テリハタチツボスミレ

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テリハタチツボスミレ
福島県会津地方 2020年5月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : マメ類 Fabids
: キントラノオ目 Malpighiales
: スミレ科 Violaceae
: スミレ属 Viola
: テリハタチツボスミレ V. faurieana
学名
Viola faurieana W.Becker[1]
和名
テリハタチツボスミレ(照葉立坪菫)

テリハタチツボスミレ(照葉立坪菫、学名Viola faurieana)はスミレ科スミレ属多年草。和名のとおり、葉の表面に光沢がある[2][3]

特徴[編集]

有茎の種。花期のの高さは3-15cmになり、果期には20cmになる。地下茎は横に這い、長くかつ太く、よく分枝し、肥厚して木化し、硬い。開花後に地上茎が地面を這って伸長し、地上茎の先に新苗をつくり、新苗はふつう越冬する。根出葉は長い葉柄があり、葉身は長さ2-5cmの卵形から卵状三角形、先端は鋭頭から鈍頭、基部は切形から浅い心形、縁には低い波状の鋸歯がある。葉は革質で硬く厚く、表面は濃緑色ときに黒緑色で、光沢があり、裏面は紫色をおび、両面ともに無毛。托葉は狭卵形で、羽状に中裂する。夏時の葉は大きくなり、長さ7cmに達する[2][3]

花期は4-5月。は径1.5-2cm、淡青紫色から淡紫色で、ときにほのかな芳香がある。花弁は長さ8-12mm、側弁の基部に毛はない。唇弁の距は太く、長さ4-5mm。片は広披針形で、長さ3.5-5mmになる。雄蕊は5個あり、花柱は筒形になり、柱頭は下向きに短く突き出る。染色体数は2n=20[2][3]

分布と生育環境[編集]

日本固有種。本州の青森県から福井県までの日本海側地域に偏って分布し、低山の明るい林床や林縁[2]または比較的湿った陰地に生育する[3]。かつて、中国大陸にも分布するとされたが、該当する植物は、広義のタチツボスミレ Viola grypoceras であると訂正された[2]

名前の由来[編集]

和名のテリハタチツボスミレは「照葉立坪菫」の意で、葉が革質でツバキの葉ような光沢があることによる[3][4]

種小名(種形容語)faurieana は、パリ外国宣教会宣教師で、明治・大正時代に東亜植物採集家でもあったユルバン・ジャン・フォーリー神父への献名[5]。記載者の Wilhelm Becker(スペイン語版)が、フォーリー神父が青森で採集した標本をもとに記載したことによる[6]

ギャラリー[編集]

下位分類、交雑種[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ テリハタチツボスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f 門田裕一 (2016)「スミレ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.226
  3. ^ a b c d e 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.716
  4. ^ 中井猛之進 :「すみれ雑記(其一)」(二十)てりはたちつぼすみれ, 『植物学雑誌』、The botanical magazine, Tokyo, Vol.36, Issue423, p.57. (1922)
  5. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1493
  6. ^ 前川文夫:「てりはたちつぼすみれ」, 『植物研究雑誌』、The Journal of Japanese Botany, Vol.12, No.8, p.602. (1936)
  7. ^ シロバナテリハタチツボスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  8. ^ a b ヌノベタチツボスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  9. ^ a b テリハナガハシスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献[編集]