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ネオペンタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネオペンチル基から転送)
ネオペンタン
Stereo structural formula of neopentane
Stereo structural formula of neopentane
Structural formula of neopentane with explicit hydrogens
Structural formula of neopentane with explicit hydrogens
Ball and stick model of neopentane
Ball and stick model of neopentane
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.006.677 ウィキデータを編集
EC番号
  • 207-343-7
MeSH Neopentane
性質
C5H12
モル質量 72.151 g·mol−1
示性式 C(CH3)4
精密質量 72.093900384 g mol−1
外観 無色気体
密度 0.63945 g cm-3 (4 ℃の液体)
融点 −17 °C (1 °F; 256 K)
沸点 10 °C (50 °F; 283 K)
熱化学
標準モルエントロピー S 306.28 J K−1 mol−1[1]
標準生成熱 fH298)
−168.1 kJ mol-1[1]
標準燃焼熱 ΔcHo −3514 kJ mol-1[2]
危険性
GHS表示:
可燃性水生環境への有害性
Danger
H220, H411
P210, P273, P377, P381, P391, P403, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 1: Exposure would cause irritation but only minor residual injury. E.g. turpentineFlammability 4: Will rapidly or completely vaporize at normal atmospheric pressure and temperature, or is readily dispersed in air and will burn readily. Flash point below 23 °C (73 °F). E.g. propaneInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
1
4
0
関連する物質
関連するテトラブチル炭素 テトラ-tert-ブチルメタン
関連物質 テトラメチルシラン
テトラメチルスズ
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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ネオペンタン: Neopentane)は、2本の側鎖を持つ炭素数5の分岐鎖を有したアルカンである。IUPAC系統名は 2,2-ジメチルプロパン (2,2-dimethylpropane)だが、ネオペンタンはIUPAC許容慣用名として使用される。第4級炭素を有する化合物の中では、最も単純な構造の化合物であり、n-ペンタンイソペンタン構造異性体でもある。

物理的性質

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常圧でのネオペンタンの沸点は9.5 °Cであり、常温常圧では引火性の高い気体として存在するものの、寒い日や高圧下では揮発性の液体として存在する。

構造異性体との沸点の比較

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ネオペンタンの沸点は、他の構造異性体に比べて著しく低い。常圧でのイソペンタン(27.7 °C)およびn-ペンタン(36.0 °C)と比べて、ネオペンタン(9.5 °C)である。したがって、ネオペンタンは室温、大気圧下で気体だが、イソペンタンおよびn-ペンタンは辛うじてながら液体である。これについては、分岐鎖が増えたために分子の形状が球形に近付くため、直鎖の場合によりも分子の表面積が減少し、結果として分子間力が弱くしか作用しないからだと説明される[3]

構造異性体との融点の比較

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一方で、常圧でのネオペンタンの融点(−16.6 °C)は、イソペンタン(−159.9 °C)よりも140 °C高く、n-ペンタン(−129.8 °C)よりも110 °C高い。この異常に高い融点の原因は、正四面体型のネオペンタン分子が固相において、より良く密接しているために、固体の状態であれば、分子間力が強力に作用しているためだと説明されてきた。しかし、この説明は、ネオペンタンが他の2つの異性体よりも低い密度を有するという理由で疑われてきた。その上に、ネオペンタンの固体の融解エントロピー英語版は、n-ペンタンおよびイソペンタンの融解エントロピーよりも低い。これは、ネオペンタンの高い融点が、より高い分子の対称性から生じるエントロピー効果による結果である事を示している。実際、ネオペンタンの融解エントロピーは、n-ペンタンおよびイソペンタンよりも約4倍低い[4]

NMRスペクトル

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ネオペンタンの分子は正4面体状に炭素が連なり、分子内の水素は全て、正4面体の中心の第4級炭素以外に結合した構造をしている。この分子の対称性のため、全てのプロトンは化学的に等価であり、四塩化炭素に溶解して1H NMRで、これらの水素の化学シフトを計測すると、単一のδ = 0.902という値を与える[5]。この点においてネオペンタンは、1H NMRで基準として用いられるテトラメチルシランと似ている。

ネオペンタン分子の対称性は、一部の水素原子が重水素原子によって置き換えられると壊れる。特に、もしそれぞれのメチル基が、異なる数の重水素原子(0、1、2、3)と結合した場合には、キラルな分子が得られる。

ネオペンチル基

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ネオペンチル基を持つ化合物の一般構造式。

ネオペンチル基(Neopentyl substituent)とは、ネオペンタンから水素が1つ脱離した構造の部分を指し、しばしばNpと表記される。その構造は Me3C-CH2 と略記される場合もあり、例えば、ネオペンチルアルコールは Me3CCH2OH さらには NpOH と略記される場合もある。

出典

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  1. ^ a b 『化学便覧 基礎編』 II、日本化学会 編(改訂6版)、丸善出版、2021年。ISBN 978-4-621-30521-8  表10.10-2.
  2. ^ Neopentane”. NIST. 2021年3月8日閲覧。
  3. ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.50 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  4. ^ James Wei (1999). “Molecular Symmetry, Rotational Entropy, and Elevated Melting Points”. Ind. Eng. Chem. Res. 38 (12): 5019-5027. doi:10.1021/ie990588m. 
  5. ^ Proton NMR spectrum of neopentane”. Spectral Database for Organic Compounds. 2006年11月19日閲覧。