テイデ国立公園

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テイデ国立公園
IUCNカテゴリII(国立公園
TeideS.jpg
テイデ国立公園の位置を示した地図
テイデ国立公園の位置を示した地図
地域 スペインの旗 スペインカナリア諸島州カナリア諸島テネリフェ島
座標 北緯28度15分47秒 西経16度36分58秒 / 北緯28.26306度 西経16.61611度 / 28.26306; -16.61611座標: 北緯28度15分47秒 西経16度36分58秒 / 北緯28.26306度 西経16.61611度 / 28.26306; -16.61611
面積 189.9 km2
創立日 1954年1月22日
訪問者数 約300万人/年

テイデ国立公園スペイン語: Parque nacional del Teide, 発音 [ˈpaɾke naθjoˈnal de ˈtei̯.ðe])は、スペイン国立公園カナリア諸島テネリフェ島にある。1954年には国立公園に指定された[1]。2007年には国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の世界遺産自然遺産)に登録された[2]。2007年には12の宝物英語版に選ばれた。

地理[編集]

カナリア諸島第2の高峰であるビエホ峰

テイデ国立公園は標高3718mのテイデ山を中心としている[1]。国立公園の範囲に含まれるビエホ峰英語版の標高は3135mであり、テイデ山に次いでカナリア諸島で2番目に高い山である。テイデ山の東尾根にはテイデ天文台英語版がある。テイデ国立公園の訪問者数は年間約300万人であり[3]、2015年には世界で8番目に訪問者数の多い国立公園だった[4]

チリ・イースター島にあるラパ・ヌイ国立公園と姉妹公園協定を結んでいる[5][6]。モロッコのスース・マッサ国立公園英語版に対して技術的な支援を行っている[6]

歴史[編集]

1954年1月22日には同じくカナリア諸島にあるカルデラ・デ・タブリエンテ国立公園英語版とともに国立公園に指定され、カンタブリア山脈のコバドンガ国立公園(現・ピコス・デ・エウロパ国立公園)とピレネー山脈オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園に次いでスペインで3番目・4番目の国立公園となった。1989年には欧州評議会から欧州自然保護地域賞英語版が授与された。国立公園登録50周年を前に、2002年にはユネスコ世界遺産登録に向けた運動が開始された。その5年後の2007年、ニュージーランドクライストチャーチで開催された第31回世界遺産委員会で世界遺産(自然遺産)に登録された[2]。世界遺産登録では、テイデ国立公園が核心地域、コロナ森林自然公園スペイン語版が緩衝地域となった。2007年にはアンテナ3カデーナCOPE英語版によって12の宝物英語版に選ばれた。

動植物[編集]

植物[編集]

テイデ山の斜面に流れた溶岩はとても薄いが、栄養やミネラルが豊富な土壌は豊かな植物種を支えている。維管束植物は168種であり、うち33種はテネリフェ島の固有種である[7]。テイデ山の標高1000mから2100mの部分をカナリアマツ英語版の森が覆っているが、森林限界は大陸部の同緯度の山地(熱帯の山地)よりも約1000m低い[8]。高標高の場所ではラス・カニャーダスのカルデラが、ヒマラヤスギ属Juniperus cedrus英語版やカナリアマツなど、より繊細な種のために十分なシェルターを提供している[9]

テイデ国立公園でもっとも優勢な植物種はSpartocytisus supranubius英語版であり、白色やピンク色の花を咲かせる。エリシマム属のErysimum scopariumは白色や紫色の花を咲かせ、エキウム・ウィルドプレッティの赤色の花は高さ3メートルに達する[10]。マーガレット属のArgyranthemum teneriffaeは3600m近い標高の場所でも見ることができる。スミレ属Viola cheiranthifolia英語版はテイデ山の頂上ですら見ることができ、スペインでもっとも標高の高い場所で開花する植物である[11]

テイデ国立公園の植物は、高い標高・強烈な太陽光・極端な気温変化・水分の欠乏など、厳しい環境条件に適応している。半球形の形状となったり、産毛や蝋状の表面となったり、葉の露出部を減らしたり、花を多くつけたりする適応が起こる[9][12]。植物の開花は晩秋または初夏、具体的には5月から6月に起こる[7]

動物[編集]

テイデ国立公園には無数の無脊椎動物が生息しており、クモ甲虫類ハエ目カメムシ目ハチ目などがいる[13]。その40%以上が固有種であり、70種はテイデ国立公園でしか見られない。この一方で、テイデ国立公園に存在する脊椎動物は限られている[14]。国立公園内にはカナリーアオアトリカナリータヒバリ英語版カナリアチョウゲンボウの亜種など[15][16]、10種類の鳥類が巣を作っている。

カナリアカナヘビ英語版ヤモリ科Tarentola delalandii英語版トカゲ科Chalcides viridanus viridanus英語版と、爬虫類の固有種は3種が確認されている[14][17]。国立公園内に生息する哺乳類唯一の固有種は、コウモリNyctalus leisleri英語版である[18]ムフロンウサギハツカネズミクマネズミノネコハリネズミは、いずれも人間によって国立公園内に持ち込まれた哺乳類である[18]

科学[編集]

テイデ国立公園の地表

テイデ国立公園と火星は環境条件や地質面が類似しており、テイデ国立公園は火星に関する研究のための火山基準点となっている[19]

火星の探査を行う機器、または過去・現在の火星の生命の存在を明らかにする機器を試験するために理想的な場所がテネリフェ島である。2010年には研究者グループが、2016年から2018年のエクソマーズ計画で用いるラマン機器の試験をラス・カニャーダス・デル・テイデで行った[19]

2011年6月にはイギリスの研究者グループがテイデ国立公園を訪れ、火星で生命を発見するための方法の試験を行った[20]。2012年にはテイデ国立公園で火星探査用新型ロボット車両の試験を行っている[20]

世界遺産[編集]

世界遺産 テイデ国立公園
スペイン
固有種のエキウム・ウィルドプレッティ
英名 Teide National Park
仏名 Parc national du Teide
面積 18,990ヘクタール
(緩衝地域 54,127.9ヘクタール)
登録区分 自然遺産
IUCN分類 II(国立公園)および未設定地区
登録基準 (7), (8)
登録年 2007年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示

登録基準[編集]

この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

文化[編集]

テイデ天文台で論文を作成したブライアン・メイ

イギリスのロックバンドであるクイーンブライアン・メイは、1971年秋にテイデ天文台で卒業論文を執筆していた時に『タイ・ユア・マザー・ダウン英語版』を作曲した[21]

テイデ国立公園の風景は『恐竜100万年』(1966年、イギリス)、『10億分の1の男』(2001年、スペイン)、『タイタンの戦い』(2010年、アメリカ合衆国)、『タイタンの逆襲』(2012年、アメリカ合衆国)などの映画に登場している[22]

カナリア諸島のユダヤ人コミュニティが主導して、2008年12月8日にはテイデ山の頂上付近にイスラエル国旗が置かれた[23]

テイデ山の頂上付近には雪の聖母に捧げられた小規模な礼拝堂が設置されており、この礼拝堂はスペインでもっとも高い場所にあるローマカトリック施設である。

1989年6月24日、ラジオカデーナ・エスパニョーラ英語版の番組「エスパシオ・エン・ブランコ英語版」は、宇宙人とコンタクトを取るためにテイデ国立公園で「UFO Alert」を発し、このイベントには約4万人が参加した[24]

1998年、ドイツの心理学者であるHeide Fittkau Gartheを中心とするカルト集団32人が、テイデ国立公園内で集団自殺を企てたとして逮捕された[25]

高地トレーニングを行うことができ、気候が安定しており、離島にあって気の散る要素が少ないため、自転車競技チームの練習場所として人気がある。チームスカイリクイガスアスタナ・プロチームなどがテイデ国立公園内でトレーニングを行ったことがある[26]

脚注[編集]

  1. ^ a b Teide National Park”. Volcano Teide. 2017年5月14日閲覧。
  2. ^ a b Teide National Park”. 国際連合教育科学文化機関(UNESCO). 2009年1月18日閲覧。
  3. ^ Parque Nacional del Teide. Ascenso, Fauna, Flora...”. Web Tenerife. 2016年3月21日閲覧。
  4. ^ En las entrañas del volcán”. El Español. 2017年5月14日閲覧。
  5. ^ España: Cooperación en Parques Nacionales”. Otros.conaf.cl. 2014年9月20日閲覧。[リンク切れ]
  6. ^ a b Cooperación internacional entre parques nacionales”. Magrama.gob.es. 2014年9月20日閲覧。
  7. ^ a b Dupont, Yoko L., Dennis M., Olesen, Jens M., Structure of a plant-flower-visitor network in the high altitude sub-alpine desert of Tenerife, Canary Islands, Ecography. 26(3), 2003, pp. 301–310.
  8. ^ Gieger, Thomas and Leuschner, Christoph, Altitudinal change in needle water relations of the Canary pine (Pinus Canariensis) and possible evidence of a drought-induced alpine timberline on Mt. Teide, Tenerife, Flora - Morphology, Distribution, Functional Ecology of Plants, 199(2), 2004, Pages 100-109y
  9. ^ a b J.M. Fernandez-Palacios, Climatic response of plant species on Tenerife, the Canary islands, J. Veg. Sci. 3, 1992, pp. 595–602
  10. ^ Tenerife National Park - Flora”. Tenerife Tourism Corporation. 2007年12月12日閲覧。
  11. ^ J.M. Fernandez-Palacios and J.P de Nicolas, Altitudinal pattern of vegetation variation on Tenerife, J. Veg. Sci. 6, 1995, pp. 183–190
  12. ^ C. Leuschner, Timberline and alpine vegetation on the tropical and warm-temperate oceanic islands of the world: elevation, structure and floristics, Vegetatio 123, 1996, pp. 193–206.
  13. ^ Tenerife National Park - Fauna”. Tenerife Tourism Corporation. 2007年12月12日閲覧。
  14. ^ a b Thorpe, R.S., McGregor, D.P., Cumming, A.M., and Jordan, W.C., DNA evolution and colonisation sequence of island lizards in relation to geological history: MTDNA RFLP, cytochrome B, cytochrome oxidase, 123 RRNA sequence, and nuclear RAPD analysis, evolution, 48(2), 1994, pp. 230-240
  15. ^ Lack, D., and H.N. Southern. 1949. Birds of Tenerife. Ibis, 91:607-626
  16. ^ P.R. Grant, "Ecological compatibility of bird species on islands", Amer. Nat., 100(914), 1966, pp. 451–462.
  17. ^ Lever, Christopher (2003). Naturalized Reptiles and Amphibians of the World (First ed.). Oxford University Press. ISBN 978-0-19-850771-0. .
  18. ^ a b Nogales, M., Rodríguez-Luengo, J.L. & Marrero, P. (2006) "Ecological effects and distribution of invasive non-native mammals on the Canary Islands" Mammal Review, 36, 49–65
  19. ^ a b Tenerife se convierte en un laboratorio marciano”. エル・ムンド (2010年11月3日). 2014年9月20日閲覧。
  20. ^ a b Buscando "marcianos" en el Teide”. Loquepasaentenerife.com. 2012年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月20日閲覧。
  21. ^ Brian May”. Answers.com. 2014年9月20日閲覧。
  22. ^ Montgomery, Jack (2011年2月22日). “Clash of the Titans 2 & Los Cristianos Carnival in Tenerife News of the Week”. Tenerife Magazine. 2014年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月3日閲覧。
  23. ^ La bandera de Israel ondea en el Teide (Islas Canarias)”. Israel Grafico. 2014年9月20日閲覧。
  24. ^ España: Los Lugares Del Contacto”. Munoparanormal. 2014年9月20日閲覧。
  25. ^ La policía frustra el suicidio colectivo de los 33 miembros de una secta en Tenerife”. Hereoteca.lavaguardia.es. 2014年9月20日閲覧。
  26. ^ Fotheringham, William (2012年5月23日). “Volcano gives Bradley Wiggins the fire for assault on Tour de France”. ガーディアン. 2013年7月16日閲覧。

参考文献[編集]

  • 「Spain」、『週刊 世界遺産』第9号、講談社2010年8月12日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]