トウキョウソナタ
| トウキョウソナタ | |
|---|---|
| Tokyo Sonata | |
| 監督 | 黒沢清 |
| 脚本 |
マックス・マニックス 黒沢清 田中幸子 |
| 製作総指揮 |
小谷靖 マイケル・J・ワーナー |
| 出演者 |
香川照之 小泉今日子 役所広司 |
| 音楽 | 橋本和昌 |
| 撮影 | 芦澤明子 |
| 編集 | 高橋幸一 |
| 制作会社 | ジャンゴフィルム |
| 製作会社 |
Entertainment Farm フォルティッシモ・フィルムズ 博報堂DYメディアパートナーズ ピックス(現:エイベックス・ピクチャーズ) |
| 配給 | ピックス |
| 公開 |
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| 上映時間 | 119分 |
| 製作国 |
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| 言語 | 日本語 |
あらすじ
[編集]井の頭線沿線の二階建て一軒家に暮らす佐々木一家は、それぞれに秘密を抱えていた。
健康機器メーカー「タニタ」の総務課長・佐々木竜平(香川照之)は、日本人労働者1人の賃金で中国人労働者3人を雇用できる安い人件費の魅力から、総務部を中華人民共和国の大連に移転する会社の意向により、長年勤めた会社をリストラされてしまう。
会社を解雇されたことを妻・恵(小泉今日子)にも言えず、翌日以降も同じようにスーツ姿で出勤するふりをして家を出る彼は、ハローワークで新たな職を探すが、紹介されるのは夜勤の工場警備員やコンビニエンスストアの店長など時給の低い仕事ばかりであり、「これでも長年、タニタの総務課長を務めていた」と訴えるも「以前と同じ条件の職場は100%ありえない」と職員に釘を刺され、好条件の仕事はなかなか見つからない。
そんな折、竜平は高校の同級生・黒須(津田寛治)と偶然に公園で再会する。黒須も竜平と同じスーツ姿。携帯電話で頻繁に得意先と会話を繰り返し、忙しそうなビジネスマンを装っていた(1時間に5回呼び出し音が鳴るように設定していた)が、炊き出しの行列を物珍しそうに眺める。黒須は自身も食事の配給を受けるが、竜平に失業中であることを見抜かれる。彼も竜平より前に会社をリストラされていたのだった。
同じ失業者として意気投合するものの、なかなか次の仕事は見つからず、平日の昼間から図書館などで時間をつぶす黒須は、会社の給与振り込み用とは別に銀行口座を設けること、失業保険の手続き方法など、失業したことを家族に察知されないようにするための偽装工作のレクチャーを施す。そんな黒須を「お前、すごいな」と羨望のまなざしで見つめる竜平。
黒須は竜平を夕食に誘い自宅に招く。黒須の妻が夫の早い帰宅を訝しんでおり、妻に失業中であることが発覚するのは時間の問題だという。黒須にせがまれ、食事中も彼に調子を合わせる竜平だったが、妻の疑惑は解けず、気まずい時間が流れる。
黒須の中学生の一人娘・美佳(土屋太鳳)は、顔を洗う竜平にタオルを手渡し、「佐々木さんも大変ですね」と声をかける。竜平は美佳の視線から、すでに偽装工作が発覚したことを悟る。
帰宅した竜平は、疲れてリビングのソファで寝ていた恵に「部長に誘われて夕食を済ませてきた」と嘘をつく。竜平は会社の面接に赴くが、面接官(波岡一喜)に「あなたの得意とするものを見せてほしい」と言われ、返事に窮した挙句、ペンをマイクに見立ててカラオケを歌わされるという屈辱を味わい、黒須の前で物に当たり散らして荒れる。黒須は生気の抜けた声で「もう救命ボートは行っちまったんだよ。女子供と若いやつだけ乗せて…」と言い、失業者の群れに合流していく。
竜平は連絡が取れなくなった黒須の身を案じて彼の自宅に赴くが、黒須夫妻が美佳を残して無理心中したことを知る。ただ一人残された美佳は竜平に冷たい一瞥をくれて去る。
黒須の死後、竜平は仕方なくショッピングモールの清掃員の職に就く。仕事が終わると、上司(でんでん)と同じようにトイレで作業服からスーツに着替えて帰宅する。会社を解雇されたことは、いまだに家族にも言い出せないままであった。
夜中にアルバイトをしている竜平の長男・貴(小柳友)は、アメリカ軍の国外志願兵に応募しており、中東の戦場に従軍するつもりでいた。母の恵に保護者の署名を求めるが、帰宅した竜平に猛反対され、衝突。「日本の平和はアメリカが守っている。俺は家族を守りたいから米軍に入隊する」と語る貴に「この家は俺が守る。勝手な行動は許さない」と激怒する竜平。貴は「守ってほしくない」と言い放ち、「出ていけ!」と激昂する竜平を尻目に家を飛び出す。「親父は俺たちを守るっていうけど、毎日、何をやってるんだよ?」という言葉を残して。
恵に見送られてアメリカに出発する貴。「離婚しちゃえば?」という貴に「お母さん役は誰がやるのよ」「これでも悪いことばかりじゃない」と答える恵に貴は敬礼を送る。
竜平の次男・健二(井之脇海)は、小学校の授業中、担任の小林(児嶋一哉)に漫画を隠し持っていたことを咎められる。健二は「この前、電車の中で先生がエロ本を読んでいるのを見た」と言い出し、生徒たちは小林を「エロ林」と呼んでからかう。健二は小林に謝罪するが、健二を疎ましく思う小林は取り合おうとしない。
ある日、健二はピアノを習いたいと言い出すが、竜平に反対され一度は断念する。が、ピアノを諦めきれない健二は、下校中に捨てられていたキーボードを拾い、学校の給食費をピアノ教室の月謝にあてて、金子先生(井川遥)にピアノを習う。
恵は給食費の未納で学校に呼び出され、小林に注意される。健二を問い詰めた恵は、「このことはお父さんには言わないで」という健二をかばって黙認することにしたが、その晩、帰宅した竜平は偶然、健二の才能を見抜き、音楽大学附属中学校への受験を勧める金子先生からの手紙を読んでしまい、激怒する。
健二を責める竜平。反発する健二を殴打する竜平。恵に窘められると、「貴にはなんでも自由にやらせて失敗した。だから健二には俺の価値観を押し付ける。親の権威にブレがあってはまずい。協力してくれ」という竜平。恵の冷たい視線に「なんだその目は」と怒りの矛先を向ける竜平に恵は「あなた、失業中なんでしょ?私、あなたが炊き出しの行列に並んでいるのを見ちゃった」と告げる。「なんで言わなかった」と狼狽する竜平に「言ったら、あなたの権威は丸つぶれになるけど、それでもいいの?」とねじ込む恵。
そこへ健二が現れ、竜平にキーボードを投げつける。逃げる健二を追って2階に駆け上がった竜平は、誤って健二を階段から突き落としてしまう。転倒して頭を打った健二は病院に搬送される。
病院の待合室のテレビはアメリカ軍の中東増派のニュースを伝えていた。幸い、健二のけがは軽かった。が、アメリカに行ったっきり何の連絡もない貴の身を案じた恵は外務省に問い合わせるものの、貴の消息は不明のまま。
そんな中、戦闘服姿の貴が突然帰宅する。息子の無事にホッと胸をなでおろす恵。貴は疲れ切った表情で「たくさん人を殺した」「殺しすぎちゃった…」と告白する。廃人同様の貴に衝撃を受ける恵であったが、それは恵の見た夢であった。
そんなある日、強盗(役所広司)が佐々木家に押し入り、恵を人質にして逃走を図る。盗難車を運転させ、恵を家から連れ出す。その途中、トイレに行くという理由で恵が1人でショッピングモールに立ち寄ると、清掃の仕事中の竜平と鉢合わせする。トイレ掃除の際、偶然拾った大量の札束をポケットに忍ばせていた竜平は、その場から逃げ出すようにショッピングモールから飛び出す。やみくもに走り続けた末、ライトバンにはねられた竜平は、翌朝まで路上で意識を失う。
一方、恵は海辺の小屋で強盗と一夜を過ごす。強盗は鍵開けの名人だったが、商売に失敗し、何をやってもうまくいかない自分の人生に絶望し、自傷行為に及ぶが、恵に止められる。
翌朝、恵が小屋の外に出てみると、浜辺には波打ち際まで続く車輪の跡が残されているだけだった。
その頃、健二は友人・田口の家出を手伝おうとするが、ぜんそくの発作を起こし、田口は父親に捕まってしまう。バスに無賃乗車しようとした健二は捕えられ、警察の留置場で一夜を明かす。不起訴処分で釈放された健二が家に戻ると、そこには誰もいなかった。やがて恵が、そして竜平が、それぞれ帰宅する。竜平は拾った大金を落とし物ポストに返却し、3人は静かに食卓を囲む。
そこへ貴から無事を告げる手紙が届く。アメリカだけが正義ではないこと、祖国のために何ができるか模索していること、等が綴られてあった。
音楽大学附属中学校の入学試験。実技試験の会場には、並んで座る竜平と恵の姿があった。金子先生も入室する。観衆に見守られながら、健二はクロード・ドビュッシーの「月の光」を演奏するのであった。
キャスト
[編集]スタッフ
[編集]- 監督: 黒沢清
- 脚本: マックス・マニックス、黒沢清、田中幸子
- 製作総指揮: 小谷靖、マイケル・J・ワーナー
- プロデュース: 木藤幸江、バウター・バレンドレクト
- 撮影: 芦澤明子 (J.S.C.)
- 照明: 市川徳充
- 音楽: 橋本和昌
- 美術: 丸尾知行、松本知恵
- VFXスーパーバイザー: 浅野秀二
- 音響効果: カモメファン(渡部健一)
- アクションコーディネイター: 齋藤應典、野貴葵
- カースタント: スーパードライバーズ
- MA: 日活スタジオセンター
- タイトル: マリンポスト
- 現像: 東京現像所
- 制作プロダクション: 日活撮影所、ジャンゴフィルム
- 配給: ピックス(現:エイベックス・ピクチャーズ)
- 「月の光」ピアノ演奏 :高尾奏之介[2]
製作
[編集]脚本のマックス・マニックスは『レイン・フォール/雨の牙』(2009年)で知られるオーストラリアの映画監督であり、おなじく田中幸子は、東京藝術大学大学院映像研究科での黒沢の教え子で、2007年に『夏の旅』で第33回「城戸賞」を受賞した日本の脚本家である。
共同製作のEntertainment Farmは日本の映画会社、共同製作のフォルティッシモ・フィルムズはオランダの映画会社、共同製作・配給のピックスは、エイベックス傘下の日本の映画会社である。
受賞
[編集]- 第61回カンヌ国際映画祭、「ある視点」部門審査員賞
- 第10回アジア・アラブ映画祭、大賞
- 第44回シカゴ国際映画祭、審査員大賞
- 第23回マール・デル・プラタ国際映画祭、監督賞
- 第9回アジアティカ映画祭、最優秀アジア賞
- 第4回おおさかシネマフェスティバル、作品賞、監督賞
- 第3回アジア・フィルム・アワード、作品賞、脚本賞
- 映画館大賞「映画館スタッフが選ぶ、2008年に最もスクリーンで輝いた映画」第5位
事実との相違
[編集]脚注
[編集]- ↑ Dan Fainaru (2008年5月19日). “Tokyo Sonata - Reviews - Screen”. Screen International. 2014年4月25日閲覧。
- ↑ エンドロールおよび本人のツイートより。
- ↑ “労働契約の終了に関するルール”. 厚生労働省 (2025年5月12日). 2025年5月31日閲覧。
- ↑ “日本人は米軍に入隊できるのですか?”. Quora (2025年5月12日). 2025年5月31日閲覧。