ダークパターン

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ダークパターン英語: Dark pattern)は、ユーザーを騙すために慎重に作られたユーザインタフェースのことである[1][2][3]。例としては、購入時に保険に入会させたり、何かを定期購入させるなどの特定の行動をユーザーに促すものがある。ダークパターンには、プライバシー侵害や人々の判断力低下など複数の問題点が指摘されている[4]

概要[編集]

ダークパターンは、主にウェブサイトなどでユーザーを騙すために慎重に作られたユーザインタフェースであり、「"購入ボタン"よりも"定期購入ボタン"の方が目立つ配色や大きさになっている」や「登録は簡単なのに退会が非常に面倒である」など様々な例がある。特に悪質なものが多いとされる例の1つは、利益が関わるショッピングサイトなどで、有名なウェブサイトほどダークパターンを利用しやすい傾向がある[4]。ダークパターンには、人々のプライバシーを侵害したり、判断力を鈍らせるなど、様々な問題があると指摘されている[4]

一方で、日本国内では大半のダークパターンが合法とされているため、対応が遅れており[5]日本政府はホームページ上に解約方法を分かりやすく表示するなどの努力義務を盛り込んだ消費者契約法改正案を検討していることが2022年1月に報じられた[6]

ダークパターンという新語は、darkpatterns.org(ユーザーを騙すインターフェイスの名前とシェーピングの具体的な目標を持つパターンライブラリ)の登録で2010年8月にハリー・ブリヌル(英語: Harry Brignull)によって作成された[7][8]

ダークパターンの例[編集]

ベイト・アンド・スイッチ[編集]

ベイト・アンド・スイッチは、全く利用できないか、または少量でストックされている無料の(または大幅に割り引かれた )製品またはサービスを宣伝するダークパターンである。 既に製品が利用できないと明らかになった後、宣伝されたものと同様の他の価格の製品が宣伝される。

強制開示[編集]

強制開示は、ユーザーがサービス上必要の無い、クレジットカード情報や住所電話番号等の個人情報を要求されるダークパターンである。また、一部の企業は、この情報を広告主に販売する。

ローチモーテル[編集]

ローチモーテルまたはトランメルネットは、入るのは簡単だが出るのは難しいという特徴のダークパターンである。 例としては、購読者がオプトアウトまたはキャンセル要求を印刷して郵送することが必要なビジネスモデルが挙げられる[9][10][11]

隠れたコスト[編集]

隠れたコスト英語: Hidden Costs)は、支払い手順の最終ステップに進んだ段階で予想外の追加料金(送料、税金など)がいきなり表示されるというダークパターンである[12]

偽のカウントダウン[編集]

偽のカウントダウンは、「希少性バイアス」を利用してユーザーを焦らせることを目的としており、「あと1時間でセールが終了する」などの嘘のカウントダウンを表示することでユーザーに商品の購入などを促すダークパターンである[4]

ダークパターンで問題視された事例[編集]

  • Disney+ - ウォルト・ディズニー・ジャパンNTTドコモが共同運営する定額制のビデオ・オン・デマンドストリーミングサービス。これらサービスの退会方法が非常に難解で煩わしいといったSNSでの投稿が反響を呼んだ。実際に退会を完了させるには、サービストップページから十数ページ遷移することが要求され、手続きの途中には退会のデメリットが提示されるなど、迷惑を覚えさせるような方法で解約を妨げるものである[13]。この他にもNTTドコモの携帯電話サービスの解約ページが検索ページに引っかからないように隠蔽していた事もあり、2021年2月に総務省に指摘を受けた[14]
  • ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の日本版 - 入会はネット上にて出来るが、解約は電話(平日9時から17時30分の間)のみの受付となっており、SNSにて批判があがる事態になった。電話のみの解約受付になっている理由について、WSJ日本版は「個人情報の確認が必要となるため」と説明している[15]
  • amazonプライム - サービス解約するためのボタン操作が難解となっており、「年払いに切り替えると36.8ドル(約3818円)もお得です」と引き留めるなどのうたい文句が何度にも渡り、黄色で強調表示される。これらの間違った選択肢を選ぶと、解約に失敗して契約が継続される仕組みである。このように解約の方法が難解であるため、ヨーロッパとアメリカの16の消費者団体が、Amazon.comを相手に法的手続きに踏み切った[16]。2022年7月、Amazonは欧州委員会との間で解約手順を簡素化することで合意したが、この合意は欧州連合(EU)域内のみ適用されるため、日本は対象外としている[17]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Campbell-Dollaghan, Kelsey (2016年12月21日). “The Year Dark Patterns Won”. CO.DESIGN. 2017年5月29日閲覧。
  2. ^ Singer, Natasha (2016年5月14日). “When Websites Won't Take No For An Answer”. The New York Times. 2017年5月29日閲覧。
  3. ^ Nield, David (2017年4月4日). “Dark Patterns: The Ways Websites Trick Us Into Giving Up Our Privacy”. Gizmodo. 2017年5月30日閲覧。
  4. ^ a b c d CNJ. “その購入の決断は“操作”されている? ネット通販サイトに仕込まれた「ダークパターン」にご用心” (日本語). WIRED.jp. 2020年8月30日閲覧。
  5. ^ 消費者操る「ダークパターン」 国内サイト6割該当 日本経済新聞 2021年3月26日
  6. ^ サブスク「契約は容易なのに解約は困難」…解約方法の分かりやすい表示、努力義務に”. 読売新聞 (2022年1月29日). 2022年1月31日閲覧。
  7. ^ Brignull, Harry (2011年11月1日). “Dark Patterns: Deception vs. Honesty in UI Design”. A List Apart. 2017年5月29日閲覧。
  8. ^ Grauer, Yael (2016年7月28日). “Dark Patterns Are Designed to Trick You, and They're All Over the Web”. Ars Technica. 2017年5月29日閲覧。
  9. ^ 心理学的な仕組みを用いてユーザーの行動を誘導するデザイン「ダークパターン」とは?」『GIGAZINE』。2018年10月16日閲覧。
  10. ^ GoogleやFacebookではユーザーを意図的に企業が有利な方向へ誘導する「ダークパターン」がどのように使われているのか?」『GIGAZINE』。2018年10月16日閲覧。
  11. ^ Roach Motel - A Type of Dark Pattern”. www.darkpatterns.org. 2019年5月9日閲覧。
  12. ^ Hidden Costs - A Type of Dark Pattern”. www.darkpatterns.org. 2019年5月9日閲覧。
  13. ^ 「ディズニープラス」会員から苦情 退会に十数ページかかる複雑さ...運営会社「改善に励む」”. J-CASTニュース (2021年7月11日). 2021年12月3日閲覧。
  14. ^ NTTドコモまたしても!? ディズニープラス退会が煩雑すぎ! 過去には解約ページ“隠ぺい”も”. オトナライフ (2021年7月13日). 2021年12月3日閲覧。
  15. ^ 「入会はウェブ、解約は電話のみ」WSJ日本版サブスクに読者不満 規制進む「ダークパターン」”. J-CASTニュース (2021年12月3日). 2021年12月3日閲覧。
  16. ^ 「Amazonプライムは解約しづらすぎる」と消費者団体がAmazonを起訴”. GIGAZINE (2021年1月15日). 2021年12月3日閲覧。
  17. ^ アマゾンプライム、2クリックで解約可 欧州で簡素化、日本は対象外”. 朝日新聞 (2022年7月2日). 2022年7月2日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]