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テロリスト監禁センター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テロリスト監禁センター
正門
所在地 エルサルバドルの旗エルサルバドル テコルカ
現況 運用中
警備レベル 最高レベル英語版[1]
許容人数 40,000名[2]
収監者数 20,000名 (2025年4月16日[2]現在)
開設 2023年1月31日 (2023-01-31)
管理運営 エルサルバドルの旗エルサルバドル 法務省英語版
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テロリスト監禁センター(スペイン語:Centro de Confinamiento del Terrorismo)(CECOT)は、エルサルバドルに存在する刑務所の一つ。主にギャングなどを収容する。日本では英語名の Terrorism Confinement Center をテロリスト拘禁センター、またはテロリスト収容センターとも訳されている。

設立の背景

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2010年代、エルサルバドルはギャング(マラス)の活動が活発になった。特にマラ・サルバトルチャなどの強大なギャング勢力は抗争を繰り返し、多数の一般市民を巻き込みながら拡大したため、2015年殺人発生率は世界でも最高水準に達した。2019年にエルサルバドル大統領に就任したナジブ・ブケレは、国内の治安維持を優先事項に掲げギャングをテロリストと呼び、超法規的な手法で摘発を推進した。

しかし2022年3月25日から27日にかけてギャング同士の抗争により一般市民を多数含む87人が殺害されたため、政府は非常事態宣言を発令し、一部の法令を停止してギャングの大量摘発に乗り出した。たちまち既存の刑務所の収容人員は定員の3倍に達したため、2023年までに中部のテコルカに新しい刑務所、テロリスト監禁センターを設置。166ヘクタールの広大な敷地に4万人を収容、兵士600人と警察官250人が警備する施設を出現させた[3]

脱獄防止対策として、携帯電話の信号を遮断する通信機能抑止装置を導入。頑丈な鋼鉄の独房、周囲を囲う壁、19の監視塔、電気柵、パトロールエリアといった多重の防壁も作られた[4]

処遇

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刑務所の環境は劣悪で、雑居房は100人以上を収容することを前提としている。雑居房の中には洗面台トイレは2か所ずつ、ベッドは金属製のものが80人分しか用意されておらずマットレスシーツもない[5]。受刑者は丸刈りにされ、白いTシャツが与えられる。食事は抗争を避けるためにフォーク等の食器の使用は禁止され、プラスチックの容器から手づかみで食べるものとなっている[6][7]。そして体力をつけさせないためにも意図的に肉を入れないなどのレシピでかつほぼ毎日同じ食事をとらせるなど、心身ともに脱獄の気力を奪うようなメニューになっている。社会復帰をさせないことが前提であり、矯正教育プログラムは存在していない。家族との面会を含め外部との接触は一切認められていない[8]

アメリカ合衆国の利用

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2025年2月、アメリカ合衆国マルコ・ルビオ国務長官がエルサルバドルを訪問。この際、ナジブ・ブケレ大統領は、アメリカによるテロリスト監禁センターの利用を提案した[9]。この提案は翌3月に実現することとなり、アメリカ国内で拘束されていたベネズエラのギャング、トレン・デ・アラグアのメンバー238人がエルサルバドルに到着した。ドナルド・トランプ大統領は、エルサルバドルに謝意を表明。ブケレ大統領は、受け入れに際して「わずかな額の支払い」が発生することを示唆した[10]

脚注

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  1. ^ TBSテレビ (2025年4月15日). “「受刑者はすべて殺人犯」ギャング4万人を収容 エルサルバドルの「巨大刑務所」の実態 食事はすべて手づかみ、運動時間は1日30分”. TBS NEWS DIG. TBS・JNN NEWS DIG合同会社. 2025年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月16日閲覧。
  2. ^ a b TBSテレビ (2025年4月16日). “前代未聞のエルサルバドル「刑務所ビジネス」受刑者収容の見返りに8.5億円 “世界最恐ギャング”専用「テロリスト監禁センター」日本人も標的に?【news23】”. TBS NEWS DIG. TBS・JNN NEWS DIG合同会社. 2025年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月16日閲覧。
  3. ^ 4万人収容の刑務所が誕生、中南米最大級 100人に1人逮捕の国で”. 朝日新聞DIGITAL (2023年3月22日). 2024年12月24日閲覧。
  4. ^ 地上の地獄──血まみれの土地に巨大刑務所開設、エルサルバドル”. ニューズウィーク (2023年3月3日). 2024年12月24日閲覧。
  5. ^ ギャング2000人到着、「米州最大」刑務所に第2陣 エルサルバドル”. AFP (2023年3月16日). 2024年6月13日閲覧。
  6. ^ ズラリと並んだギャング2000人がお引っ越し…収容人数4万の巨大刑務所 ナイフ・フォークはNGで食事は手づかみ”. FNN (2024年6月13日). 2024年6月13日閲覧。
  7. ^ 「受刑者はすべて殺人犯」ギャング4万人を収容 エルサルバドルの「巨大刑務所」の実態 食事はすべて手づかみ、運動時間は1日30分”. TBS (2024年12月22日). 2024年12月25日閲覧。
  8. ^ “世界最恐”ギャング刑務所めぐり中米・エルサルバドルで抗議デモ 「息子を返してほしい」 強権的な治安対策 国民も分断”. TBS (2024年9月17日). 2024年12月25日閲覧。
  9. ^ エルサルバドル巨大刑務所、米凶悪犯の収容案浮上”. DIAMOND (2025年2月7日). 2025年3月17日閲覧。
  10. ^ 米、ギャング容疑者をエルサルバドルへ送還 差し止め命令無視か”. AFP (2025年3月17日). 2025年3月17日閲覧。

座標: 北緯13度31分58.76秒 西経88度48分14.4秒 / 北緯13.5329889度 西経88.804000度 / 13.5329889; -88.804000