トレオース核酸

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トレオース核酸(Threose nucleic acid、TNA)は、アルバート・エッシェンモーザーが作成した人工の核酸ポリマーである。TNAは、ホスホジエステル結合で繋がれたトレオース糖の繰り返し構造からなる骨格を持つ。DNARNAと同様に、TNAもヌクレオチド配列の中に遺伝情報を蓄えることができる。TNAは天然には生成せず、実験室内で作られる。一部の人からは、TNAは、RNAに至る進化の過程上にあったと信じられている[1]

TNAポリマーは、ヌクレアーゼ分解に対して耐性を持つため、合成生物学において大きな興味を持たれている。この性質と、試験館内でダーウィン進化を経験できる性質から、TNAは、生物学的に安定な分子になり得る。

TNAは、ワトソン・クリック型の塩基対を形成して、A型のRNA螺旋構造と類似する二本鎖に自己集合する[2]。また、TNAは、DNA及びRNAとも相補的な塩基対を形成し、天然の遺伝ポリマーとも情報を共有することができる。これらの性質及び化学的な単純性から、TNAは、遺伝物質としてRNAに先立つものであると提案されている。

TNAポリマーを実験室内で複製させることができるポリメラーゼは同定されている。TNAは、RNA複製を模倣した過程により行われる。これらのシステムでは、TNAはDNAに逆転写され、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅し、その後、TNAに再転写される。

TNA複製をin vitro選別と組み合わせることで、ヒトのトロンビンと結合するアプタマーが生産される。この例は、TNAが、生命の特徴である遺伝と進化を担うことができることを意味する。TNAは、高いアフィニティと特異性で特定の標的と結合しうる複雑な形に折り畳まれることができる。初期の生命を維持するのに必要な機能を持つTNA酵素への進化も可能だったかもしれない[3]

プレDNAシステム[編集]

タンパク質工学の最近の発展により、新しいタイプの合成ポリメラーゼが産み出された。そのうち、Therminator DNAポリメラーゼとして知られるものは、70のDNAヌクレオチド配列を正確にTNAに転写し、SuperScript II(SSII)として知られる他のものは、非常に高い正確性でDNAに逆転写した。3文字または4文字のDNAの並びは、どちらも90%以上の正確性で転写、逆転写される。

進化医学センターの研究者であるジョン・シャプーは、リボース糖の前生物的な合成とRNAの非酵素的な複製に関する問題は、初期の遺伝システムが原始地球環境で生成されやすかったことを示す状況証拠を与えることを理論化した。TNAは、より少ない原子でできていること、また1種類の出発物質から合成できることから、初期の遺伝システム、またRNAの先駆けになり得る[4]。TNAは、RNAの相補鎖を形成することにより、RNAとの遺伝情報のやり取りが可能である[5]。TNAは、リガンドと結合して触媒作用を示す機能構造を持つような三次構造に折り畳まれたことはこれまで観測されておらず、このような能力は、TNAからRNAへの橋渡しのために必須であると考えられている[6]。後に、選択されたTNA分子は、個々のリガンド結合能を持つ三次構造に折り畳むことが可能であることが示された[7]

TNAの商業的応用[編集]

Journal of the American Chemical Societyに掲載された研究データによると、市販の酵素を用いて、DNAをTNAに転写すること、及びTNAをDNAに逆転写することが可能である[8]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Yu, Hanyang; Zhang, Su; Chaput, John C. (10 January 2012). “Darwinian evolution of an alternative genetic system provides support for TNA as an RNA progenitor”. Nature Chemistry 4 (3): 183-187. doi:10.1038/nchem.1241. http://www.nature.com/nchem/journal/v4/n3/full/nchem.1241.html 2014年4月22日閲覧。. 
  2. ^ Science Daily, "Enzymes Allow DNA to Swap Information With Exotic Molecules", 21 March 2013
  3. ^ https://asunews.asu.edu/20120109_tna
  4. ^ Bradley, David (2012年1月8日). “The TNA world that came before the RNA one”. Chemistry World. http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2012/January/RNA-world-hypothesis-TNA-primordial-soup.asp 2014年4月22日閲覧。 
  5. ^ Bradley, David (2012年1月8日). “The TNA world that came before the RNA one”. Chemistry World. http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2012/January/RNA-world-hypothesis-TNA-primordial-soup.asp 2014年4月22日閲覧。 
  6. ^ Bradley, David (2012年1月8日). “The TNA world that came before the RNA one”. Chemistry World. http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2012/January/RNA-world-hypothesis-TNA-primordial-soup.asp 2014年4月22日閲覧。 
  7. ^ Yu, Hanyang; Zhang, Su; Chaput, John C. (10 January 2012). “Darwinian evolution of an alternative genetic system provides support for TNA as an RNA progenitor”. Nature Chemistry 4 (3): 183-187. doi:10.1038/nchem.1241. http://www.nature.com/nchem/journal/v4/n3/full/nchem.1241.html 2014年4月22日閲覧。. 
  8. ^ http://www.biodesign.asu.edu/news/enzymes-allow-dna-to-swap-information-with-exotic-molecules

外部リンク[編集]