チアン語群
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チアン語群 | |
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羌語群 | |
話される地域 | ![]() |
言語系統 | シナ・チベット語族
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下位言語 | |
Glottolog | qian1263[1] |
チアン語群[2](チアンごぐん、中国語: 羌语支、英語: Qiangic languages)は羌語群(きょうごぐん)とも言い、シナ・チベット語族の下位群のひとつである。中国四川省西部を南北に縦断する川西民族走廊(せんせいみんぞくそうろう)と呼ばれる地域に分布する(南端のプミ語は雲南省にも分布する)。
西夏語がこの語群のうちギャロン語群に属するという説がある[3]。
分類
[編集]孫宏開によると、チアン語群に属するとされる言語は以下のように分類される[4]。
- 北部
- 南部
また、黄布凡は孫宏開がアルス語の方言とするルズ語(呂蘇語)を独立の言語とする[7]。
ギャロン語とチアン語は10万人程度の人口がある。それ以外の諸言語の話者数は数千人から数万人台である。多くは他の土地の者と話すときにはカム・チベット語や中国語を使用する[8]。
これらの言語を話す人々の大部分は自らをチベット族と考えている[9]。チャン族(チアン語)とプミ族(プミ語)は独立した中国の少数民族として公式に認められているが、他はチベット族とされている。
川西民族走廊ではカム・チベット語とアムド・チベット語が話され、また東に中国語、南東に彝語の話者が分布する。
文法的特徴
[編集]孫宏開は、チアン語群に共有された音韻論・形態論・語彙的な特徴として、以下のものを挙げている[10][11] 。
音韻論
形態論・語彙
- 名詞における単数、双数、複数の区別
- 「子供」「息子」を意味する形態素由来の指小接尾辞
- 数詞類別詞の存在
- 一人称双数、複数の代名詞における除外形と包括形の区別
- 動詞における人称と数の標示 (北部語支)
- 方向接辞の存在
- 交互態の存在
- 4-8個の異なる存在動詞の使い分け
- 豊富な格の標識
脚注
[編集]- ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Qiangic”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ 池田(2003) p.65 では「チアン語支」と呼んでいるが、「語支」は中国語そのままなので、「語群」に変えた。なお「チャン語」はチベット・ビルマ語族に別の言語が存在するために紛れるおそれがある。池田(2003) pp.84-85 を参照
- ^ Lai, Yunfan, Gong, Xun, Gates, Jesse P. and Jacques, Guillaume. (2020). “Tangut as a West Gyalrongic language”. Folia Linguistica s41-s1: 171-203.
- ^ 池田(2003) p.65
- ^ 池田(2003) p.91
- ^ a b 池田(2003)は「ヂャバ語」と表記し、チョユ語の方言である札巴語を「ジャバ語」とする。ただし池田(2001) p.4 では札巴語は「ザバ語」とする
- ^ 池田(2003) p.64
- ^ 池田(2003) p.71
- ^ 池田(2003) p.72 および p.107
- ^ 孫 2001, pp. 166–170.
- ^ Chirkova 2012.
参考文献
[編集]- 池田巧 著「川西民族走廊のチベット系少数言語」、池田巧 編『論集:東・東南アジアの少数言語の現地調査』2001年。(文部省特定領域研究:環太平洋の「消滅に瀕した言語」にかんする緊急調査研究 2001 A3-001)
- 池田巧「西南中国〈川西民族走廊〉地域の言語分布 : レファランス資料集」『国立民族学博物館調査報告』第39巻、2003年、63-114頁、doi:10.15021/00001910。
- 長野泰彦「羌語」『言語学大辞典』 1巻、1988年、1391-1393頁。
- Chirkova, Katia (2012). “The Qiangic subgroup from an areal perspective: A case study of languages of Muli.”. Language and Linguistics 13 (1): 133–170 .
- 孫, 宏開「論藏緬語族中的羌語支語言」『語言暨語言學』第2巻第1号、2001年、157-181頁。