の触角らしきものが伸びている。体の残りの部分は縦に扁平で体節があり、上下にひれのような構造があった。頭部はエビのような節足動物の特徴をもつが附属肢はなく、体部はむしろピカイアのような脊索動物に似ていることから、スティーヴン・ジェイ・グールドは著書『ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』の中で「節足動物と脊索動物のキメラ生物」とまとめている。

ネクトカリスの新しい復元像

この謎の生物の解明に動きがあったのは2010年であった。カナダ・トロント大学のマーティン・スミスとジーン・バーナード・キャロンらは、新たに発見された90点の化石標本からネクトカリスを再復元した[2]。彼らの復元像では胴体は幅の広いひれをもつ円錐形で、頭部からは柔らかな1対の触手がのびている。また特徴的なのは頭部と胴部の境あたりから下方にのびる漏斗状の構造で、現生のイカの漏斗と同じように水流ジェットを噴出し移動したと考えられた。スミスらはこれらの特徴から、ネクトカリスを頭足類と位置付けた。

近縁種[編集]

またスミスらはオーストラリアのエミュー・ベイ頁岩で1つだけ化石が発見されているベツストベルミス(Vetustovermis)や、澄江動物群ペタリリウム(Petalilium)も、同じネクトカリス科の近縁種ではないかとしている[2]

頭足類の進化の再考[編集]

ネクトカリスが頭足類であるならば、頭足類の進化のモデルは再考を迫られることになる。なぜならこれまでは頭足類はオルドビス紀に登場したオウムガイ類(チョッカクガイ)や、その後登場するアンモナイト類など、殻のある頭足類がまず出現し、そこから現生のイカ・タコのように軟体性のグループが進化した、と考えられていたのが、ネクトカリスのような殻をもたない頭足類が殻をもつグループに先行することになるからである[3][4]。ネクトカリスが本当に頭足類であるかどうかも含め、これらの結論に関しては、今後の研究が待たれる。


脚注[編集]

  1. ^ 動物界より上位の階級(ドメイン真核生物、等)は省略する。

出典[編集]

  1. ^ Morris, S.C. (1976). " Nectocaris pteryx, a new organism from the Middle Cambrian Burgess Shale of British Columbia". Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie, Monatshefte 12: 703–713
  2. ^ a b Smith, M. R.; Caron, J. B. (2010). "Primitive soft-bodied cephalopods from the Cambrian". Nature 465 (7297): 469–472. Bibcode:2010Natur.465..469S. doi:10.1038/nature09068. PMID 20505727
  3. ^ Mazurek, D.; Zatoń, M. (2011). "Is Nectocaris pteryx a cephalopod?". Lethaia 44: 2–4. doi:10.1111/j.1502-3931.2010.00253.x.
  4. ^ Smith, M. R.; Caron, J. -B. (2011). "Nectocaris and early cephalopod evolution: Reply to Mazurek & Zatoń". Lethaia 44 (4): 369–372. doi:10.1111/j.1502-3931.2011.00295.x

関連項目[編集]

外部リンク[編集]