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チャブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チャブ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : ウグイ亜科 Leuciscinae
: Squalius
: チャブ S. cephalus
学名
Squalius cephalus
(Linnaeus1758)
英名
European chub
ライン川で釣られたチャブ

チャブは、コイ科ウグイ亜科淡水魚である。主にヨーロッパの流れの緩やかな川や運河等に住む。

生物学的特徴

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形態

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チャブ (Squalius cephalus) は、ずんぐりとした体型と大きく丸みを帯びた頭部を特徴とする淡水魚である。体は細長く円筒形で、大きな緑褐色の鱗に覆われ、背部には細い黒色の帯が入る。体側は黄金色、腹部にかけてはさらに淡色となる。尾鰭は暗褐色から黒色で、背鰭は灰緑色を呈し、その他の各鰭は橙赤色をしている。背鰭は3本の棘条と7–9本の軟条、臀鰭は3本の棘条と7–10本の軟条からなる。椎骨数は42–48である。成魚の体長は最大60 cmに達するが、多数を占めるのは30 cm前後の個体。

卵は直径約1.8mmの球形で、ふ化直後の仔魚は全長6–7mm、体重約120mgである。

分布

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アンドラ、アルメニア、オーストリア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、チェコ共和国、エストニア、フィンランド、フランス、グルジア、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、イラン、イタリア、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、モルドバ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア・モンテネグロ、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イラン、ジョージア、ウクライナ、イギリスに分布する[1]

釣り

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比較的どのような状況でも釣ることができ、釣り人に人気がある。

小さいチャブはすぐに餌に食いつく魚で、初心者でも容易に釣ることができる。しかし成魚になるとより用心深くなる。その結果、2kgを越えるような大きなチャブは釣り人に熱心に捜し求められている。練り餌サシミミズなど。

イギリス国内で釣られたチャブの大きさの記録が2007年3月に南部の池で4.2kgのチャブを釣ったスティーブ・ホワイトによって塗り替えられた[2]

釣りとの関わり

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チャブはほとんどあらゆる条件下で摂餌するため、釣り人に人気がある。小型のチャブは活発に餌を追い、初心者でも比較的容易に釣ることができる。しかし、大型になると警戒心が強くなり、音や視覚的な刺激によって容易に驚いて逃げてしまう。そのため、2kgを超える大型のチャブは、特定の魚を狙う熟練した釣り人にとって特に価値が高い。

イギリスにおけるチャブの釣り記録は、2012年3月16日にエセックス州のリーヴァー川でニール・スティーヴンが釣り上げた9ポンド5オンス(4.2kg)の個体で更新された。ただし、アングリング・トラストの「トップ50」リストには10ポンドを超える個体も複数記録されているが、それらはさまざまな理由により公式記録からは除外されている。ヨーロッパにおける最大記録は5.72kg(12.6ポンド)である。チャブは最大で全長64〜82cmに達する。

釣法とタックル

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小型のチャブは釣りやすく、中小河川ではスティックフロート(棒ウキ)を使った方法や、スイムフィーダー (swim-feeder、コマセカゴ・撒き餌カゴ) を使った方法が一般的である。餌はサシ(maggots)、ランチョンミート、スイートコーン、小型ルアー、フライなど多様に利用できる。チャブは魚粉を主成分とするペレットも食べ、野生個体の食性の44%を占めるとされる。

一方、大型個体を釣るには、忍耐と慎重なアプローチが必要である。特に澄んだ小河川では、釣り人はできるだけ気配を消すことが求められ、多くの釣り人はポイントに入る前に仕掛けを準備して音で魚を驚かせないようにする。典型的な好ポイントは、水中に枝や藪が垂れ下がる場所であり、チャブは日光に敏感なため、朝夕のマズメ時が狙い目とされる。また、流れが障害物に当たって発生する反転流(よどみ)は餌が集まりやすく、魚が定位しやすい場所である。小型チャブと同様に多様な餌を使用できるが、サシのような小さな餌は、特に小河川では ミノー(小魚) を引き寄せやすいため、大型の餌であるランチョンミートが有効である。ラインは4〜8ポンド程度が理想とされ、初心者は強めのラインを使うことが推奨される。

フィーダー/レジャーフィッシング (Feeder/ledger fishing)

伝統的には クイバーチップロッド (quiver-tip rod) が用いられる。クイバーチップ (quiver-tip) は竿先に取り付けられた柔軟な穂先で、魚の微細なアタリを視覚的に察知できる。ラインは少なくとも4ポンド以上が必要で、重い仕掛けを使う場合にはさらに強いラインが求められる。 フィーダーフィッシング (Feeder fishing) では、餌をフックとスイムフィーダーに入れ、流れにより餌を放出させて魚を寄せる。主にパン、スイートコーン、サシなど小型の餌が使われる。 レジャーフィッシング (Ledger fishing) では、スイムフィーダーの代わりに 錘(レジャー、Ledger weight、ナス型錘) を使用し、ランチョンミートなどの大型餌を使う。 また、タッチレジャリング (touch-ledgering) と呼ばれる方法もある。これはクイバーチップを使用せず、リールから出たラインを手に持ち、アタリを指先で感じ取る釣法である。錘を使わずに餌を自然に流す方法もあり、この場合にはナメクジやランチョンミートが有効とされる。

ウキ釣り (Float fishing)

ウキ釣りでは、竿先直下の深場を狙う方法や、ウキを自然に流して魚の潜む場所へ餌を運ぶ 「トロッティング」(trotting) がある。トロッティングでは流れに小さな撒き餌を投入し、魚の摂餌を促すことが多い。

この釣法では10フィート(約3m)以下の軽量ロッドが用いられることが多く、ラインがスムーズに出るため センターピンリール (centrepin reel) が使われる場合もある。トロッティングではアタリを見逃しやすいため、素早い合わせが求められる。餌はパン、スイートコーン、サシなど軽くて流れに馴染みやすいものが一般的に使われる。

ルアーフィッシング (Lure fishing)

ルアーフィッシングは主に大型のチャブを対象とする。軽量のスピニングロッドやルアーロッドに、最低でも10ポンド程度のラインを巻いた 固定スプールリール (fixed-spool reel、スピニングリール) を組み合わせて使用する。これは、この釣法では流木などの障害物にルアーが引っ掛かりやすいためである。 使用されるルアーは、小型の バースプーン (bar-spoon)、スプーン (spoon、スプーンルアー)、あるいは小型のソフトルアー (soft-plastic lures) などで、いずれも大型のチャブが捕食する ミノー(小魚) を模している。

フライフィッシング (Fly-fishing)

フライフィッシングでは、ダムゼルフライ系 (damselfly patterns、イトトンボ系) やナメクジを模した大型の暗色パターンが有効である。小魚を模した光沢のあるフライは、より攻撃的なチャブに効果的である。フライでの釣りは通年可能だが、特に暖かい季節に成果が上がりやすい。ニンフ (nymph、沈下性毛鈎) も有効であり、夏の終わりにはバッタや甲虫を模したフライも良い結果をもたらす。

書籍

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  • 「釣魚大全」では味はまずいが、調理方法によっては美味しくなる魚として登場。(1997年,平凡社「釣魚大全Ⅰ(完訳)」飯田 操 訳)[3]

出典

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  1. ^ a b Freyhof, J. (2014). Squalius cephalus. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.3. International Union for Conservation of Nature.{{cite web2}}: CS1メンテナンス: authors引数 (カテゴリ)
  2. ^ Chub Record Broken - FishingMagic Catch Reports”. 2007年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月21日閲覧。
  3. ^ アイザック・ウォルトン 著、飯田 操 訳『釣魚大全Ⅰ(完訳)』平凡社〈釣魚大全〉、1997年。ISBN 9784582761801