ニセクロハツ

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ニセクロハツ
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分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
: ベニタケ目 Russulales
: ベニタケ科 Russulaceae
: ベニタケ属 Russula
: クロハツ節 Compactae
: ニセクロハツ R. subnigricans
学名
Russula subnigricans Hongo (1955)
和名
ニセクロハツ

ニセクロハツ(偽黒初、Russula subnigricans Hongo)はベニタケ目ベニタケ科ベニタケ属クロハツ節の毒キノコ。主に夏、富山県から愛知県以西[1]シイ林などの地上に発生する。は灰褐色でスエード状の質感があり、成長すると中央が窪んで浅い漏斗状になる。ひだはクリーム色で、傷つくか老成すると薄く赤変する。はほぼ傘と同色。

日本以外では東アジア(中国台湾韓国)に分布する。

アメリカ合衆国南東部でも報告されていた[2]が、その後別種と判明してR. cantharellicolaと命名された[3]

解説[編集]

ニセクロハツは子実体にキズを付けると赤変したままであるが、類似種のクロハツは傷つくと赤変後、しばらくすると黒変するので区別できる。ただし、毒を持たない未知の類似種の存在が複数確認されており[4]。遺伝子解析により5型が確認された[5]

ニセクロハツによる中毒事故は1954年京都市で初めて報告され、以降1958年から2007年にかけて愛知県富山県大阪府宮崎県で6件・15人が中毒し、うち7人が死亡している[1]。中国では南部で中毒事故が多発しており、1994年から2012年までに発生したキノコ中毒患者852人のうち4分の1を占め、死亡率は20%以上に上った[6]

毒性[編集]

ニセクロハツの毒成分・2-シクロプロペンカルボン酸

猛毒致死量は2〜3本とも言われる。潜伏期は、数分〜24時間。嘔吐、下痢など消化器系症状の後、縮瞳呼吸困難言語障害横紋筋溶解[7]に伴う筋肉の痛み、多臓器不全、血尿を呈し重篤な場合は腎不全を経て死亡する。主な治療は胃洗浄、利尿薬投与、人工透析

毒成分は2008年に京都産の個体から分離された、シクロプロペン誘導体の2-シクロプロペンカルボン酸 (C4H4O2) が骨格筋の組織を溶解し、その溶解物が臓器に障害を与えることが判明した[8]。2008年の解明以前はルスフェリン類が毒性物質と考えられていた[9]がマウスに対し毒性を示さず否定された[8][10]。なお、上記のルスフェリン類と3-ヒドロキシバイキアインは宮城県で採取されたニセクロハツ類似種からのみ検出されており、京都府で採取した真のニセクロハツからはシクロプロピルアセチルカルニチンが発見されている。この物質は、真のニセクロハツと類似種とを見分ける指標になると見られている[8]

脚注[編集]

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  1. ^ a b "謎の毒キノコ"〜ニセクロハツ〜岐阜県保健環境研究所 (PDF)
  2. ^ A deadly Russula、2013年12月30日、コーネル大学
  3. ^ Openjournals.wsu.edu: "A new species of Russula, subgenus Compactae from California" (2014).
  4. ^ 毒キノコ「ニセクロハツ」の有毒成分を同定日本薬学会、2009年6月
  5. ^ 下野義人、広井勝、上田俊穂 ほか、2009.ニセクロハツには5型がある. 日本菌学会第53回大会講演要旨集 p.41 (日本菌学会第53回大会セッションID:B2), doi:10.11556/msj7abst.53.0.41.0
  6. ^ Zuohong Chen, Ping Zhang, Zhiguang Zhang (2013-08-15). “Investigation and analysis of 102 mushroom poisoning cases in Southern China from 1994 to 2012”. Fungal Diversity 64 (01): 123-131. doi:10.1007/s13225-013-0260-7. 
  7. ^ 太田好紀、松田直之、西山慶 ほか、「ニセクロハツ中毒の1例」 日本救急医学会雑誌 Vol.20 (2009) No.10 P.836-842, doi:10.3893/jjaam.20.836
  8. ^ a b c 橋本貴美子、松浦正憲、犀川陽子 ほか、「致死性毒きのこ,ニセクロハツの毒成分 横紋筋融解をひき起こす原因物質を解明」 化学と生物 Vol. 47 (2009) No. 9 P 600-602, doi:10.1271/kagakutoseibutsu.47.600
  9. ^ 糸川嘉則編 (1992),毒性試験講座 食品,食品添加物,地人書館 (東京),57
  10. ^ 松浦正憲、加藤優、犀川陽子、乾公正、橋本貴美子、中田雅也 (2008-09-01). “P-51 致死性猛毒きのこニセクロハツ(Russula subnigricans)の毒成分研究(ポスター発表の部)”. 天然有機化合物討論会講演要旨集 (50): 415-420. NAID 110007066729. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]