チャング


チャング(朝: 장구、杖鼓、長鼓[1])あるいはチャンゴ(朝: 장고)は、朝鮮半島の伝統的な打楽器である。木製の胴の両端に皮を張った両面太鼓で[2]、胴の部分は中央がくびれた砂時計型をしている[3]。宮廷音楽から、民衆の音楽である農楽、仮面芝居のタルチュム、伝統のシャーマニズムである巫俗の神おろしの儀式に至るまで、韓国の伝統音楽のほとんどすべてのジャンルで使用される[4]。
構造
[編集]東アジアに分布する鼓の一種で、全長は50cm[5]から70㎝[6][7]ほどあり、日本の鼓より大きい[1]。
桐の木を削った胴[1]に革を張り[8]、胴体と両側の革は紅色の紐で締め[2]、紐に挟まっているV字形の小さな革ベルト「プジョン(朝: 부전)」、別名「テョイゲ(朝: 조이개)」でチューニングをする[6][9][10]。
左右の面は異なる音を奏でる。左側は「プクピョン(朝: 북편)」あるいは「クンピョン」と呼び[9]、面が少し大きく[5][2]、牛や馬などの厚い皮を張って重くて低い音を出す[11]。右側は「チェピョン(朝: 채편)」と呼び[9]、馬や犬などの薄い皮を用いて高い音を出す[11]。
伴奏杖鼓や巫俗杖鼓など[11]、演奏する曲のジャンルで大きさや使用する革は異なる。
演奏法
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雅楽と室内楽では床に置き片方の膝で固定して、左手は素手、右手にばちを持って打つ[6]。農楽など屋外で奏でる場合は、演奏者の体の前に左を低く右を高めにして斜めに吊るし、ばちを両手に持つ[12]。
左面は手の平または「クンチェ[13]」(先端に丸いものが付いたばち)で弾むように叩く[5]。右面は「ヨルチェ[13]」(細長い竹のばち)で軽く押し当てるように叩く[5]。手首は縦ではなく、横に回転させる。左のばちは左の面を打つばかりではなく、時に腕を伸ばして右面も打つ。基本的なリズム型は長短(チャンダン)と呼ばれ、3拍子のものが多い[4][7]。
使用
[編集]韓国の音楽や舞踊において、チャンダンのリズムを反復させ躍動感をもたらすことから、チャンゴに代表される打楽器は必須である[14]。単独で演奏するよりも他の楽器の演奏や歌の伴奏として使用することが多い[9]。
農楽で使用されるケンガリ、鉦(チン (朝鮮の楽器))、チャング、太鼓(プク)の4つの楽器を四物(サムル)と呼び[15]、このうちチャングは雨を表現しているとされる[16]。
韓国の現代伝統的打楽器グループ「サムルノリ」を結成した金徳洙(キム・ドクス)は、国際的にも高い評価を受けているチャング奏者である[17]。
伝統的な地域の農楽踊りから、1930年代には杖鼓を肩から斜めにかけて踊るチャング踊りが創作され、独立した舞踊ジャンルとして今日に至っている[18][19]。
来歴
[編集]高麗史巻80食貨三には、文宗30年(1076年)に大楽管弦房を定めたときチャンゴ業師がいたという記録があり、チャンゴに関する最古の文献記録とされる[20][21]。一般的には宋の時代に中国から伝えられた楽器とされるが[18][19]、一方で高句麗の古墳の壁画や新羅の梵鐘にチャングのような楽器が表現されていることから、三国時代には存在したとみられる[9]。伝来楽器ではあるが、古くから韓国音楽に同化してさまざまに利用されており[18][14]、伝統的な楽器と見なされている[6]。
出典
[編集]- 1 2 3 ミン 2020a.
- 1 2 3 網代、岡田 1981, p. 147.
- ↑ 若林忠宏『まるごと!民族楽器徹底ガイド』ヤマハミュージックメディア、2010年、20頁。
- 1 2 3 成 2022, p. 33.
- 1 2 3 4 “チャンゴ 杖鼓 (ちゃんご)”. 身近な音具たち. 京都教育大学. 2026年4月14日閲覧。
- 1 2 3 4 草野妙子「杖鼓」『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。コトバンクより2026年4月16日閲覧。
- 1 2 原谷治美「杖鼓」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。コトバンクより2026年4月16日閲覧。
- ↑ ミン 2020b.
- 1 2 3 4 5 6 民族音樂院 2022.
- ↑ “장구 杖鼓”. 韓国国立国楽院. 2026年4月14日閲覧。
- 1 2 3 李 1999, p. 17.
- ↑ 草野 1984, p. 200.
- 1 2 “杖鼓(チャング)の いろは”. 韓国太鼓演奏舞 チェ ジェチョル. 2026年4月14日閲覧。
- 1 2 「朝鮮半島のチャンダン(植村幸生)」『世界音楽の本』岩波書店、2007年、44-48頁。
- ↑ 川上新二 編『韓国文化シンボル事典』平凡社、2006年、342頁。ISBN 458213601X。
- ↑ キム・ドクス『世界を打ち鳴らせ サムルノリ半生記』岩波書店、2009年、口絵。
- ↑ “金徳洙(キム・ドクス)/2007年(第18回)芸術・文化賞”. 福岡アジア文化賞. 2026年4月17日閲覧。
- 1 2 3 国立国語院 2006, p. 390-391.
- 1 2 高雲基「韓国の太鼓--法鼓と杖鼓を中心に」『自然と文化』第75号、日本ナショナルトラスト、2004年、4-15頁。
- ↑ “チャンゴとは?”. 韓国花郎演戯団. 2026年4月17日閲覧。
- ↑ “高麗史/卷八十”. 中国語版wikisource. 2026年4月17日閲覧。
参考文献
[編集]- ミン・ヨンチ (2020年6月27日). “韓国伝統打楽器「チャング」のおはなし(page=1)”. WEBRONZA(論座). 株式会社朝日新聞社. 2022年6月14日閲覧。
- ミン・ヨンチ (2020年6月27日). “韓国伝統打楽器「チャング」のおはなし(page=2)”. WEBRONZA(論座). 株式会社朝日新聞社. 2022年6月14日閲覧。
- ミン・ヨンチ (2020年6月27日). “韓国伝統打楽器「チャング」のおはなし(page=3)”. WEBRONZA(論座). 株式会社朝日新聞社. 2022年6月14日閲覧。
- ソン・ヘイン(成恵仁)「越境する国楽器」『Koreana』第29巻第1号、The Korea Foundation、済州特別自治道西帰浦市、2022年、28-33頁、ISSN 1225-4592。
- “打楽器”. 東京都中野区若宮: 一般社団法人民族音樂院. 2022年6月14日閲覧。
- 網代景介、岡田知之『打楽器事典』音楽之友社、1981年、146-147頁。NDLJP:12431299/79
- 草野妙子『アリランの歌 : 韓国伝統音楽の魅力をさぐる』白水社、1984年、199-201頁。NDLJP:12433098/103
- 李敬實「韓国と日本の伝統音楽について」『東京家政大学生活科学研究所研究報告』第22巻、東京家政大学生活科学研究所、1999年6月、15-26頁。
- 国立国語院 編『韓国伝統文化事典 : カラー日本語版』教育出版、2006年。ISBN 4316801031。
外部リンク
[編集]- アジアの楽器図鑑「チャングのトップ」 - 東京藝術大学 小泉文夫記念資料室
- 民族楽器の旅/チャング(朝鮮半島) - ウェイバックマシン(2007年2月17日アーカイブ分) - 朝日マリオン・コム
- サムルノリ/チャング - サムルノリの源流、男寺党(ナムサダン)日本支部マンナム