タンゴスジシマドジョウ

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タンゴスジシマドジョウ
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : 骨鰾上目 Ostariophysi
: コイ目 Cypriniformes
上科 : ドジョウ上科 Cobitoidea
: ドジョウ科 Cobitidae
: シマドジョウ属 Cobitis
: タンゴスジシマドジョウ
C. takenoi
学名
Cobitis takenoi Nakajima, 2016[2]
和名
タンゴスジシマドジョウ[3]
英名
Tango stripe spined loach[1]

タンゴスジシマドジョウ(丹後條縞泥鰌、Cobitis takenoi)は、京都府丹後半島固有のシマドジョウの一種。

分布[編集]

本州の京都府丹後半島の一河川[4]

形態[編集]

各館の条数は、背鰭ii+7、臀ii+5、胸籍i+7 〜8、腹鰭i+6、尾鰭8+8。3対の口髭を有し、第2口髭長は眼径とほぼ同長。

背部斑紋L1は11〜16の四角形から楕円形の斑紋列となる。体側斑紋L2~L4は個体変異が大きく、L2はギザギザした縦条か半円状の斑紋列、L3は明瞭な縦条模様か細い点列、L4は細い網目状の縦条模様か細い点列となる。メスと非繁殖期のオスの体側斑紋L5は11〜17の円形から楕円形の斑紋列となる。繁殖期のオスの体側斑紋L4はほとんど消失し、L3とL5は明瞭な縦条に変化する。

尾鰭と背鰭には3〜4列の弓状の横帯がある。尾付け根の黒点は上下とも明瞭で、互いに接続しない。上の黒点は眼径と同程度から やや大きい程度。胸鰭腹間筋節数は14。オス胸緒の骨質盤は単純な円形で、第1分枝軟条の上片は細い。4倍体種。体長は65~85mm[4]

生態[編集]

河川の中・下流域に生息する。ゆるやかな流れがある植生が豊富な砂機底の場所を好む。生活史の詳細は不明だが、オスの体側斑紋の変化状況から繁殖期は5〜7月頃と考えられる。産卵は岸部の植生域に移動して行うと考えられるが、不明な点が多い。野外における寿命や成熟年齢も不明であるが、飼育下では1年で成熟し、3年以上生存する。生息地ではオオシマドジョウと同所的にみられる場合が多い[4]

研究[編集]

2010年に竹野誠人らによって報告され、もともとスジシマドジョウ4倍体性集団丹後型と呼ばれていた[5]。その後2012年にタンゴスジシマドジョウという標準和名が与えられ[3]、2016年に新種として記載された[2][4]。種小名takenoiは、本種を発見した竹野への献名[2]。長くオオガタスジシマドジョウとして扱われてきたため、この種特有の地方名は無い。

福井県三方湖から正体不明の個体群が確認されており、核型の特徴がオオガタスジシマドジョウに似ているが、本種であると考えられる存在が報告されている[4]

ミトコンドリアDNA塩基配列の特徴は琵琶湖に分布するオオガタスジシマドジョウ山口県に分布するヤマトシマドジョウA型に近縁である。ただし、形態的な特徴は大きく異なっており、分布域も離れていることから、生物地理学的に大変重要で、研究が待たれる。

利用[編集]

生息個体数が極めて少ないため、商用に利用されることはない。また、国内希少野生動植物種に指定されており、捕獲等には許可を要する(原則禁止)[6]

区別[編集]

同属のオオシマドジョウが同一水系に分布するが、本種に比べて第2口髭長がより長いこと、 背部斑紋L1の間隔が大きいごオスの体側斑L5は周年を通し美菜であること、オス胸鯺の骨質盤がくちばし状であることなどの特徴から本種との区別が可能である。分布域外の同属種としてはヤマトシマドジョウによく似ているが、本種に比べて第2口髭長が長いこと、オス胸の第1分枝軟条上片が太いことなどの特徴から区別が可能である[4]

保全状況[編集]

現在確認されている生息地は1水系のみで、生息範囲も限られる。そのため、個体数は非常に少なく、小規模な環境改変でも絶滅する可能性は非常に高く、絶滅危惧ⅠA類に指定されている。国内希少野生動植物種にも指定されている[7][4][8]京都水族館での飼育下繁殖例がある[9]

絶滅危惧IA類 (CR)環境省レッドリスト[8][10]

脚注[編集]

  1. ^ a b Miyazaki, Y., Mukai, T., Nakajima, J., Takaku, K. & Taniguchi, Y. 2019. Cobitis takenoi. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T122055219A122055238. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T122055219A122055238.en. Accessed on 21 April 2023.
  2. ^ a b c Jun Nakajima, “Cobitis takenoi sp. n. (Cypriniformes, Cobitidae): a new spined loach from Honshu Island, Japan,” Zookeys, Volume 568, Pensoft Publishers, 2016, Pages 119–128.
  3. ^ a b 中島淳・洲澤譲・清水孝昭・斉藤憲治「日本産シマドジョウ属魚類の標準和名の提唱」『魚類学雑誌』第59巻 1号、日本魚類学会、2012年、86-95頁。
  4. ^ a b c d e f g 中島亨 『LOACHES OF JAPAN 日本のドジョウ 形態・生態・文化と図鑑』 山と渓谷社 2017年 140~143頁 ISBN 4635062872
  5. ^ 竹野誠人・柏木祥平・北川忠生「京都府丹後地方から得られたシマドジョウ属の新たな4倍体性集団」『魚類学雑誌』第57巻 2号、日本魚類学会、2010年、105-112頁。
  6. ^ 国内希少野生動植物種一覧」環境省、2023年4月21日閲覧。
  7. ^ 川瀬成吾. “タンゴスジシマドジョウ|京都府レッドデータブック2015”. www.pref.kyoto.jp. 京都府. 2022年11月19日閲覧。
  8. ^ a b 環境省レッドリスト2020 https://www.env.go.jp/content/900515981.pdf
  9. ^ 中島淳「日本産スジシマドジョウ類の現状とその保全の展望」『魚類学雑誌』第64巻 1号、日本魚類学会、2017年、69-76頁。
  10. ^ 北川忠生「タンゴスジシマドジョウ Cobitis sp.」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 4 汽水・淡水魚類』ぎょうせい、2015年、48-49頁。