テトラヨージド水銀(II)酸カリウム

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テトラヨージド水銀(II)酸カリウム
識別情報
CAS登録番号 7783-33-7
国連/北米番号 3287
特性
化学式 HgI4K2
モル質量 786.4 g mol−1
外観 淡黄色結晶
密度 1.16 g/cm3
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −774.0 kJ mol−1[1]
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS for Nessler's reagent
関連する物質
その他の陰イオン ヨウ化水銀(II)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

テトラヨージド水銀(II)酸カリウム(テトラヨージドすいぎん に さんカリウム、: potassium tetraiodomercurate(II))は、カリウムカチオンとテトラヨージド水銀(II)酸アニオンからなる錯体である。主にアンモニアを検出するために、0.09 mol/Lのテトラヨージド水銀(II)酸カリウム水溶液と2.5 mol/Lの水酸化カリウム水溶液の混合物、いわゆるネスラー試薬として使われる。

概要[編集]

ヨウ化水銀(II)を濃厚なヨウ化カリウム水溶液に溶解し、濃縮すると淡黄色の二水和物 K2][HgI4]・2H2O が析出する[2][3]

ヨウ化カリウム水溶液やエタノールに溶けやすく、水では分解してヨウ化水銀(II)を沈殿する。水銀(II)イオン Hg2+ はソフトなイオンで、ヨウ化物イオンと錯体を形成しやすく、水溶液中での錯生成定数は 5.6 × 1029 に及ぶ[4]

テトラヨージド水銀(II)酸イオンは正四面体型構造をとる[4]。テトラヨージド水銀(II)酸カリウム水溶液に硝酸銀(I)硫酸銅(II)水溶液を加えると、それぞれ淡黄色の銀塩 Ag2[HgI4]、赤色の銅(I)塩(還元反応を伴う)Cu2[HgI4] の沈殿を生ずる[3]

ネスラー試薬[編集]

テトラヨージド水銀(II)酸アニオン

この名前はユリウス・ネスラーにちなみ、アンモニアを含む試料に滴下すると黄色に呈色する。より高い濃度では褐色の沈殿が生じる。スポットテストとしての感度は、試料2 μL中アンモニア約0.3 μgである[要出典]

ネスラー試薬は一般に、ヨウ化カリウム塩化水銀(II)から調製される。濃ヨウ化カリウム水溶液に、ヨウ化水銀(II)の沈殿が溶け残るまで熱濃塩化水銀(II)水溶液を加える。その後ろ過し、水酸化カリウムと少量の塩化水銀(II)水溶液を加える。得られた溶液を冷却した後、必要な濃度に希釈する[5]。ネスラー試薬はネスラー管で使われることもある。

出典[編集]

  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  2. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  3. ^ a b 日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成III』 丸善、1977年
  4. ^ a b F.A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
  5. ^ http://www.fao.org/docrep/field/003/Q6501E/Q6501E05.htm
  • Vogel, Arthur I.; Svehla, G. (1979), Vogel's Textbook of Macro and Semimicro Qualitative Inorganic Analysis (5th ed.), London: Longman, ISBN 0-582-44367-9 

参考文献[編集]

  • Mok, K. F.; McKee, V. (1990), “Structure of a dipotassium tetraiodomercurate(II) salt with dibenzo-18-crown-6”, Acta Crystallographica Section C Crystal Structure Communications 46: 2078, doi:10.1107/S0108270190003742 

外部リンク[編集]