ドブタミン

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ドブタミン
Dobutamine.svg
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682861
胎児危険度分類
  • B
法的規制
  • (Prescription only)
投与方法 Intravenous
薬物動態データ
半減期 2 minutes
識別
CAS番号
34368-04-2 チェック
ATCコード C01CA07 (WHO)
PubChem CID: 36811
IUPHAR/BPS 535
DrugBank DB00841 チェック
ChemSpider 33786 チェック
UNII 0WR771DJXV チェック
KEGG D03879  チェック
ChEBI CHEBI:4670 チェック
ChEMBL CHEMBL926 チェック
別名 Dobutrex, Inotrex
化学的データ
化学式 C18H23NO3
分子量 301.38 g/mol

ドブタミン(Dobutamine)は心不全心停止の治療に用いられるアドレナリン作動薬の一つである。主に交感神経系β1受容体を直接作動させる。また、弱いがβ2アドレナリン受容体とα1アドレナリン受容体の活性化作用も持つ。1970年代にイソプロテレノール誘導体として合成された[1]ドーパミンとは異なりノルアドレナリンの放出を引き起こさないため、心拍数や血圧にはほとんど影響せずに心拍出量を増加させる[2][3][4]。商品名ドブトレックス

効能・効果[編集]

急性循環不全における心収縮力増強が効能・効果である[5][6]

ドブタミンは心臓の手術中敗血症性ショック等の急性で可逆的な心不全や心原性ショックに際して陽性変力作用(心収縮力増強)を期待して用いられる[7]

ドブタミンは心不全状態の心臓の心拍出量を増加させる。完全非経口栄養法英語版実施時に、器質性心疾患を持つ場合や心臓手術後で心収縮力英語版低下して代償不全英語版となっている際に短期間の陽性変力支援薬として用いられる事もある。心拍数を上昇させて心筋の酸素要求量を増大させるので虚血性心疾患には用いられない。

ドブタミンは冠動脈疾患を検出するための薬理学的心負荷薬として病院で用いられる。

禁忌[編集]

肥大型閉塞性心筋症(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄)の患者には禁忌である[5][6]

副作用[編集]

主な副作用は、β1作動薬に共通の高血圧狭心症不整脈頻脈である。房室伝導を増強させるので、心房細動を有する患者には注意して使う必要がある[8]

ドブタミンの最も危険な副作用は不整脈であり、時に致死的である。

作用機序[編集]

ドブタミンは心臓のβ1受容体英語版に直接働き掛け、心収縮力と心拍出量を増大させる。ドーパミン受容体には働かないので、ノルアドレナリン(α1作動性物質)を放出させず、血圧上昇作用はドーパミンよりも弱い。

ドブタミンは選択的β1作動薬英語版ではあるが、弱いβ2作動作用とα1受容体英語版選択的刺激作用がある。臨床的にはβ1の陽性変力英語版作用を期待して心原性ショックに用いられる。ドブタミンはラセミ体であり、(+)-異性体と(−)-異性体が混在している。(+)-異性体はβ1作動性・α1遮断性を持ち、(−)-異性体はα1作動性を持つ[9]。その結果、両者の混合物であるドブタミンは結果的にβ1作動性を示す。(+)-ドブタミンは弱いβ2作動性も併せ持っており、血管拡張薬としての特性も有している[10]


出典[編集]

  1. ^ Tuttle RR, Mills J (January 1975). “Dobutamine: development of a new catecholamine to selectively increase cardiac contractility”. Circ Res 36 (1): 185–96. doi:10.1161/01.RES.36.1.185. PMID 234805. http://circres.ahajournals.org/cgi/reprint/36/1/185. 
  2. ^ 獣医学大辞典編集委員会 『明解獣医学辞典』 チクサン出版社、1991年ISBN 4885006104
  3. ^ Donald C. Plumb、佐藤宏他監訳 『プラム 動物用医薬品ハンドブック 原書第3版』 ワハ、2003年
  4. ^ 伊藤勝昭他編集 (2004). 新獣医薬理学 第二版. 近代出版. ISBN 4874021018. 
  5. ^ a b ドブトレックス注射液100mg 添付文書” (2009年6月). 2016年4月30日閲覧。
  6. ^ a b ドブトレックスキット点滴静注用200mg/ドブトレックスキット点滴静注用600mg 添付文書” (2009年6月). 2016年4月30日閲覧。
  7. ^ Rang HP, Dale MM, Ritter JM, Flower RJ. Rang and Dale's Pharmacology. 
  8. ^ Shen, Howard (2008). Illustrated Pharmacology Memory Cards: PharMnemonics. Minireview. p. 6. ISBN 1-59541-101-1. 
  9. ^ Parker K, Brunton L, Goodman LS, Blumenthal D, Buxton I (2008). Goodman & Gilman's manual of pharmacology and therapeutics. McGraw-Hill Medical. pp. 159. ISBN 0-07-144343-6. 
  10. ^ Tibayan FA, Chesnutt AN, Folkesson HG, Eandi J, Matthay MA (1997). “Dobutamine increases alveolar liquid clearance in ventilated rats by beta-2 receptor stimulation”. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 156 (2 Pt 1): 438–44. doi:10.1164/ajrccm.156.2.9609141. PMID 9279221.