ナショナル・エアラインズ102便墜落事故

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ナショナル・エアラインズ 102便
Cargo Boeing 747-428(BCF) of National Airlines.jpg
事故機(N949CA)
事故の概要
日付 2013年4月29日
概要 荷崩れによる急激な重心移動及び油圧と昇降舵システムの破壊による失速
現場 アフガニスタンの旗 アフガニスタン パルヴァーン州
バグラム空軍基地近郊
北緯34度57分37秒 東経069度16分37秒 / 北緯34.96028度 東経69.27694度 / 34.96028; 69.27694
乗員数 7
死者数 7(全員)
生存者数 0
機種 ボーイング 747-428BCF
機体名 Lori
運用者 ナショナル・エアラインズ (N8)
機体記号 N949CA[1]
出発地 アフガニスタンの旗 バスティオン基地英語版
経由地 アフガニスタンの旗 バグラム空軍基地
目的地 アラブ首長国連邦の旗 アール・マクトゥーム国際空港
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ナショナル・エアラインズ102便墜落事故(ナショナル・エアラインズ102びんついらくじこ)とは、2013年4月29日アフガニスタンバグラム空軍基地にて、アメリカナショナル・エアラインズの貨物機(B747-428BCF)が離陸直後に墜落した事故である。この事故で乗員7名が死亡した。付近を走行中の自動車のドライブレコーダーが偶然事故の瞬間を撮影しており、動画共有サイトやニュースで公開された。

概要[編集]

事故機の経歴[編集]

  • 使用機材:B747-428BCF[2]
    • 製造番号:25630/960
    • 機体記号:N949CA
    • 製造年:1993年
      • エールフランス向けに旅客・貨物混載型(-400M)として製造(当時の機体記号はF-GISE)、パリ - 成田間等を結ぶ国際線で運用。
      • 2007年12月、全貨物型に改修、エールフランスカーゴに移管。
      • 2010年9月にエールフランスカーゴを退役後、ナショナル・エア・カーゴが購入(当時の機体記号はTF-NAD)。

当日の102便[編集]

事故発生[編集]

事故直後の墜落現場

2013年4月29日、ナショナル・エアラインズ(以下、NCR)102便は、フランスシャトールーの米軍基地からアフガニスタンバスティオン基地英語版に飛び、そこでMRAPを搭載し、ドバイ(アール・マクトゥーム)へ向かう途中、首都カブール近郊のバグラム空軍基地で給油の為に立ち寄った。

102便は現地時間15:30 (UTC 11:00)、バグラム空軍基地の滑走路03から離陸。しかし、離陸上昇中1200フィート(約370メートル)ほど上昇した時に機首が跳ね上がり急激に失速、機体は少し左にバンクした後、右に大きく傾き急降下、機体が水平になったがそのまま道路脇に墜落した。この事故により運航乗務員4名、エンジニア2名とロードマスター1名の合計7名全員が死亡した。 この事故はNCRが起こした初めての事故でもある。

また付近の道路を走行していた自動車のドライブレコーダーが偶然にも事故の瞬間を撮影しており、YouTubeをはじめとする動画共有サイトで見ることができる。この映像は日本を含む各国のニュース番組で放送された。

事故原因[編集]

NTSB(アメリカ国家運輸安全委員会)とアフガニスタン民間航空局が事故原因を調査した。

事故発生当初、航空評論家の前根明をはじめ、「貨物の一部がしっかり固定されていなかったため、離陸の際に動き、機体の重心がずれたため失速した」という意見もあったが、NCRは2013年5月1日、搭載貨物はバスティオン基地を出発する際に、適切に搭載されていることをチェックしており、バグラムで追加搭載したものはなく、出発前に、燃料を含めた重量及び重量バランス等、搭載貨物の確認を再度行っていたと発表した[4]。しかし、NCRがMRAPの輸送を請け負ったのは、これが初めてであった。また、通常の貨物はパレット又は航空貨物用コンテナに乗せられ、床下のレールに付いた緊締装置によって固定されるが、今回のような規定外の物は緊締装置が使用出来ない為、ナイロンラッシングベルトで固縛する方式が取られている。ところが、バグラム到着後の確認作業で、貨物が5~6cm動きラッシングベルト数本が緩み、一部は破断していた事が、ボイスレコーダーの記録で判明した。離陸前に破断したラッシングベルトの交換と、補強の為に本数を追加する作業が行われていた。

調査の過程で、クルーたちは約20時間の連続勤務で疲れていたことが判明するが、前述の動画を事故調査官が発見したことから、クルーの疲労は原因からは外された。

また墜落直後、アメリカ軍によって102便のレコーダー類は回収され、ワシントン州のNTSB本部に送られてすぐに復元されたが、レコーダーは離陸してすぐに記録を停止していた(但しエプロン待機中の間の会話記録は残っていた)。そのため、電気系統の不具合や、また、目撃者の一人が、「機体の尾部から煙のようなものが出ていた」と証言したことから機内火災の可能性も検証された。しかし、どちらも原因には当てはまらなかった。そこで調査官たちが墜落時の動画を解析した結果、102便は主脚の一部が収納されない状態で墜落したことがわかり、後に「尾部からの煙」は、油圧パイプ破壊によって漏れ出して霧状になった油圧オイルと判明する。

ただし、その後に行なわれたシミュレーションにおいて、重心の移動と油圧2系統の破断だけでは、通常の回復操作を行えば墜落に成り得なかったため、これは事故の状況と矛盾した。そこで、調査官が102便の油圧ジャッキの残骸に着目すると、そのジャッキに使用されていたネジ山付きの棒が真っ二つに折れているのが見つかった。油圧ジャッキの破損を条件に加えて再度シミュレーションを行なったところ、その結果は102便の状況に当てはまった。

2013年6月2日にNTSBは、搭載されていた合計5台のMRAPの固定が緩んだことが原因であると発表。まず、貨物を固定していたラッシングベルトが破断。貨物が後部圧力隔壁を突き破り、この時に4系統の油圧パイプのうち2系統と、水平尾翼の安定板を制御する油圧ジャッキを破壊。さらにレコーダー類も貨物の衝突により電源ケーブル類が破断、脱落して機能を停止。そして、機体の後方に重心が移動したため急激に機首が跳ね上がり失速し、墜落したと断定した[5]。この時点では貨物固定が外れた原因などは調査中だった[6]

その後の調査で、ラッシングベルトの本数が問題になった。ロードマスターはNCRの貨物取扱マニュアルに従って、それぞれの車両に使用するラッシングベルトの本数を決定、固縛した。しかし、その取扱マニュアルに記載されていた規定を同業他社とボーイング社に確認したところ、ラッシングベルトの本数と角度が不適切なことが判明した。NCRはマニュアルに適切な角度を記載しておらず、ベルトの本数も必要数の半分以下しか使用していなかった。しかもロードマスターは何も教育されず、渡されたマニュアルに従って作業しただけに過ぎなかった。

脚注[編集]

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関連項目[編集]

この事故を扱った番組[編集]

外部リンク[編集]