トリプトレモス

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デーメーテールとコレーの間にいるトリプトレモス。アテネ国立考古学博物館所蔵。

トリプトレモス古希: Τριπτόλεμος, Triptolemos)は、ギリシア神話の人物で、デーメーテールの使者として世界中に穀物の種をまいて回ったと伝えられるエレウシースの文化的英雄である。ソポクレース悲劇『トリプトレモス』を制作し、複数の断片が残されている。

系譜伝承[編集]

トリプトレモスは一般的にはエレウシースの王ケレオスメタネイラの子で、デーモポーンと兄弟とされるが[1]、様々な系譜伝承がある。以下にそれを列記する。

神話[編集]

有翼の蛇の戦車に乗るトリプトレモス。ルーヴル美術館所蔵。

兄弟の死[編集]

デーメーテールはハーデースにさらわれた娘のコレーペルセポネー)を探して世界を放浪した後、エレウシースにやって来て、ケレオス王の館に招かれ、王の子のデーモポーンの乳母になった。デーメーテールはデーモポーンを不死にしようとし、夜毎デーモポーンを火にくべて人間の部分を焼いた。するとデーモポーンは驚くべき速さで成長したが、メタネイラはそれを目撃して悲鳴を上げた。そのためデーメーテールは思わず子を火中に落としてしまい、子は焼け死んでしまった[9]

怒ったデーメーテールは本来の姿を現したが、ケレオスの子トリプトレモスに恩寵を与えようと考え、トリプトレモスに有翼の蛇の戦車を作り与え、空を飛んで世界中を巡り、穀物をまいて人々に農耕を教えることを命じた[1]

諸国遍歴[編集]

有翼の蛇の戦車に乗るトリプトレモス。ミュンヘン州立古代美術博物館en)所蔵。

そこでトリプトレモスは女神に教えられたとおりにまずイタリアカルタゴに赴いて農耕を伝えた[10][11]。おかげでイタリアは白い小麦で有名になった[12]アルカディアではアルカス王に小麦を与え、アルカスはパンの作り方を人々に教えた[13]

アカイア地方のパトライではエウメーロス王に農耕と都市の建設法を教えた[14]。王の子アンテイアスはトリプトレモスが眠っている間に戦車に有翼の蛇を戦車につないで自分も空から種をまこうとしたが、戦車から落ちて死んだ。そこでトリプトレモスとエウメーロスはアンテイアスにちなんで都市アンテイアを建設した[15]

トラーキアではゲータイ人の王カルナボーンに農耕を伝えたが、カルナボーンに捕らえられ、逃げられないように有翼の蛇のうち1匹を殺されてしまった。しかしデーメーテールがやって来て残った蛇を戦車につないで取り返し、カルナボーンをへびつかい座に変えた[16]スキュティアでもトリプトレモスはリュンコス王に命を狙われたがデーメーテールはリュンコスを山猫に変えて救った[17]

ヒュギーヌスの伝承によるとトリプトレモスはエレウシーノスとコートーネイアの子であり、デーメーテールはデーモポーンではなくトリプトレモスを不死にしようとした。しかしトリプトレモスを火にくべる様子を父エレウシーノスに発見されると怒ってエレウシーノスを殺し、トリプトレモスに世界中を巡って農耕の知識を広めさせた。トリプトレモスがエレウシースに帰ってくるとケレオスがトリプトレモスの代わりにエレウシースを支配しており、トリプトレモスを殺そうとしたが、デーメーテールはケレオスに命じて王位をトリプトレモスに譲らせた。王となったトリプトレモスは父にちなんで国名をエレウシースと改め、テスモポリア祭を創始した[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b アポロドーロス、1巻5・2。
  2. ^ レーロスのペレキューデース(アポロドーロスによる引用、1巻5・2)。
  3. ^ ムーサイオス(パウサニアスによる引用、1巻14・3)。
  4. ^ オルペウス(パウサニアスによる引用、1巻14・3)。
  5. ^ アテーナイのコイリロスの悲劇『アロペー』(パウサニアスによる引用、1巻14・3)。
  6. ^ パウサニアス、1巻14・2。
  7. ^ a b ヒュギーヌス、147話。
  8. ^ パニュアッシス(アポロドーロスによる引用、1巻5・2)。
  9. ^ アポロドーロス、1巻5・1。
  10. ^ ソポクレース『トリプトレモス』断片598(ハリカルナッソスのディオニュシオスによる引用、1巻12・1)。
  11. ^ ソポクレース『トリプトレモス』断片602(エウリーピデーストロイアの女たち』221行への古註。
  12. ^ ソポクレース『トリプトレモス』断片600(プリニウスによる引用、18・65)。
  13. ^ パウサニアス、8巻4・1。
  14. ^ パウサニアス、7巻18・2。
  15. ^ パウサニアス、7巻18・3。
  16. ^ ヒュギーヌス『星の運行』2・14。
  17. ^ オウィディウス『変身物語』5巻。

参考文献[編集]