ツルムラサキ
ツルムラサキ | |||||||||||||||||||||
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ツルムラサキ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Basella alba L.[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ツルムラサキ(蔓紫) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Indian spinach, Malabar spinach |
ツルムラサキ(蔓紫[2]、学名:Basella alba)は、ツルムラサキ科のつる性一年生草本である。東南アジア原産の野菜で、現在は東南アジアから中国南部に分布する。カロテンやカルシウムを豊富に含む、緑黄色野菜でもある。
特徴[編集]
原産地は熱帯アジアとされる[2]。茎はつる状で、葉の付け根に紫色の実をつけることから「ツルムラサキ」の名がつけられている[3]。俗名で「パセラ」と呼ばれることもある[3]。英語名は malaber nightshade(マーラバー・ナイトシェード) 、フランス語名は épinard de malabar(エピナー・ドゥ・マラバー)、中国名は落葵(ラオクエイ)という[3]。
茎葉ともに光沢があり、葉は肉厚で卵円形である[4]。茎が紫色で葉が緑色の紫茎系と、茎・葉ともに緑色の緑茎系がある[2]。紫色のもの(赤茎種とよばれる)は花が美しく観賞用に栽培される場合も多い。花は淡紅色、果実は紫色で1個の種子を含む。
栽培[編集]
強い耐暑性があり好条件で育てると丈は2〜3mになる[4]。
日本国内では主に宮城県、福島県、徳島県、山形県などで栽培され[3]、一年草として収穫できる。緑茎系と紫茎系があるが、食味がよい緑茎系の栽培が多く見られる[5]。春に種をまき、苗の植え付けをして、主に夏場に栽培をして、次々と出てくるわき芽の先端をつんで収穫する[5]。栽培難度は易しい方で、病害虫の発生は少なく、肥料も少なく済むので手間をかけずに育てられる[5]。発芽適温は25 - 30℃、栽培適温は25 - 30℃とされる[6]。連作は不可で、同じ畑では1年あけるようにする[6]。
発芽温度が高いことから、十分に気温が暖かくなってからポットに種をまき、約10日から2週間で発芽するので苗を育成する[5]。種皮は固いため、種を一昼夜水につけることで発芽しやすくなる[6]。畑に直播きする場合は、畝に筋まきか点まきにして、間引きしながら育てていく[5][6]。畝には雑草を抑えるためマルチングを行い、約30 - 60センチメートル (cm) 間隔で苗が植え付けされる[7]。草丈が60 cmになったころ、様子を見ながら柔らかいつるの先端を15 - 20 cm切り取って収穫していくが、次々にわき芽が出てくるので晩夏まで収穫することが出来る[7]。
利用[編集]
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 44 kJ (11 kcal) |
2.6 g | |
食物繊維 | 2.2 g |
0.2 g | |
0.7 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(31%) 250 µg(28%) 3000 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(6%) 0.07 mg |
ナイアシン (B3) |
(2%) 0.3 mg |
パントテン酸 (B5) |
(4%) 0.21 mg |
ビタミンB6 |
(7%) 0.09 mg |
葉酸 (B9) |
(20%) 78 µg |
ビタミンB12 |
(0%) (0) µg |
ビタミンC |
(49%) 41 mg |
ビタミンD |
(0%) (0) µg |
ビタミンE |
(7%) 1.1 mg |
ビタミンK |
(333%) 350 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(1%) 9 mg |
カリウム |
(4%) 210 mg |
カルシウム |
(15%) 150 mg |
マグネシウム |
(19%) 67 mg |
リン |
(4%) 28 mg |
鉄分 |
(4%) 0.5 mg |
亜鉛 |
(4%) 0.4 mg |
マンガン |
(14%) 0.29 mg |
セレン |
(0%) 0 µg |
他の成分 | |
水分 | 95.1 g |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
葉と茎、花軸ともに食べられるが、主に葉やつる先から15センチメートル (cm) ほどの若い茎を食用にする[3]。夏場に旬を迎える緑黄色野菜で、旬の時期は7月 - 10月といわれている[2]。味はホウレンソウに似るが、モロヘイヤ同様、調理すると独特の匂いと、ムチレージという粘り気のぬめり成分がある[3]。生でも食べられるが、えぐみがあるため軽くさっと茹でてから使われる[2]。おひたし、胡麻和え、白和え、炒め物、天ぷらなど、ホウレンソウと同様に使われる[3]。油との相性も良いため、天ぷらや炒め物にすると、独特の香りが抑えられる[2]。
中華料理やベトナム料理でよく使われる野菜で[6]、中華料理では木耳菜(ムーアルツァイ)、潺菜(広東語 サーンチョイ)などと呼んで炒め物にすることが多い。つるが紫色のものは、炒めると汁が赤くなる場合があるため、中国語で臙脂菜(イエンジーツァイ)とも呼ばれる。ベトナム料理ではモントイ(ベトナム語: mồng tơi)と呼び、スープの具にすることが多い。
沖縄で栽培されるものは「じゅびん」(地紅)と呼ばれ島野菜の一つと認識されている。おひたしや味噌汁にしたりじゅーしーの薬味として用いられたりする。
保存[編集]
保存するときは、湿らせたペーパータオルなどで茎の根元を包み、ビニール袋などに入れて冷蔵する[2]。
栄養価[編集]
栄養価が高く、冬場の青菜やホウレンソウよりカルシウムが4倍で、コマツナ並みに多く含まれる[3]。カロテン(可食部100グラム中、3000マイクログラム)、ビタミンCも豊富である[2]。また鉄などのミネラルを非常に多く含み、他の栄養素量もコマツナとよく似ている[3]。茹でることで出てくるぬめり成分はムチレージによるものである[2]。
ツルムラサキのスピナコシド(spinacoside)類とバセラサポニン(basellasaponin)類には小腸でのグルコースの吸収抑制等による血糖値上昇抑制活性が認められた[9]。
脚注[編集]
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Basella alba L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 36.
- ^ a b c d e f g h i 講談社編 2013, p. 25.
- ^ a b 加藤俊介. “中国野菜の栽培と利用”. 牧草と園芸 第32巻第5号. 雪印種苗. 2022年2月5日閲覧。
- ^ a b c d e 金子美登 2012, p. 128.
- ^ a b c d e 丸山亮平編 2017, p. 86.
- ^ a b 金子美登 2012, p. 129.
- ^ “食品成分データベース”. 文部科学省. 2021年10月27日閲覧。
- ^ 吉川雅之、薬用食物の糖尿病予防成分 『化学と生物』 2002年 40巻 3号 p.172-178, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.40.172
参考文献[編集]
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、36頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 金子美登 『有機・無農薬でできる野菜づくり大辞典』成美堂出版、2012年4月1日、128 - 129頁。ISBN 978-4-415-30998-9。
- 講談社編 『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、25頁。ISBN 978-4-06-218342-0。
- 丸山亮平編 『野菜づくり大辞典』ブティック社〈ブティック・ムック〉、2017年5月20日、86頁。ISBN 978-4-8347-7465-8。