ドライバーレス・メトロ

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ドライバーレス・メトロ
Ansaldo Breda Driverless Metro
Metrobs 108 DL Brescia 20110918.jpg
基本情報
運用者 デンマークの旗 コペンハーゲン地下鉄
サウジアラビアの旗 リヤド P・ヌーラ大学
イタリアの旗 ブレシア地下鉄
イタリアの旗 ローマ地下鉄
イタリアの旗 ミラノ地下鉄
台湾の旗 台北捷運
など
製造所 イタリアの旗日立レール (イタリア)
(旧日立レールイタリア
およびアンサルドブレーダ)
製造年 2002年 -
運用開始 2002年 -
主要諸元
軌間 1,435(標準軌
電気方式 第三軌条方式直流750V
架空電車線方式直流1,500V(ローマ、リマ)
最高運転速度 80-90km/h
起動加速度 4.68km/h/s(1.3m/s2
減速度(常用) 4.68km/h/s(1.3m/s2
制御装置 CBTC
保安装置 ATPATO
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ドライバーレス・メトロ英語: AnsaldoBreda Driverless Metro/Hitachi Rail Italy Driverless Metro)はイタリアフィンメッカニカグループの旧アンサルドブレーダ社およびその後身である日立製作所傘下の(日立レールイタリア(HRI)を経て[1]日立レール社(Hitachi Rail S.p.A.)が製造する、無人運転に対応した都市高速鉄道メトロ地下鉄)向けの汎用鉄道車両のシリーズおよびそのブランド。2002年コペンハーゲン地下鉄で営業運転に投入されたのを皮切りに、欧州だけではなくアジア北米各地でも採用されている。無線式移動閉塞による無人自動運転システム(CBTC)は同じ日立系のアンサルドSTSが主に手がけている。

車両[編集]

コペンハーゲン地下鉄の内装

車両は統一コンセプトで設計された車体を最少2両、編成長39-109メートル、増結は3-6両で自在に選択できる[2]。車幅はローマとホノルル、リマを除き基本2.65メートル。車高は3.4-3.85メートルの範囲でカスタマイズ可能。客室扉は1両あたり片側2ヶ所が基本で幅1.3メートル、高さ1.945メートル[3]。運転室がないため、先頭車では客室からの前面展望も可能。

エクステリアデザインイタリアの代表的な工業デザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロ擁するイタルデザイン社が手掛けている[4][5]

3-4連の列車の場合、6つの三相交流誘導電動機を備えている。個別の出力は105-128kWで、1台車単位では210-256kW、編成出力は630-764kW。各車両には2つのIGBT-VVVFインバータ制御装置があり、直流1,500Vでの架空電車線方式を採用したローマ、リマ以外は、直流750Vでの第三軌条から集電し、三相交流に変換している。最高速度は80-90km/hで、加減速性能は1.3m/s2。列車ドアの開閉は各駅のホームドアと連動している(ローマ、ミラノ、ブレシア、台北の全駅とコペンハーゲンの地下駅など)[3][6][7]

自動運転[編集]

コペンハーゲン地下鉄の集中管理室

運行は各事業者が設ける管制センターと整備工場でコンピュータによる全自動化がなされている。自動列車制御装置(ATC)はATPATO、ATS(Automatic Train Supervision、自動列車管理システム)の3つの補助システムで構成されている。

ATPは運行速度や出発時の戸締り確認、分岐器の方向を管理する。駅周辺を除いて移動閉塞を用いている[8][7]。設計は米国ユニオン・スイッチ・アンド・シグナル(その後2009年にアンサルドが吸収)が担当している[9]

ATOは在線中の事前定義された列車の停車やドア開閉自動化するためのオートパイロットシステム。ATSはシステム上の軌道、列車、管制センターでのリアルタイム表示を含むネットワーク内の構成要素を監視している。ATCはATPがセーフティクリティカルな状態に陥ったときや他のシステム障害発生時に列車を停止させる[8]

採用事例[編集]

一覧[編集]

事業者 路線 運行開始 編成数 編成両数 座席数 定員 全長 全幅 速度 電気方式 集電方式
m m km/h
デンマークの旗 コペンハーゲン地下鉄[10] M1線英語版
M2線英語版
2002年 34 3 48 280 39.0 2.65 90 直流750V 第三軌条方式
M3線英語版(シティ・サークルライン) [11]2019年 39 3 48 280 39.0 2.65 90
M4線英語版 [12](予定)2020年
サウジアラビアの旗 リヤド P・ヌーラ大学[13][14] 2012年 22 2 24 248 28.56 2.65 60
イタリアの旗 ブレシア地下鉄[15] 2013年 18 3 72 384 39.0 2.65 80
イタリアの旗 ミラノ地下鉄 M5線[16] 2013年 21 4 96 534 50.5 2.65 80
M4線[17] (予定)2021年 47 4 40 600 50.9 2.65 80
イタリアの旗 ローマ地下鉄 C線[18] 2014年 30 6 194 867 109.4 2.85 90 直流1,500V 架空電車線方式
台湾の旗 台北捷運[19] 環状線 [20]2020年 17 4 98 653 68.43 2.65 80 直流750V 第三軌条方式
アメリカ合衆国の旗 ホノルル・レール・トランジット[21] [22](予定)2020年 20 4 [註 1]120 574 78.0 3.05 88
ギリシャの旗 テッサロニキ地下鉄英語版[23] (予定)2020年 18 4 96 466 51.0 2.65 90
ペルーの旗 メトロ・デ・リマ[24] 2号線スペイン語版
4号線スペイン語版
(予定)2020年 42 6 166 1,271 106.94 2.85 80 直流1,500V 架空電車線方式
台湾の旗 新北捷運 三鶯線 (予定)2024年 29 2 [25]50 [25]330 34.0 2.65 80 直流750V 第三軌条方式

コペンハーゲン[編集]

コペンハーゲンのドライバーレス・メトロ

デンマークの首都コペンハーゲンには1号線と2号線合わせて20.5km、22駅に及ぶ路線網があり、2002年2007年に開業し、市街地とコペンハーゲン空港アマー島フレゼレクスベア英語版を結んでいる。ドライバーレス・メトロが初めて採用された都市で、3両編成の列車34編成が終夜運転を含め2-12分間隔で運行中。シティ・サークルライン英語版(M3線)が2019年に開業し、M4線も建設中[6][8]

リヤド[編集]

プリンセス・ヌーラ・ビント・アブドゥッラハマーン女子大学内を周回する軌道交通として全長11.5kmの専用メトロが2012年に開業している[2]

ブレシア[編集]

ブレシア地下鉄の車両

2013年に開業したイタリアのブレシア地下鉄は3段階に分かれて全長18km、17駅の路線整備が進行中。90秒間隔で運転され、18編成が発注された[26]

ミラノ[編集]

ミラノ5号線車両

ビニャーミ駅M3線ザーラ駅を結ぶ5.6km、事業費5億ユーロ[27]を投じたミラノ地下鉄M5線の第1期区間は2013年2月10日に、2期目のスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァの最寄り駅サン・シーロ・スターディオ駅までを結ぶ区間は2014年3月1日に開業した。3期目と4期目の延伸事業も計画中。軌道はアルストム、信号・通信はアンサルドSTS、車両はアンサルドブレーダが受注している。

ローマ[編集]

ローマC線

全長25.5kmのローマ地下鉄C線は2014年11月に17.6kmが一部開業している。全線開業後は30駅が設置され、21駅が地下駅となる。輸送力は上下各24,000人/毎時を想定しており、1編成6連の車両30編成が発注され、全幅がこの形式の標準的なものより20センチ拡大され、編成定員も1,200人を確保している。平均速度は35km/hで運転間隔は3-12分。総事業費30億ユーロで工程は4段階に分割して進行している。2014年に最初の区間が開業後は2015年、2018年、2022年に順次延伸される[28]

ホノルル[編集]

ホノルル・レール・トランジットの車両

ホノルル・レール・トランジットは米国ハワイ州オアフ島ホノルル市街と空港を結ぶ空港連絡鉄道。2020年に21駅で暫定開業、翌年に15駅を追加した全線開業を目指している。2016年にカリフォルニア州ピッツバーグの工場から第1編成がハワイへ輸送された[29]

台北[編集]

台北環状線の車両

台湾台北都市圏中心部から放射線状に伸びる既存の台北捷運路線を郊外部で結合し、最終的には全長50km超の環状路線となる構想。4分割で計画が進行し、このうち着工済みの一部区間15.4km・14駅が2020年1月に開業。台北市政府捷運工程局と4連の電車17編成を納入する契約が結ばれている[30][31]台湾鉄路管理局EMU300型電車ソシミ製)以来約30年ぶりにイタリア製車両が台湾で投入されることになる。2編成は完成車としてイタリアから運ばれるが、15編成は台湾車輌公司によって台湾で組み立てられる。桃園機場捷運との乗換があることから、空港利用者の便宜のため大型荷物を設置するスペースが設けられている[32]

テッサロニキ[編集]

ギリシア第二の都市テッサロニキでは2006年から本線が起工、2020年に開業予定で総額8億ユーロを投じて工事中。 9.5kmの地下路線に13駅が設置され、アテネ地下鉄を運営するアッティカ・メトロ社が運営事業者として3連1編成の車両を18編成発注している[33][34]。それぞれ5kmの支線系統2本も整備中[35]

リマ[編集]

ペルーの首都リマで建設中の市街を東西に貫く2号線と途中で2号線に接続し、ホルヘ・チャベス国際空港へのアクセスを担う4号線支線で採用が決まっている[36]。4号線は2段階に分けて開業予定で、2号線の車両は2016年8月16日サレルノから海上輸送された[37]。ローマに続いて架線集電方式を採用し、日立を含むコンソーシアムは30年間の運行と保守業務を請け負っている。

新北[編集]

台湾最大人口を擁し、台北捷運が市内に延伸されている新北市でも独自の捷運路線が計画され、新北捷運の路線として台北捷運板南線の終端頂埔駅から三峡区鶯歌区を結ぶ三鶯線が2023年末完工・開業予定で整備中。アンサルド・ブレーダが日立レールイタリアとなってからは初の受注案件で台北の環状線の半分となる2両1編成の車両29編成が新北市政府捷運工程局から発注された。当初は全編成イタリアで製造される予定であったが、途中の編成から輸送コスト削減のために日立製作所笠戸事業所で製造される予定である[38]

脚注[編集]

註釈[編集]

  1. ^ 別途68席の収納式座席

出典[編集]

  1. ^ 鉄道システム事業戦略 Hitachi IR Day 20152015-06-11,日立製作所
  2. ^ a b (英語)Andy Hellawell (2012年8月21日). “Princess Nora Bint Abdul Rahman University driverless metro opens”. レールウェイ・ガゼット・インターナショナル. http://www.railwaygazette.com/news/urban-rail/single-view/view/princess-nora-bint-abdul-rahman-university-driverless-metro-opens.html 
  3. ^ a b (英語)Driverless metros - ウェイバックマシン(2013年9月27日アーカイブ分)2010-11-04,アンサルドブレーダ
  4. ^ (イタリア語)Brescia, metropolitana da primato2008-02-20,イタリア・オッジ英語版
  5. ^ (英語)Copenhagen Metro - ウェイバックマシン(2009年7月30日アーカイブ分)2002-10-28,Arcspace
  6. ^ a b Haas, Torkil (2002). “En mini-metro med maksimal virkning” (Danish). Jernbanen (2): 52–53. オリジナルの2011-07-19時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110719124947/http://www.jernbaneklub.dk/jernbanen/2002/blad2-2002metro-togportr%C3%A6t.pdf. 
  7. ^ a b (イタリア語)Treni driverless - ウェイバックマシン(2008年8月4日アーカイブ分) Metro C S.c.p.A.
  8. ^ a b c (デンマーク語)Jensen, Tommy O. (2011-07-19). “Bag om metroen”. Jernbanen (5): 32–41. http://www.jernbaneklub.dk/jernbanen/2002/blad5-2002bag-om-metroen-ny4.pdf. 
  9. ^ (英語)Metros and Tramways アンサルドSTS公式
  10. ^ (英語)The Copenhagen Driverless Unattended Metro アンサルドSTS,
  11. ^ (英語)Copenhagen Cityring metro opens”. IRJ (2019年9月30日). 2020年2月2日閲覧。
  12. ^ (英語)“New Copenhagen Metro line opening in two months The M4 link to Nordhavn will officially open to the public on March 28”. コペンハーゲン・ポスト. (2020年1月24日). http://cphpost.dk/news/new-copenhagen-metro-line-opening-in-two-months.html 
  13. ^ (英語)Riyadh University of Women Princess Noura Bint Abdulrahman - Driverless Metro 日立レールイタリア
  14. ^ (英語)Princess Noura Bint Abdulrahman University for Women Automated People Mover アンサルドSTS
  15. ^ (英語)Brescia Subway2015-09,アンサルドSTS
  16. ^ (英語)Milano Line5 日立レールイタリア
  17. ^ (英語)MILANO LINE 4 日立レールイタリア
  18. ^ (英語)METRO ROMA LINEA C 日立レールイタリア
  19. ^ (英語)Taipei 日立レールイタリア
  20. ^ 台北メトロ環状線が正式開業 蔡総統「建設に党派は関係ない」/台湾”. フォーカス台湾 (2020年1月31日). 2020年2月2日閲覧。
  21. ^ (英語)HONOLULU 日立レールイタリア
  22. ^ (英語)“By October, football fans could be riding the rail line to Aloha Stadium”. Hawaii News Now: KHNL/KGMB. (2020年1月8日). https://www.hawaiinewsnow.com/2020/01/09/by-october-football-fans-could-be-riding-rail-line-aloha-stadium/ 
  23. ^ (英語)SALONICCO 日立レールイタリア
  24. ^ (英語)LIMA 日立レールイタリア
  25. ^ a b (繁体字中国語)〈台北都會〉淡藍色長波浪 三鶯線列車外觀出爐2018-04-21,自由時報
  26. ^ (英語)Brescia opens first metro line2013-03-05,インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル
  27. ^ (英語)Milan metro line 5, equipped with Alstom technology, awarded "Transport deal of the year 2015"2016-02-04,アルストム
  28. ^ (イタリア語)APERTURA LINEA C, GIÀ 2 ANNI DI RITARDO2013-02-13
  29. ^ (英語)First Honolulu metro cars delivered2016-03-29,インターナショナル・レールウェイ・ジャーナル
  30. ^ (英語)Taipei Circular Line kicks off2009-03-17,レールウェイ・ガゼット・インターナショナル
  31. ^ (繁体字中国語)捷運技術半年刊 第43期 捷運環狀線電聯車概念設計架構簡介2010-08 ,台北市政府捷運工程局
  32. ^ (繁体字中国語)捷運環狀線列車 黃白塗裝大膽走清新風2017-10-11,大紀元
  33. ^ (英語)THESSALONIKI METRO – A new relationship is established between Thessaloniki Metro and the city of Thessaloniki and its various Municipal and private organizations”. Attiko Metro (2010年12月6日). 2010年12月14日閲覧。
  34. ^ (英語)AnsaldoBreda and Ansaldo STS win EUR 300 million contract for Thessaloniki metro2006-04-07,アンサルドSTS公式
  35. ^ (英語)THESSALONIKI METRO – Thessaloniki Metro heads for Kalamaria”. Attiko Metro (2011年11月14日). 2018年4月22日閲覧。
  36. ^ (スペイン語)Metro Line 2 will operate with driverless trains and will be 100 % automated”. Andina (2014年4月28日). 2016年3月27日閲覧。
  37. ^ (英語)Lima metro Line 2 train shipped2016-08-17,レールウェイ・ガゼット・インターナショナル
  38. ^ 現地ルポ、日立「イタリア鉄道工場」の最深部東洋経済オンライン 2019年8月28日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]