ダリア

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ダリア属
Dahlia "Dahlstar Sunset Pink"
Dahlia "Dahlstar Sunset Pink"
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : キク亜科 Asteroideae
: ハルシャギク連 Coreopsideae
: ダリア属 Dahlia
学名
Dahlia Cav.
タイプ種
Dahlia pinnata Cav.
シノニム

Georgina Willd.

和名
ダリア、テンジクボタン(天竺牡丹)
英名
dahlia

ダリア英語: dahlia学名Dahlia)は、キク科ダリア属多年生草本植物の総称。

「ダリア」 (dahlia) の名は、スウェーデン植物学者リンネの弟子であったアンデシュ・ダール (Anders Dahl) にちなむ。

和名は、の形がボタンに似ているため、テンジクボタン(天竺牡丹)と呼ばれた[1]

分布[編集]

メキシコからグアテマラの高地が原産[2]

ヨーロッパでは、1789年にスペインのマドリード王立植物園に導入され、翌1790年に開花したのが始まりである。江戸時代1842年天保13年)にオランダから長崎に持ち込まれたのが、日本への最初の到来となった[3][2]

特徴[編集]

塊根は非耐寒性であり、サツマイモに似た塊根だが、塊根自体に不定芽を生じる能力はない。そのため、塊根の生じる地下茎の芽を塊根につけて切り離し、増やす(芽のない、または切り落とされた球根は発芽しない)。こうした塊根の性質は同じキク科のヤーコンに似る。

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開花時期は初夏~。6月~7月頃の初夏が最盛期であるが、塊根を植える時期と品種によっては秋の開花を望むことも可能である。比較的高温で乾燥した環境で育つ。

18世紀にメキシコからヨーロッパスペインにもたらされ、その後オランダより日本へと渡った。以来、長い間をかけて品種改良が行われ、多種多様な花色・花容品種が作り出されてきた。

赤色オレンジ色黄色白色ピンク色藤色ボタン色紫色など、バラチューリップと並び、最も花色のバラエティーに富んだ植物である。絞り爪白のもの、コラレット咲きには花弁(大きな舌状花)とカラー(管状花を取り囲む小さな舌状花)の色が違う2色咲きのものがある。英語に blue dahlia という言葉があるが、青色緑色の花色はない。

アメリカ・ダリア・ソサエティはダリアの花容を16に分類する。

  1. フォーマル・ディコラティブ(幅広い花弁の万重咲き)
  2. インフォーマル・ディコラティブ(花弁に変化のある万重咲き)
  3. ストレート・カクタス(細花弁の万重咲き)
  4. インカーブド・カクタス(細花弁が内側に彎曲したもの)
  5. セミ・カクタス(ディコラティブとカクタスの中間)
  6. ポンポン(管状の花弁が球状に万重咲きになったもので大きさが5cm程度)
  7. ミニチュア・ボール(5から9cmほどのポンポン咲き)
  8. ボール(9cm以上のポンポン咲き)
  9. アネモネ(丁字咲きのキクに似た花)
  10. シングル(一重咲き)
  11. オーキッド(一重で花弁が細く丸まったもの)
  12. コラレット(花弁のもとに副花弁があるもの)
  13. ピオニー(半八重咲き)
  14. ウォーターリリー(スイレンに似た花)
  15. フリルド(花弁の先がレース状になったもの)
  16. ノベルティダリア(それ以外のもの)

栽培[編集]

花卉として栽培される。原産地がメキシコ高原なので、暑さに弱く、日本では東北地方北海道高冷地のほうが、色鮮やかなよい花が咲く。

塊根栽培[編集]

塊根をに植えて育てる。塊根は乾燥防止のためにラッカーが塗られているものがあるが、そのまま植えて良い。塊根は「いも」の先にの一部がついていて、茎に芽があるので、その部分を上にして植え付け、10cmくらい土がかぶるように植え付ける。茎が弱く、倒れやすいので、植え付けの時には必ず支柱を立ててやる。株間は、中輪の切り花用やポンポン咲きなどで30cm、大輪種では50cm以上必要である。

実生栽培[編集]

すべて実生で栽培でき、まいた年に花が咲く。矮性の一重または半八重の品種は、日本国内でもタネが売られている。イギリスドイツなどでは、大輪のデコラティヴ咲きカクタス咲きのタネも売られているが、花色が美しく、重ねの厚いものはなかなか出てこない。ソメイヨシノが散り果てた頃にタネをまき、5mmほど覆土すると1週間くらいで発芽する。一度ポットなどに上げ、矮性種は15cmくらいの間隔に定植するか、6寸鉢に3本植える。あとは塊根のものと同じように育てる。  

利用[編集]

ダリアは、かつては有毒とされたがこれは誤りである。ただし、キクイモと同様に塊根には多糖類イヌリンが含まれ、慣れない人が大量に食べると腸内の発酵で生じたガスにより、腹部膨満を来たすおそれはある。原産地メキシコでは、食用ダリアも栽培されており、日本でも、近年では塊根を食用とする試みもなされ、金平などにしてレンコンなどに似た食感を味わうことができる。また、他の食用菊と同様、花やサラダ酢の物などの飾りとして食することもできる。花をまるごと揚げたダリアの天ぷらやダリアのソフトクリームも販売されている。

その他[編集]

メキシコでは国花花言葉は華麗、気品、移り気。

ナポレオン・ボナパルトの妃ジョセフィーヌは、マルメゾン宮殿の庭にダリアを植え、自分の花と宣言した。そして国外へ持ち出すことを禁じた。

ところがポーランドの貴族が庭師を買収し、この花の球根を手に入れた。やがてポーランドにもダリアが咲き誇った。このことを知ったジョセフィーヌは激怒し、ダリアの栽培を一切やめてしまったというエピソードがある。

「移り気」の花言葉は、花をポーランドの貴族に盗まれたジョセフィーヌ妃が、ダリアに興味を失ったことからつけられたとされている。

日本においては、北海道雨竜町山形県川西町福島県塙町兵庫県上郡町兵庫県宝塚市市町花として指定されている。川西町内には4haの敷地に650種100,000本のダリアが咲く川西ダリヤ園[4]があり、塙町にもダリアの染料を使った染物が特産品として知られている。

百貨店のそごうは、ダリアを象徴として採用していた。館内のガラス扉、エレベーター扉などにダリアが描かれていた。会員制積み立てサービスの名称も「ダリア友の会」であった。

日本の主な産地[編集]

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ギャラリー[編集]

ダリア
鮮やかに染まるダリア

脚注[編集]

  1. ^ 小林義雄 著、相賀徹夫 編『万有百科大事典 19 植物』1972年。 
  2. ^ a b |東邦大学薬学部|薬用植物園|見本園|ダリア|”. www.lab2.toho-u.ac.jp. 2022年6月2日閲覧。
  3. ^ 岩佐吉純・小山博滋「ダリア」(『週刊朝日百科植物の世界』5号、1994年)1-131頁。
  4. ^ 山形県川西町観光協会. “川西ダリヤ園”. 2011年11月14日閲覧。

参考文献[編集]

  • 岩佐吉純小山博滋「ダリア」、『週刊朝日百科植物の世界』5号(ダリア コスモス ヒマワリ)、1994年5月15日。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • "Dahlia Cav" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2011年11月14日閲覧 (英語)
  • "Dahlia". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語). (英語)
  • "Dahlia" - Encyclopedia of Life (英語)
  • 波田善夫. “ダリア属”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年11月14日閲覧。