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ツェルメロ=フレンケル集合論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

集合論において、ツェルメロ=フレンケル集合論: Zermelo-Fraenkel set theory)とは、ラッセルのパラドックスなどのパラドックスのない集合論を定式化するために20世紀初頭に提案された公理系である。名前は数学者のツェルメロフレンケルにちなむ。歴史的に議論を呼んだ選択公理(AC)を含むツェルメロ=フレンケル集合論は公理的集合論の標準形式であり、今日では最も一般的な数学の基礎となっている。選択公理を含むツェルメロ=フレンケル集合論はZFCと略される。Cは選択(Choice)公理を[1]ZFは選択公理を除くツェルメロ(Zermelo)=フレンケル(Fraenkel)集合論の公理を表す。

概要

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ツェルメロ=フレンケル集合論は、単一の原始概念の形式化、すなわち整礎純粋集合英語版の概念の形式化を目的としているため、議論領域内のすべての対象(entity)はそのような集合となる。したがって、ツェルメロ=フレンケル集合論における公理は純粋集合のみに言及し、そのモデル原始元(アトム)が含まれないようにしている。さらに、真のクラス[注釈 1]は間接的にしか扱えない。具体的には、ツェルメロ=フレンケル集合論では、全体集合(すべての集合を含む集合)の存在も無制限の内包も許容しないため、ラッセルのパラドックスを回避できる。フォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデル集合論(NBG)は、ツェルメロ=フレンケル集合論の保存拡大としてよく用いられており、真のクラスを明示的に扱うことができる。

ツェルメロ=フレンケル集合論の公理には多くの同値な定式化が存在する。ほとんどの公理は、他の集合から定義された特定の集合の存在を定める。たとえば対の公理は、任意の二つの集合 が既存のときに、(文脈によっては不正確な説明ではあるが) のみからなる新しい集合 の存在を定める。他には、集合の元の属性を説明する公理もある。公理の目標は、フォン・ノイマン宇宙(累積階層とも呼ばれる)におけるすべての集合の集まりに関する命題とみなしたときに、各公理が真であることである。厳密には、ZFCは一階述語論理における1ソート理論である。シグネチャとして、等号 と、単一の原始的な二項関係である元の帰属関係 のみがある。 は集合 が集合 の元である(「 に含まれる」と表現することもある)ことを意味する。

ツェルメロ=フレンケル集合論の超数学は広く研究されてきた。この分野で確立された画期的な結果は、選択公理とZF公理の論理的独立性およびZFCと連続体仮説の独立性が示されたことである。ゲーデルの第二不完全性定理が示すように、ZFCなどの理論の無矛盾性はその理論自体の中で証明することはできない。

歴史

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集合論の現代的な研究は、1870年代にカントールデーデキントによって始められた。しかし、ラッセルのパラドックスなどの素朴集合論におけるパラドックスが発見され、これらのパラドックスのない、より厳密な形式の集合論の探求につながった。

1908年、ツェルメロは最初の公理的集合論であるツェルメロ集合論を提案した。しかし、1921年にフレンケルがツェルメロに宛てた手紙で最初に指摘したように、当時ほとんどの集合論の数学者が当然と考えていた基数 と集合 の存在を、この理論では証明できなかった。ここで、 は任意の無限集合であり、冪集合を得る操作を表す[2]。さらに、ツェルメロの公理の一つは、「明確な」(definite)属性の概念を提起したが、その操作上の意味は明らかでなかった。1922年、フレンケルとスコーレムは、原子論理式を帰属関係と同一性の表現に限定した一階述語論理における論理式として定式化できるものとして、「明確な」属性を操作することをそれぞれ独立に提案した。彼らはまた、分出公理置換公理に置き換えることを独立に提案した。これらの公理と(フォン・ノイマンによって最初に提案された)正則性公理[3]をツェルメロ集合論に追加すると、ZFで表される公理系が得られる。選択公理(AC)またはそれと等価な命題をZFに追加すると、ZFCが導かれる。

公理

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ZFC公理系には、多くの同値な定式化が存在する[4]。以下に示す公理は、Kunen (1980)ケネス・キューネン)に従った。公理自体は一階述語論理の記号で表される。論理式に付随する説明は理解を助けるためのものである。

ZFCのどの定式化でも、少なくとも一つの集合が存在することが示される。キューネンは以下に示す公理のほかに集合の存在を直接主張する公理を含めたが、存在を強調するためのものであり[5]、公理系としては必須でない[注釈 2]

分出公理図式および置換公理図式は、(閉論理式としての)公理ではなく、ある論理式に対して一つの公理が対応する公理図式であることに注意を要する。この公理図式は、実際には無限個の公理を含意する。

選択公理を除く下記の八つの公理でZFを定義できる。これらの公理の異なる形もしばしば見かけるが、いくつかはJech (2003)に列挙されている。一部のZF公理系には、空集合の存在を主張する公理が含まれている。対、和集合、置換、および冪集合の公理は、存在を主張する集合 の元(対の集合、和集合、置換集合、冪集合)を集合 が含むという形で表現される。

任意の集合について、その集合と同じ元のみをもつ集合は、その集合自体の他に存在しない。

正則性公理(基礎の公理)

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任意の集合は、元をもたないか、自身と互いに素な元をもつ。

部分集合は通常、集合の内包的記法英語版を用いて表される。たとえば偶数集合は、整数 のうち 2 で割り切れる元のみを集めた部分集合として表せる。

一般に、集合 の部分集合で一つの自由変項 の式 に従うものは、以下のように表現できる。

分出公理は、この部分集合が常に存在することを示す(それぞれの に一つずつ公理が対応するため、これは公理図式である)。厳密には、ZFCの言語では、 はすべての自由変項 、...、 を含む任意の式とする( の自由変項でない)。このとき、

分出公理は、既出の集合から部分集合のみを構成できるのみであり、 のような一般的な集合を構成できない。この制限は、ラッセルのパラドックス とすると、 となり矛盾する)や、ラッセルのパラドックスの変種(無制限の内包公理を含む素朴集合論に関連するもの)を防ぐために必要である。

ZFの公理の中で、この公理は置換公理空集合の公理に従うという点で冗長である。

一方、分出公理は少なくとも一つの集合が存在することを主張するため(前述)、空集合 の存在の証明に使用できる。証明方法の一つは、どの集合も持たない属性 を使うことである。たとえば、 が既存の集合である場合、空集合は次のように構成できる。

したがって、空集合の公理は、ここで示す九つの公理によって示すことができる。外延性の公理は、空集合が一意であることを意味する( によらない)。記号 はしばしばZFCの言語に追加される英語版

任意の集合 について、少なくとも を元とする集合が存在する。

任意の集合について、少なくともその集合の任意の元を部分集合とする集合が存在する。下記の二つの論理式は同値である。

置換公理は、定義可能な関数において集合のも集合内にあると主張する。

厳密には、ZFCの言語で 自由変項 、...、 が含まれる任意の論理式とすると、次のように表される( は自由変項ではない)。

の意味は、一意存在量化子を参照せよ。

言い換えれば、論理式 が定義可能な関数 を表し、定義域を表し、 が任意の に対して集合であるとすると、値域はある集合 の部分集合となる。 が十分に大きい場合、この公理はコレクションの公理と呼ばれることもある。

空集合を元とする集合 が存在し、 の任意の元 について、 の元である。

任意の集合について、少なくともその集合の任意の部分集合を元とする集合が存在する。

選択公理(または同値な命題)

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任意の集合 に対して、 整列する二項関係 が存在する。これは が、空でない のどの部分集合 のもとで最小元を持つような、全順序であることを意味する。

ZFの公理 (すなわち、前述の8つの公理および公理図式) の下で、選択公理は同値な主張をいくつか持つ。Kunenは選択公理に相当するものとして上記の主張を公理に設定した[6]が、これは通常整列可能定理と呼ばれるものである。

Kunenの数学基礎論を扱う別の著書では、Zermelo (1908)で用いられた形でもある次の主張が公理になっている:空でなく、互いに交わらない集合族は選択集合(という集合で、が1元集合)をもつ。この形の選択公理は、一般的なものと同値だが使い勝手が悪い(選択関数を考える時とは違って集合族が互いに交わっていないことが必要となる)。ただ、公理を書くために必要な定義が少なくてすむという利点がある[7]

選択公理の主張は通常次のようなものである:空でない集合による集合族 に対して、各 から要素を1つずつ選択して新しい集合を作ることができる。すなわち、写像 となるようなものが存在する。

選択公理は選択集合の存在を主張するが、選択集合がどのように「構築」されるかについては言及しないため、非構成的であるとされる。ACが存在を主張する特定の集合の定義可能性(または不可能性)を明らかにしようと、数多くの研究がなされた。

パラドックスの回避

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ツェルメロが ZF の元となる公理系を1908年に発表した最大の動機は、実数が整列可能だとする彼の証明を弁護することであった。しかし、同時に彼はその当時すでに知られていたパラドックスを回避しなければいけないこともわかっていた。代表的なものとしては、 ラッセルのパラドックスリシャールのパラドックスブラリ=フォルティのパラドックスがある。 これらのパラドックスは、集合を構成する方法に制限を付けている ZFC の中では展開できない。

例えば、ラッセルのパラドックスで用いられるラッセルのクラス(集まり)

は ZFC の中では構成できないし、 リシャールのパラドックスで用いられる構成は論理式で記述できない。

ラッセルのクラスRが集合でないことから集合全体のなすクラス(「集合」ではなく、ただの集まり)

も集合でないことがわかる。なぜならもしVが集合なら分出公理からRも集合になってしまうためである。

ここまでの議論で使われた公理は外延性公理と分出公理のたった二つだけであることを最後に注意しておこう。

累積階層による動機づけ

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ZFC公理の動機の1つは、フォン・ノイマンによって導入された集合の累積階層である[8]。この観点では、集合論の宇宙は階層的に構築され、順序数ごとに1つの階層が存在する。階層0では集合が存在しない。次の各階層で、すべての元が前の階層で追加されている場合、集合が宇宙に追加される。したがって、空集合は階層1で追加され、空集合を含む集合は階層2で追加される[9]。この方法で得られたすべての集合の集まりは、すべての階層をまとめて V と呼ぶ。 V 内の集合に対して、その集合が V に追加された最初の階層を割り当てることにより、階層構造に配置できる。

集合が純粋かつ整礎的であるとき、かつそのときに限り、集合がVに含まれることを証明できる。順序数のクラスが適切な反射律を有する場合、VがZFCのすべての公理を満たすことを証明できる。たとえば、集合 x が階層 α で追加されたと仮定する。これは、 x のすべての要素が α より前の階層で追加されたことを意味する。すると、 x の部分集合のどの元も階層 α の前に追加されるため、 x のどの部分集合も階層 α で追加される。これは、分離の公理が構築できる x の部分集合が階層 α で追加され、 x のべき集合が α の次の階層で追加されることを意味する。 VがZFCを満たすことの完全な考察については、 Shoenfield (1977)を参照せよ。

累積階層に階層化された集合の宇宙という様式は、ZFCや、フォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデル集合論(NBG)やモース-ケリー集合論などの関連する公理的集合論の特徴である。累積階層は、新基礎などの他の集合論とは互換性がない。

V の定義を変更して、各階層で、前の階層の和集合の部分集合をすべて追加するのではなく、ある意味で定義可能な場合にのみ部分集合を追加するようにもできる。この場合、より「狭い」階層構造をもつ構成可能宇宙 L が得られる。L は、選択公理を含むZFCのすべての公理も満たす。 V = L かどうかはZFC公理から独立している Lの構造は V より規則的で良い性質を持つが、 V = L を「構成可能性公理英語版」としてZFCに追加すべきであると主張する数学者も少数ながら存在する。

超数学

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仮想クラス

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前述のように、真のクラス[注釈 1]は、ZF(そしてZFC)では間接的にのみ扱うことができる。 ZFおよびZFC内での真のクラスの代替は、 Quine (1969)によって導入された仮想クラス表記構造である。ここで、構造全体 y ∈ { x | Fx} は単に Fy として定義される[10]。これは、クラスの存在性に関与することなく(集合のみを使用するように構文を変換できるため)、集合を含みうるがそれ自体が集合である必要はないクラスの単純な表記法である。QuineのアプローチはBernays & Fraenkel (1958)の初期のアプローチに基づいて構築された。仮想クラスは、 Levy (2002)Takeuti & Zaring (1982) 、そしてMetamath英語版におけるZFCの実装でも使用されている。

無矛盾性

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ロビンソン算術を解釈できる再帰的に公理化可能なシステムは、矛盾がある場合にのみ、システム自体の無矛盾性を証明できるとゲーデルの第二不完全性定理は主張する。また、ロビンソン算術はZFCの一部である一般集合論で解釈できる。したがって、ZFCの無矛盾性をZFCの中で証明することはできず(実際に矛盾がある場合を除く)、それゆえに、通常の数学の意味でZFCを捉える限り、ZFCの無矛盾性を通常の数学では実証できない。 ZFCの無矛盾性は弱到達不能基数の存在に由来するが、この基数の存在は、ZFCが無矛盾であるならばZFCでは証明できない。それにもかかわらず、ZFCが予想外の矛盾を含む可能性は低いと考えられている。 ZFCに矛盾を含むとしたら、すでに明らかになっているはずだからである。確かに、ZFCは、素朴集合論の古典的なパラドックス、ラッセルのパラドックスブラリ=フォルティのパラドックスカントールのパラドックスの影響を受けない。

Abian & LaMacchia (1978)は、外延性、和集合、べき集合、置換および選択の各公理からなるZFCの派生理論英語版を研究した。モデル理論を使い、彼らはこの理論が無矛盾であることと、外延性、置換およびべき集合の各公理は他の4つの公理と独立であることを証明した。この理論に無限公理を加えた場合は、和集合、選択および無限の各公理が他の5つの公理と独立になる。正則性公理を除いたZFCの各公理を満足する非整礎的モデルが存在するため、正則性公理は他のZFCの公理とは独立になる。

ZFCは、無矛盾であるならば、圏論で必要となる到達不能基数の存在を証明できない。 ZFにタルスキの公理英語版を追加すると、この性質の巨大な集合が存在できる[11]。タルスキの公理を仮定すると、無限べき集合、および選択の各公理(上記7〜9)は定理となる。

独立性

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重要な命題の多くはZFCとは独立である(ZFCから独立な命題の一覧を参照)。独立性は通常、強制法によって証明される。強制法によってZFCの可算推移モデル巨大基数公理で拡張されることもある)を拡張し、問題の命題を満足することが示される。すると、命題の否定を満たすための別の方法が示される。強制法による独立性の証明では、算術的命題、他の具体的な命題、および巨大基数公理からの独立性が自動的に証明される。 ZFCに依存しない命題のいくつかは、構成可能集合などの特定の内部モデル英語版に該当することが証明できる。ただし、構成的集合について真であるいくつかの命題は、仮定された巨大基数公理と整合しない。

強制法で、次の命題がZFCから独立であることを証明できる。

備考:

  • V=L の無矛盾性は内部モデル英語版によって証明できるが、強制法ではできない。ZFのどのモデルも、切り出して ZFC + V=L のモデルとすることができる。
  • ダイヤモンド原理は、連続体仮説とススリンの仮説の否定を含意する。
  • マーティンの公理と連続体仮説の否定は、ススリンの仮説を含意する。
  • 構成可能集合は、一般化連続体仮説、ダイヤモンド原理、マーティンの公理、およびクレパ仮説を満たす。
  • クレパ仮説の否定は、到達不能基数の存在と無矛盾性同値英語版である。

強制法の変種を用いて、選択公理の無矛盾性と証明不可能性、すなわち、選択公理とZFの独立性を示すこともできる。選択公理の無矛盾性は、内部モデル L が選択公理を満たしていることを証明することで(比較的)簡単に検証できる(したがって、ZFのどのモデルにもZFCの部分モデルが含まれているため、Con(ZF)はCon(ZFC)を含意する)。強制法は選択公理を保持するため、選択公理を満たすモデルから選択公理と矛盾するモデルを直接生成することはできない。ただし、強制法を使用して、ZFは満たすがCは満たさない部分モデルを含むモデルを作成できる。

独立性を証明する他の方法は、強制法ではなく、ゲーデルの第二不完全性定理に基づくものである。このアプローチでは、独立性を証明したい命題を用いて、ZFCの集合モデルの存在を証明する。この場合、Con(ZFC)は真となる。 ZFCはゲーデルの第二定理の条件を満たすため、ZFCの無矛盾性をZFCでは証明できない(ZFCが実際に無矛盾である場合)。したがって、ZFCでそのような証明ができる命題はない。この方法で、巨大基数の存在をZFCで証明できないことは証明できるが、ZFCが所与のときに巨大基数の存在を仮定することが無矛盾であることは証明できない。

追加の提案

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連続体仮説または他の超数学的な曖昧さを解決するために、追加の公理を扱う集合論研究者を統合するプロジェクトは、「ゲーデル・プログラム」として知られる[12]。数学者は現在、どの公理が最も妥当または「自明」であり、どの公理がさまざまな領域で最も有用であり、有用性と妥当性とがどの程度トレードオフされるべきかについて議論している。一部の「多元宇宙英語版」集合論研究者は、有用性は、公理について慣習的に用いられる唯一の究極的基準であるべきだと主張している。ある学派は、集合の「反復」概念を拡張して、強制的な公理を採用することにより、興味深く複雑であるが合理的に扱いやすい構造を持つ集合論的宇宙を生み出すことを目指している。別の学派は、おそらく「コア」内部モデルに焦点を当てて、整理された宇宙を提唱している。 [13]

批判

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一般的な集合論の批判については、集合論への批判を参照。

ZFCは、強すぎることと弱すぎること、および真のクラスや普遍集合などの対象を捉えられないことの両方で批判されてきた。

ペアノ算術や二階算術などの多くの数学的定理は、(逆数学のプログラムで調べられるように)ZFCよりもはるかに弱いシステムで証明できる。マックレーンフェファーマンはどちらもこの点を指摘している。 「主流の数学」(公理集合論とは直接関係のない数学)のいくつかは、ペアノ算術と二階算術を超えているが、それでも、そのような数学はすべてZFCより弱いZC(ツェルメロ集合論と選択公理)で行うことができる。正則性公理や置換公理など、ZFCの強さの多くは、主に集合論自体の研究を容易にするために含まれている。

一方、公理的集合論の中では、ZFCは比較的弱い。 新基礎集合論とは異なり、ZFCは普遍集合の存在を認めていない。したがって、ZFCの下での集合の宇宙は、集合の代数の基本演算の下では閉じられない。フォン・ノイマン=ベルナイス=ゲーデル集合論(NBG)やモース=ケリー集合論(MK)とは異なり、ZFCは真のクラスの存在を認めていない。 ZFCの比較的弱い点として他に、ZFCに含まれる選択公理が、NBGおよびMKに含まれる大域選択公理英語版よりも弱いことが挙げられる。

数多く存在するZFCに依存しない数学的命題には、連続体仮説ホワイトヘッド問題英語版、および通常のムーア空間予想英語版などが含まれる。これらの予想のいくつかは、マーティンの公理巨大基数公理などの公理をZFCに追加することで証明でき、他のいくつかは ZF + AD で証明できる。ここで AD は決定性公理であり、選択公理と両立しない強い仮定である。巨大基数公理の魅力の1つは、ZF + ADから得られる多くの結果を、巨大基数公理を加えたZFCで得られることにある(射影的決定性英語版を参照)。 MizarシステムMetamath英語版は、ZFCの拡張であるタルスキ=グロタンディーク集合論英語版を採用しているため、グロタンディーク宇宙(圏論と代数幾何学で扱う)を含む証明を形式化できる。

関連項目

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公理的集合論に関連するもの:

脚注

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出典

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  1. ^ Ciesielski 1997. "Zermelo-Fraenkel axioms (abbreviated as ZFC where C stands for the axiom of Choice"
  2. ^ Ebbinghaus 2007, p. 136.
  3. ^ Halbeisen 2011, pp. 62–63.
  4. ^ これについての議論は Fraenkel, Bar-Hillel & Lévy 1973を参照
  5. ^ Kunen (1980, p. 10).
  6. ^ Kunen 1980, p. 15
  7. ^ Kunen (2009, p. 58)
  8. ^ Shoenfield 1977, section 2.
  9. ^ Hinman 2005, p. 467.
  10. ^ (Link 2014)
  11. ^ Tarski 1939.
  12. ^ Feferman 1996.
  13. ^ Wolchover 2013.

注釈

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  1. ^ a b それに属する元が共通してもつ属性によって定義された数学的対象の集まりであり、集合とするには大きすぎるもの
  2. ^ 集合の存在を直接主張する公理の省略は、二つの方法で正当化できる。

    一つ目として、通常ZFCが形式化される一階述語論理の標準的な文脈では、論議領域が空でない必要がある。したがって、「何か」が存在することは一階述語論理の論理的定理である。この定理は通常、「何か」がそれ自体と同一であるという命題 として表される。前述の通り、ZFCの言語では集合のみを扱うため、この論理的定理をZFCの言語で解釈すると、何らかの集合が存在するということになる。したがって、集合の存在を主張する別の公理は必要ない。

    二つ目として、ZFCがいわゆるフリーロジック英語版で定式化されており、論理だけでは何かが存在することを証明できない場合でも、無限公理(後述)は無限集合が存在すると主張する。これは何らかの集合が存在することを意味するので、やはり追加の公理は不要である。

参考文献

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外部リンク

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