ドライクリーニング

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ドライクリーニングとは、洗剤を溶かしたの代わりに工業ガソリンなどの有機溶剤を使って洗濯することをいう。水を使って行う洗濯に比べ、あぶら(油脂系)汚れをよく落とし、また衣類の伸縮が生じにくいという利点を持つ。一方、などの水溶性の汚れは落ちにくく、また物によっては色落ちしたり、素材自体を傷めたりすることがあるため、使用する際にはドライクリーニングが可能な素材なのかどうかをよく注意する必要がある。なお、ドライクリーニングを専門に行っている業者はクリーニング業法の「クリーニング業」とされ、都道府県知事への届出や確認など法的な規制を受ける。

フランス人の染色業者ジョン・ジョリが、こぼしたランプの油(カンフェン)がテーブルクロスの模様を消すことを偶然発見したことが始まりとされる。日本では白洋舎が初めて行ったとされる。

概要[編集]

油脂は水に溶けにくく、通常の水を使った洗濯では落とすことが難しい。そこで水の代わりにあぶらを良く溶かす有機溶剤を用いて洗濯する方法があり、これをドライクリーニングという。ドライクリーニングではオイルの染みや口紅など、普通の洗濯では落ちにくい油脂系汚れもよく落とすことができる。

またドライクリーニングではウールなどでできた衣料品でも、縮みや型くずれがしにくいという特徴がある。これらの繊維は水によって膨潤したりまたは繊維の表面が変性したりしてしまうが、有機溶剤ではこのような変化が生じないためである。

一方、ドライクリーニングでは水溶性の汚れ(汗、食べ物のはねなど)は普通の洗濯に比べ落ちにくい。このためずっとドライクリーニングのみを行っていると、水溶性汚れが蓄積されるために衣料が黄ばんでくることがある。

また、ドライクリーニングで用いる有機溶媒は非常に溶解性が強いため、合成色素なども溶かすことができる。したがって、物によっては色が落ちたりボタンが溶けたりすることがある。近年多用されている複合素材の中にもドライクリーニングが適さないものがある。このため、全ての衣料品にはドライクリーニングができるかどうかが絵表示されている。

ドライクリーニング対応表示[編集]

JIS[編集]

ドライクリーニングができるかどうかについてはJIS L0217(「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法」)によって下記の3種類に分類され、それぞれの製品に記号で示されている(記載義務がある)。

  1. ドライクリーニングができる。溶剤は、パークロロエチレン又は石油系のものを使用する(○の中央を横方向へ波線で区切り、上部に「ドライ」と書いた記号)。
  2. ドライクリーニングができる。溶剤は、石油系のものを使用する(1の記号の下部に「セキユ系」と書いた記号)。
  3. ドライクリーニングはできない(1に×を重ねた記号)。
(1)
ドライクリーニングできることを示す絵表示
(2)
石油系ドライクリーニングのみできることを示す絵表示
(3)
ドライクリーニングできないことを示す絵表示

ISO[編集]

国際的な「ケアラベル・取扱い絵表示」(ISO 3758)では、クリーニングについて、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)または石油系溶剤によるクリーニングが可能な場合はPに○、石油系溶剤によるドライクリーニングのみ可能な場合にはFに○、ドライクリーニング不可の場合には○に×を重ねた表示が用いられる[1]

方法[編集]

装置[編集]

ドライクリーニングは、通常は普通の洗濯と同じように洗濯機を用いて行う(家庭で行う洗濯を水ではなく有機溶媒で行うと考えてよい)。洗濯したいものを有機溶媒に浸し、場合によっては洗剤や少量の水(汗など、水溶性の汚れを落とすため)加えたのち、洗濯機内で回転させる。すすぎ・脱溶媒を行った後、乾燥機で乾燥させる。ただし有機溶媒は可燃性であったり、またプラスチックを溶かしたりするためどの過程でも専用の特別な機械を使用する。また使用した溶媒を下水に流すことはできないため、回収・再利用できる仕組みになっている。

洗濯・乾燥の終了後は蒸気を使って衣類の型を整えたりプレスしたりした後、折りたたんで袋に入れて完成となる。

薬品[編集]

ドライクリーニングに使用される有機溶剤はクリーニング業者によって様々であるが、大きく塩素系石油系に分類することができる。また、洗剤陰イオン界面活性剤陽イオン界面活性剤、あるいは非イオン界面活性剤に分類できる。

ドライクリーニングついての基準となるJIS L0860(「ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法」)では、溶剤・洗剤として以下のものを使用している。

  • 溶剤
    • 塩素系 - パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)。
    • 石油系 - 5号工業ガソリン、通称:クリーニングソルベント。引火点38℃、蒸留性状は、初留温度150℃・50%流出温度180℃以下・終点210℃。一般的に使用されているベンジンよりも、やや炭素数の多いアルカンが主成分である。高級な礼服、アンゴラのセーターなど素材を傷めない処理が要求される工程に多く使われる。
  • 洗剤
    • 陰イオン界面活性剤 - スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム
    • 非イオン界面活性剤 - ポリオキシエチレンアルキルエーテルでエチレンオキサイド付加モル数7~8、HLB12~13のもの。

洗剤を用いる場合は陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を両方用い、有機溶媒の1/1000程度の水を加える。

安全性[編集]

ドライクリーニングでは、物によっては色落ちしたり、ボタンなどの合成樹脂部分が溶けてしまったりすることがある。ただし、ドライクリーニングの適否はそれぞれの製品に明記されているはずである[要出典]から、この表示に従えば安全である[要出典]

また、ドライクリーニングは有機溶媒を用いており、十分乾燥していない場合は肌の敏感な人では化学やけどをする場合がある。しかし、有機溶媒は水よりもはるかに乾きやすいため、普通に乾燥を行えば洗濯後に有機溶媒が残ることはまずない。とはいえ、まれにクリーニング後にかけられているビニールを取らないでおくなどのある一定の条件下において、わずかに残留した有機溶媒が服を傷めることがある[要出典]

ドライクリーニングでは、利用者よりも作業者のリスクが高い。溶剤として用いるパークロロエチレン(テトラクロロエチレン)は手足のしびれや肝機能障害を起こすなどの毒性があり、一定の閾値はあると考えられるものの、発がん性の恐れがあるとされる。また、外部に漏れると環境汚染の原因ともなるため、極めて厳格な排出規制がある。石油系溶剤は可燃性が高く、取り扱いを誤ると火災の原因となる。以上のことから、有機溶剤の取扱いには極めて注意が必要である[要出典]

クリーニング業[編集]

クリーニング業については、クリーニング業法第2条で

この法律で「クリーニング業」とは、溶剤又は洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすること(繊維製品を使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収して洗たくし、さらにこれを貸与することを繰り返して行なうことを含む。)を営業とすることをいう。

と定義される。さらに、洗濯物のクリーニング処理を行う「クリーニング所」や営業免許である「クリーニング師」が規定されている。

かつては商店街などの店舗に機械を設置して、ここで洗濯物の受け渡しと処理を行う個人経営に近い業者が多かったが、環境問題などのためか2005年現在で実際に多く見受けられるのは単なる洗濯物の受付・引渡し窓口となる取次ぎ所であり、ここから専門の処理工場である「クリーニング所」へ洗濯物が運ばれて洗濯・プレスなどの作業が行われ、処理の終了後に再び取次ぎ所に運ばれることが多い。

しかしながら、マーケットの拡大とともに増加させてきた取次店が今度は競争激化の要因となり、単価の下落などダンピングをもたらす結果となった。

2010年現在になり、ふとん・カーテン・じゅうたんなどを客の家まで引き取りに来てクリーニングをし、返しにくるというサービスも登場している。ベッドのマットを客の家でクリーニングをするというサービスもある。

参考文献[編集]

  • 『JISハンドブック 繊維』日本規格協会 編、日本規格協会、2003年

脚注[編集]

  1. ^ 『2011年版 くらしの豆知識』 独立行政法人国民生活センター、2010年、246頁

外部リンク[編集]