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チェコ語アルファベット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

チェコ語アルファベット(チェコごアルファベット、: Česká abeceda)は、チェコ語を書き表すために使われる字母で、ラテンアルファベットを基本とする42文字からなる。補助記号を用いた文字が15種類ある。

歴史

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ラテン文字でのチェコ語表記が始まったのは13世紀頃と見られている。はじめはひとつの文字を何通りにも読んだりしていたが、分かりにくいため14世紀頃から付属記号が使われ始め、15世紀に宗教改革を行ったヤン・フスがこれを推し進めた。さらに16世紀、宗教団体チェコ同胞兄弟団英語版がこれに改良を加え現在に至る。

文字と読み

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大文字 小文字 文字の名前 発音 (IPA)
A a á [a]
Á á dlouhé á [aː]
B b [b]
C c [ts]
Č č čé [tʃ]
D d [d]
Ď ď ďé [ɟ]
E e é [ɛ]
É é dlouhé é [ɛː]
Ě ě ije, é s háčkem [ɛ], [jɛ]
F f ef [f]
G g [g]
H h [ɦ]
Ch ch chá [x]
I i í, měkké í [ɪ]
Í í dlouhé í [iː]
J j [j]
K k [k]
L l el [l]
M m em [m]
N n en [n]
Ň ň [ɲ]
O o o [o]
Ó ó dlouhé ó [oː]
P p [p]
Q q kvé [kv]
R r er [r]
Ř ř [r̝]
S s es [s]
Š š [ʃ]
T t [t]
Ť ť ťé [c]
U u ú [u]
Ú ú dlouhé ú [uː]
Ů ů ú s kroužkem [uː]
V v [v]
W w dvojité vé [v]
X x iks [ks], [gz]
Y y ypsilon, tvrdé ý [ɪ]
Ý ý dlouhé ypsilon [iː]
Z z zet [z]
Ž ž žet [ʒ]

母音

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  • ÚŮは同音で、原則として位置によって書き分けられ、ú は語頭に、ů は語中・語末に出現する[1]ů は元々は二重母音 uo だったものが長母音に変化したもので、ú よりも出現頻度が高い。
  • IYは同音だが、i が t, d, n に後続する場合、口蓋化して ť, ď, ň と同様に発音される。これは長母音の í でも同様である[2]。それ以外の場合にiとyのどちらを使うかは正書法上の決め事となる。
  • Ěは、i と同様に t, d, n を口蓋化し、tě, dě, ně はそれぞれ ťe, ďe, ňe のように発音される。また mňe のように発音される。それ以外の場合、ěje と同様に発音される(常に短い)[1]

子音

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  • QWXの3字は外来語にのみ用いられる。
  • H有声声門摩擦音[ɦ])である。
  • Chは、無声軟口蓋摩擦音[x])である。アルファベットの独立した文字として、Hの後ろに置かれる。
  • Řは、巻き舌のrを発音しながら指で両顎を押さえつけるような発音(歯茎ふるえ摩擦音)。無声音有声音もある。日本人には難しい。世界一難しい発音との評判もある。
  • 子音は無声(p、f、t、s、kなど)と有声(b、v、d、z、gなど)が存在するが、有声子音と無声子音が並んだ場合、後ろの子音に同化して前の子音が有声化もしくは無声化される。但し、後ろにvがある場合は適用されない。
  • řは、その前に無声子音が並んでも、その後ろに無声子音が並んでも、無声化される。
  • 語末にある有声子音は無声化される。

ダイアクリティカルマーク

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ハーチェク

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ハーチェク (ˇ) は子音および母音eに付く。小文字のd、tにつくハーチェクはアポストロフィのような形になる。

Č č , Ď ď , Ě ě , Ň ň , Ř ř , Š š , Ť ť , Ž ž

チャールカ

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チャールカ (´) は長母音を表す。

Á á , É é , Í í , Ó ó , Ú ú , Ý ý

脚注

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  1. ^ a b 千野(1975) p.19
  2. ^ 千野(1975) pp.18-19

参考文献

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  • 千野栄一、千野ズデンカ『チェコ語の入門』白水社、1975年。ISBN 4560007578