チグリスとユーフラテス

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チグリスとユーフラテス』は、日本の作家である新井素子によるSF小説1999年の第20回日本SF大賞受賞作品。

概要[編集]

1986年に新井は、舗装から雑草が伸びている荒れた無人の宇宙港に舞う2匹のホタルと「ホタルの名はチグリスとユーフラテス」とナレーションが聞こえてくるを見た[1]。印象の強い夢に、新井は小説になると確信したが、人のいない宇宙港のイメージからスタートしたため、いっこうに登場人物が動き出さず、小説の執筆はまったく進まなかった[1]。ところが、『小説すばる』から連作短編の依頼があったとたんに構想が具体化し、登場人物が頭に浮かんだ[1]。登場人物が定まったことで、それぞれの人物が自立的に動き始めた[1]

『小説すばる』1996年4月号に「マリア・D」が掲載された。以後、4作が掲載され、1999年2月に集英社より全1冊でハードカバー単行本が発売される。装丁画は花井正子。この年の日本SF大賞を受賞した他、第12回山本周五郎賞の候補作にも推されている。

2000年4月に徳間書店から発売されたSF雑誌『SF Japan [MILLENNIUM:00]』には「チグリスとユーフラテス外伝/馬場さゆり」が掲載され、2000年12月に早川書房から発売された『2001』には外伝「あした」が掲載された。

2002年には集英社文庫より上下巻に分冊した文庫版が発売されている。

あらすじ[編集]

地球から他星系への惑星間移民が行われるようになった遠い未来。9番目の移民惑星である惑星「ナイン」。

船長キャプテン・リュウイチ、その妻レイディ・アカリを含む30余名の移民船のクルーたちはナインに定着し、いっしょに運んできた凍結受精卵、人工子宮を用いて人口120万人を擁するナイン社会を作り上げた。しかし、原因が判らないままナインの社会では新生児が産まれにくくなり、人口が減少しはじめ、ついに「最後の子供」ルナが生まれてしまう。

たった1人、ナインに取り残されたルナは、重度の怪我や治療法が確立されていない病気で、未来の治療に希望を託してコールドスリープしていた人間を順番に起こし始める。ルナは、自分が最後の子供になると知りながら、母親は何故自分を生んだのかを問いかける。ルナと4人の女たちから、逆順にナインの年代記が語られて行く。

初出情報[編集]

  • 「マリア・D」 - 『小説すばる』1996年4月号
  • 「ダイアナ・B・ナイン」 - 『小説すばる』1996年8月号、9月号
  • 「関口朋実(トモミ・S・ナイン)」 - 『小説すばる』1997年5月号
  • 「レイディ・アカリ」 - 『小説すばる』1997年11月号〜1998年7月号
チグリスとユーフラテス外伝
  • 「馬場さゆり」 - 『SF Japan [MILLENNIUM:00]』
  • 「あした」 - 『2001』 ISBN 4-15-208324-7

書籍情報[編集]

ハードカバー
集英社文庫
  • 『チグリスとユーフラテス 上』 集英社、2002年5月、ISBN 4-08-747440-2
    • 「マリア・D」、「ダイアナ・B・ナイン」、「関口朋実(トモミ・S・ナイン)」、あとがきを収録
  • 『チグリスとユーフラテス 下』 集英社、2002年5月、ISBN 4-08-747441-0
    • 「レイディ・アカリ」、あとがき、解説「「神」の子として」(大沢在昌)を収録

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b c d “ペン今の思い“「生」を問う最後の議論””. 北國新聞. (1999年3月1日)